自称平凡少年の異世界学園生活

木島綾太

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【五ノ章】納涼祭

短編 護国に捧ぐ金色の風《本編 第六話》

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 熾烈な盤上リバーシの戦いを制し、各々の自由時間を経て。
 事件調査による頭脳労働のせいか強い眠気に襲われ、ふっかふかの布団に包まれ眠りに落ちること数時間。自室である屋根裏部屋に入り込む熱を帯びた日差しと、鼓膜を揺らすデバイスの通知音で目を覚ます。
 こんな朝に……? 確か、今日は新聞配達のバイトを入れてないから早起きの必要は無い。だから遅刻の連絡とかではないはずだ。
 上体を起こし、霞んだ視界の中で音の在り処を探し出して、手に触れたデバイスを耳にあてがう。

「もしもし……おぁようござぃます……どちらさま……?」
『おはよう、坊や。可愛らしい挨拶ね。もしかして、まだ寝ていたのかしら?』

 ──通話口から聞こえる、溶けるような声音に視界が弾けた。

「は、ばっ、シュメルさん!?」
『そうよね。私と貴方では生活スタイルが違うし、時間を合わせるのは難しいものね。うっかりしてたわ、次からはそこも配慮しないと……』
「あいや、こちらこそお手数をお掛けして申し訳ない……じゃなくてっ! えっと、どうしていきなり通話を?」

 一気に寝ぼけた頭が冷めたおかげで、話が出来るようになった。
 彼女が連絡を寄越してきたのは歓楽街での事件以来初めてだ。いつの間にかデバイスの通話番号を抜かれていた為、通話を掛けてくるのは何も不思議ではないが……直接、俺に伝えることでもあったのだろうか。

『あら、もう忘れたの? 坊やが言ったのよ、万能石鹸の感想を聞かせてほしいって。花園の何人かに使わせて感想を貰ったから、報告しようと思ったのよ』
「あ、あー、そうだった。でも一週間も経ってませんし、効果を実感するにはまだ早いんじゃ……?」
『…………坊やはもう少し、自分が生み出した物への認識を改めなくちゃいけないわね』

 シュメルさんの呟きに弾みは無く、抑揚のない淡々とした、説教じみた声で恐れを抱かせてきた。自然と、背筋が伸びる。
 な、なんか怒ってない? もしかして機嫌を損ねた? 周りの気温が下がったように感じるぞぉ。
 はっ、もしや石鹸に何か不備が……!? でも鑑定した時点で人体に有害な要素は一切見当たらなかったし、入れた覚えもない。

 それにアカツキ荘内での評判も女性陣──特に学園長からは高い評価を貰っている。連日徹夜のくますら綺麗さっぱり無くなる、と。その後、大人しく睡眠を取れと毛布でグルグル巻きにしてベッドに叩き込んだ記憶がある。
 いったい何が原因か、理由も定かではないが、こうなったら刺激しないようにこの場を乗り切らなくては……!

「え、っとぉ、だとしたら口頭でお伝えいただければ……」
『ダメよ。実際に坊やの目で見て、当人の声を聞いて、確認しなければ意味が無いわ。あの石鹸には、それだけ魅力が詰まっているの。中途半端に扱っては私の主義に反する……粗雑な対応を許していい代物ではないわ』
「えっ、これ石鹸の話ですよね? そんな大事おおごとになるような物では……」
『とにかく、詳細は会って話すとしましょう。冒険者ギルドに配達依頼として化粧品の類を手配させておくから、歓楽街に来てちょうだい。ついでに万能石鹸の在庫があれば、そちらも持ってきてね。それじゃ』
「あ、あの待っ……」

 怒涛の勢いを断ち切れず、通話が切れる。正しく嵐のような勢いだった。
 しばらく放心していると、小鳥のさえずりが頭を揺らしてくれた。そうだ、呆けている場合じゃない!
 シュメルさんの口調に怒りや呆れの感情こそ垣間見えたが、対面せずに真意を探ることなんてできないんだ。彼女が言った通り、会って話をするしか解決法は無い。

