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【五ノ章】納涼祭

短編 護国に捧ぐ金色の風《序章》

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 何を誇張して言い出すか分からないシュメルさんと、面白がって追及していくアカツキ荘の面々の対応を続けて。
 しばらくしてシュメルさんは満足したのか俺を放して、ご満悦な表情で学園長の下へ。
 エリック達も散々弄り倒して日頃の溜飲が下がったらしく、別のテーブルから料理を持ってくると言ってこの場を去った。

「つかれた」
「大変だったな、クロ坊」

 疲弊しきった状態で椅子に座り項垂れていたら、串焼きを大皿に乗せたエルノールさんが隣の椅子に腰を下ろした。

「ぶっちゃけ遠目から見てて笑いを堪えるのに必死だったが、シュメルに関わった時点で避けられないからな。甘んじて受け入れろ」
「くそぅ、身から出た錆ってことか。そりゃあ自業自得ですけど、もう少しこう、手心というか……」
「あると思うのか? アイツにそんな良心が」
「…………無いなぁ。出会った当初からあの調子だし」
「そういうこった。長い付き合いの俺が言うんだから、間違いねぇ」

 シュメルさんのイジりに近しい行為を受けた経験があるのか、エルノールさんは肩を竦めて串焼き肉を頬張る。
 歓楽街と自警団。ニルヴァーナの秩序と治安維持の両方で密接に関わっている勢力同士、互いに面識があるのは当然のこと。団長のエルノールさんなら気安い関係性なのも頷ける。

「しっかし経緯が事故に近いとはいえ、クロ坊は結構早い段階でシュメルに目ぇ付けられてたんだな」
「そうですね。時期的に言えば中間試験を終えた直後辺りで……その後、少し経ってからですもんね。本格的に、俺がエルノールさんに依頼を卸してもらえるようになったのは」
「ミィナ様の件以降も自警団の巡回や戦闘訓練を手伝ってくれて、ちょくちょく気に掛けてから連絡先は渡してたしな。言動は突飛だが、真面目だし助かってはいる」
「稼がせてもらってますよへっへっへ……」
「反応が三下過ぎるだろ」
「そんな気味の悪いモノを見るような目はやめてくださいよ」

 口寂しさを紛らわす為に燻製肉を放り込む。うーむ、絶妙な塩加減とスパイスが合わさって噛むほど旨味が滲み出てくる。美味しい。

「つっても、マジでクロ坊のおかげで解決した問題は多いんだよな。覚えてるか? 俺とクロ坊の二人で調査した事件」
「あー……アレですか。俺が早とちりしてエルノールさんをブン殴ったのもその時ですね」
「おう。ガキの前で薬膳煙草を吹かしてたらクロ坊に説教されたヤツだ。捜査に進展が無さ過ぎてイライラしてた時に、手痛い一発で自分の悪い部分を実感させられたぜ」
「や、やめてくださいよ。俺も周りが見えてなかったというか、子どもに害があると思い込んで犯行に及んでしまったというか……」
「どっちも悪い要素があるぶん反省してっから納得の終着点が見当たらねぇー!」

 端正な顔を歪ませ豪快に笑うエルノールさんを見て、思い出す。
 顔を合わせるたびに思い返すほど痛烈な記憶から始まる、ニルヴァーナに蔓延した確かな悪意。
 街の特性を利用し、無関係の大勢に狙いを定めた悪質な行為。
 歓楽街での出来事を裏と称するのであれば、この件は表の出来事。
 エルノールさんと手を組み、解決に奔走した──違法武具商人の話だ。
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