「幸い、石鹸の在庫はある……大量とは言わないけど、数十個はあるから問題なし。懸念点はシュメルさんの機嫌取り……何がいい、何をしたら……」

 現在時刻、午前六時。冒険者ギルドが開くのは八時半だから最速で謝罪に行っても九時ごろになる……それまでに策を考えなくては。
 とはいえ、何を準備すればいいのか。リラックス成分と魔力回復の効果を併せ持つアロマキャンドルとか、石鹸づくりの片手間に製作したコロンやポプリ、香水。……お酒も嗜んでるから、どんなに悪酔いしてても一発で正気を取り戻す万能酔い覚ましとか需要はあるかも……? でも商会に頼んで取り寄せてるくらいだし、俺なんかが作った薬剤は必要ないか?
 地下工房内に置いた精製品の状況を思い出しつつ、学園の制服に袖を通し──脳裏に電流が奔る

「そういえば昨日、親方はエルノールさんの所に行った時に菓子折りを持っていったんだっけ? 俺もあやかって、お菓子を持参していくか」

 親方のようにどこかの店で買ったような物ではなく、冷蔵庫に保存していた自作スイーツではあるが……ちょっと豪華にラッピングしたら、誠意も伝わるのではないか?
 そうと決まれば善は急げ。部屋を出て、エリック達を起こさないように。
 抜き足差し足で廊下を駆け抜け、リビングから台所に突入し冷蔵庫を開ける。念の為、昨夜どこぞの学園長誰かが盗み食いしていないかを確認。
 シュークリーム、ドーナツ、マドレーヌ、カップケーキ……うん、ちゃんと残ってるな。

 冷蔵庫を閉じ、流れるように地下工房へ。プレゼントやギフトに使うラッピングシート、大きさとしてトランクケースぐらいの木箱を用意する。
 二重底の一番下に水と風の魔力結晶マナ・クリスタを設置し、箱の内側にルーン文字で“保冷”“鮮度保存”“品質保持”と書き連ねる。
 羅列した文字が光を帯び、箱が急速に冷えていく。これで簡易クーラーボックスの完成だ。

 誤作動が起きないよう慎重に、集中して刻んでいたら三〇分も経っていた。朝に弱いカグヤですらどうにか起きてきて、朝食と弁当づくりを始める頃合いだ。
 マズい、急がないと。食後やおやつ、間食として楽しみにしていたアカツキ荘の皆には悪いけれど、怪しまれない内に箱へ詰める!
 クーラーボックスを片手に台所へ再突入。スイーツ同士が潰れないように入れたら、後は蓋をしてラッピングシートで包む。
 なんとかオシャレな見た目となった、謝罪用スイーツ詰め合わせセットを再び地下工房に下りて保管しておく。

 ひとまず、これで問題はないだろう。……寝起きのたった数十分とは思えないほど疲れたな。
 緩慢な動きのまま足を動かし、三度みたび台所へ戻れば──寝ぼけた目を擦りつつもエプロンを着たカグヤと鉢合わせた。

「ギャッ……おはよう、カグヤ。一緒に朝ご飯つくろっか」
「おはようございます……クロトさん……なんだか、悲鳴が、聞こえましたが……?」
「気のせいじゃないかなっ」

 寝起きのぽやぽやとした柔和な雰囲気を漂わせるカグヤを強引に言いくるめた。
 納得した様子で弁当づくりに手をつけた彼女に胸を撫で下ろし、隣に立って調理を補助する。
 想定外の通話から始まった明朝の騒動は、ひとまず落ち着いたと見ていいだろう。あとはシュメルさんへの謝罪か……うぅ、気が滅入るなぁ。

 ◆◇◆◇◆

 アカツキ荘での朝食を終えて、各々が学園や掲示板依頼を受注しに向かう中。
 事前にシルフィ先生へ午前は授業に出られないむねを伝え、スイーツ詰め合わせセットを抱えて冒険者ギルドに直行。
 既に通達を受けて配達物を準備していた顔見知りのギルド職員に案内され、今回は荷車でなく木箱が一個だけだったので抱えて爆走。
 自警団の目が付かない道を進み、歓楽街の甘ったるい空気やとろけた表情の人々とすれ違いながらも花園の前へ。

 以前と同様に裏口からではなく──そもそも裏口がどこにあるか知らない──表口の扉をノックしようとして。
 店の陰から、掃除用具を片手にひょっこりと顔を覗かせた男性従業員と目が合った。初対面の強烈な印象が記憶に焼き付いていたのか、顔を見るなり満面の笑みを浮かべて近づいてくる。

 その様子を聞きつけた他の従業員も駆けつけ、あれよあれよという間に花園の中へ迎え入れられた。
 相変わらず絢爛な内装を眺めていると俺の姿を視認した嬢の方々が、二階へ続く螺旋階段から次々に姿を現す。
 ……なんだか皆さん、以前に増してお綺麗になられました? 歓迎されつつも、傍目から見て実感する程の変貌っぷりに首を傾げて。

 いつの間にか背後に突っ立っていたシュメルさんに抱き着かれ、流れるまま席に座らせられた。両隣を嬢に挟まれ、逃げ道を塞がれてしまう。
 観念して対面に座る彼女に意識を向ければ、通話口で聞いた時と比べて声は落ち着いており、絶えず穏やかな笑みを浮かべている。

 なに考えてるんだろう……怖い……しかしいつまでも怖気づいてる訳にもいかない。
 名目上の依頼である配達物のやり取りをこなし、俺にとっても彼女にとっても本題である石鹸の話となる前に。
 すかさずスイーツ詰め合わせセットを差し出し、斜め四十五度どころか直角九〇度ぐらいまで身体を曲げ、石鹸に関する謝罪を口にして。

「何か勘違いしていないかしら。私、別に怒ってないわよ?」
「…………はえ?」

 至極当然、といった感じで。
 シュメルさんは頬に手を当て、不思議そうに言いのけた。

 ◆◇◆◇◆

『──ようは、試供品として渡した万能石鹸の効能があまりにも素晴らしかった為、汝の目でも確かめてもらおうと思い通話したが反応が芳しくなかったゆえに配達依頼で呼び寄せた、と。しかし適合者は相手が気を悪くしたのではないかと早合点して、ご機嫌取りの自作菓子を持ち込んで花園にやってきた、か。……なんというか、こうも綺麗にすれ違いが……』
『言わないで、レオ。情けない気持ちでいっぱいなんだから、静かにして……』

 目覚めて早々、冷静な分析を披露するレオを黙らせる。
 一度、互いの状況を把握して認識のすり合わせを行い、全面的な行き違いがあったことを確認。
 シュメルさんは石鹸の効能に感動した嬢に勧められ、自身も使った際に効果を実感し、興奮のあまり明朝にもかかわらず通話を掛けたそうだ。
 しかし俺はその時の対応で彼女がいきどおっていると勘違いして、必死に準備して花園にやってきてしまった。
 早とちりの結果とはいえ、とても恥ずかしい。身体の奥から燃えるような感覚を抑えて、顔を伏せる。

「気に病む必要は無いわ。私だって浮足立っていたのは事実だし、言葉足らずだったからね」
「ちょっと考えれば気づけたんですよ……魅力が詰まってるとか肯定的なことを言ってたのに、完全に頭から抜け落ちてた……馬鹿だ、俺……」
「いざという時の責任感とか反省の色を見せてくれる辺り、坊やは良くも悪くも真面目よね」
「でも、そういうところ年相応な可愛げがあってそそりますよね、オーナー?」
「庇護欲を駆り立てられる……内に眠る母性が溢れ出そう……!」
「慎みなさい色狂いども。坊やの精神面に追い打ちを掛けるようなマネはよしなさい。じゃないと、坊やの持ってきたスイーツを取り上げるわよ」
『生意気なこと言ってすみません! 大人しくします!』

 仲の良さが垣間見える会話のおかげで気分が落ち着いてきた。
 伏せていた顔を上げれば集まった嬢のほとんどが詰め合わせセットのスイーツを手に取り、瞳を輝かせながら食べている。
 勘違いから持ってきてしまった土産物ではあるが、皆には好評なようでよかった。

「それにしても、あれほどの石鹸を作れるのに料理の腕まで上等だなんて。近頃の男子学生ってこんな感じなのかしら?」
「全員がそうとは言いませんが、俺は趣味でやってる部分もあるのでこれくらいはできます。……そういえばシュメルさんに言われて石鹸の在庫を持ってきましたけど、そんなに気に入ったんですか?」
『もちろんッ!!!』
「ひえっ」

 シュメルさんのみならず、周囲の嬢からの鬼気迫る力強い同調に悲鳴が漏れた。

「日頃の夜更かし! ストレス! 不養生から来る肌トラブルがあの石鹸のおかげで全部解決したんだよ!? あんなの知っちまったら市販のなんか使えないよ!」
「前は時間を掛けて専用の化粧落としまで使ってたのに、お風呂に入る時にあの石鹸を使えばメイクがスルンッと綺麗に落ちるのよ!」
「しかも仕上がりがぷりぷりでもちもちでスベスベで……赤ちゃん肌とはまさにこのこと! って感じなのよねぇ。一日の疲れも吹き飛ぶし、ぐっすり眠れて嬉しいわぁ」
「化粧のノリが変わるし、何より髪の手入れをしなくてもサラサラでべたつかないなんて夢みたい……これまで使ってた香油やトリートメントとは大違い。歴史に名を刻む大いなる遺産よ……!」
「ハァ、ハァ……あの石鹸がなきゃやってられないのよ……! あんな代物がこの世に存在してるなんて……あるのがいけないっ、あるのがいけないッ!」
「嬢が一人壊れちゃった……怖い……」
「御覧の通り、君の石鹸は花園内で大流行。付近の店でも花園の嬢の質が上がったと噂されるほどよ。おかげでこちらの内情を探ろうとする他店や商会の間者じみた客が押し寄せてくる始末……売上は右肩上がりだけど、誤魔化すのも大変よ」

 ぼそっとこぼれた呟きを拾ったシュメルさんは肩を落とし、次いで射貫くような視線を向けてきた。

「よく聞きなさい、坊や。女は自分を着飾る為、美しさを求める為ならばどんな手段や手間も惜しまない。永遠に不滅な美などありはしないけれど、限りなく近しい物は存在する。坊やの生み出した物のように……“見目麗しくあれば心根は磨かれ、富を生む”……花園の信条の一つなのだから、狂信的に求めるのは自然のこと」

 でも。

「この状況はよろしくない。このまま噂が広まれば街中の夫人達や遠方の貴族からの追及はまぬがれないし、歓楽街における不和の種になる。いくら私でも抑え込むのは厳しいわ。早急に手を打たなくてはならないからこそ、石鹸の効能がもたらした現状を坊やに見せつける必要があった」
「だから、知っておいた方がいいって通話で忠告してくれたんですね……」
「素晴らしい物を作った事は誇ってもいいし、こちらとしては感謝したいくらいよ。けれど、それらの影響力をかんがみた上で意識を改めてほしかったの。凄まじい効能を持った万能石鹸を下手に流出させる訳にはいかないから、慎重に協議を重ねて取り扱うべきだと思ったのよ」
「そっかぁ……確かに、たかが石鹸だと舐めてたらとんでもないことになってたかもしれない。こうなったら身内で消費した方が安全……」
「それはダメよ」

 シュメルさんはきっぱりと断言した。

「な、何故……?」
「もう後戻りができないくらい心酔してるからよ。皆が皆、取りつかれたように坊やの万能石鹸に魅せられ自分磨きに使っている。もはや嬢としての生活に欠かせない要素の一つになってしまったの。そういう魅了の力が施されているみたいに……坊や、何かした?」
「えぇ……何それ、知らん。怖っ……」
「その反応を見るに、妙なマネをしていないのは明白ね。……幸い、万能石鹸の噂は歓楽街でのみ周知されているわ。ただ、私が手を回したけど必ず情報が漏れないとは約束できない。けれど、逆に言えば歓楽街だけなら制御が可能よ」

 シュメルさんのうながすような口ぶりに思考を巡らせる。

「──俺の軽率な行動が招いた結果ではあるが、まだ巻き直せる。その為に必要なことは……万能石鹸を歓楽街に流出させ、担保にする事で緘口令かんこうれいを敷き、噂の流布を止める? タダで売る訳にも、俺が売る訳にもいかないからシュメルさん……というよりは、花園に石鹸をおろして販売してもらう……?」
「素晴らしい。花丸満点をあげましょう」

 妖艶な美女の屈託なき笑顔が向けられた。見事に顔の良さを武器にしてやがる。
 シュメルさんの案はカバーストーリーとして、彼女の人脈によって取り寄せた特製の品を“麗しの花園”が元締めとなり販売するというもの。
 適性価格や個数制限を設けて過剰供給を抑えつつ、どの店舗にも満足してもらえるように売りに出す。

 そうすれば歓楽街に蔓延はびこる万能石鹸に対する羨望や不満の解消になるし、大本が花園であるため反感を買わないよう追及も無くなるとの見込み。
 加えて定期的に品卸しの為に俺を呼び出せるし、石鹸に関する要望を花園だけでなく多くの人から聞き出せる。より良い物を作る為の布石になる、とのこと。
 そして、何よりも大事なのは。

「──お金、欲しいでしょう? 学生は何かと入用でしょうし。迷惑料と仲介料は幾分か花園の利益として入れてもらうけど、大部分の売上は坊やの物にしてあげる。原価や材料費はともかく、一般的な美容品に当てはめた計算は済ませてあるから……」

 パチン、と。シュメルさんが指を弾く。
 万能石鹸が詰められた箱に見惚れていた嬢が一斉に姿勢を正し、どこからともなく筆記用具と紙を用意した。
 準備が良すぎる。やはりこの人、最初からその気で俺を呼び出したな……? 先見の明があるにも程があるぞ。

「仮に万能石鹸を一〇〇個、完売したとして……これくらいの取り分になるかしら?」
「拝見します。一、十、百、千、万、じゅ……あの、これ……ちゃんと花園にも利益があるんですか? 桁が違うというか、あまりにも話が上手すぎるというか……」
「配分で言えば花園と坊やで三:七といった所ね。一人の嬢が一晩で稼ぐ額と同等のマージンを頂くのだから、これで十分よ。むしろ坊やにとっては少ないかもしれないわね」
「いやいやいや! こんなに貰えるとは思わなかったですよ! ありがたすぎるぅ……!」

 紙に書かれた金額をまじまじと見つめ、シュメルさんに頭を下げる。
 大体の目安としてコレなら実数値はもっと高くなるはず……借金返済の大きな助けとなるのは間違いない。

「小躍りしたくなる気持ちは理解できるけれど、お互いの利益をより良いモノにする為、もう少し話を詰めましょうか」
「はい! 頑張りましょう!」

 思いがけない通話から始まったお金の匂いに誘われるように。
 俺とシュメルさんは万能石鹸の価格を相談し合うのだった。










「ちなみに、参考までに原材料を聞いてもいいかしら? 製法や材料を疑ってる訳ではないけれど、純粋に気になったのよね」
「材料といっても、ポーションと何も変わりありませんよ? そりゃあ石鹸用に追加の素材は投入しますけど二束三文な価格だから変動はしませんし、ポーション一本で万能石鹸を五個は作れるので」
「錬金術ってそこまで有能だったかしら」
「色々作れて楽しいですよ。アロマキャンドルやポプリ、コロンに香水、酔い覚ましとか」
「……まさかとは思うけど、それも全部、万能石鹸並みの効能を持っているの?」
「まあ、はい。そうですね」
「…………もし、売る気があるなら今度、試供品として持ってきなさい。きちんと精査しないと危ないわ」

 出会ってから初めて、シュメルさんの困り顔を見た気がする。
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