自称平凡少年の異世界学園生活

木島綾太

文字の大きさ
上 下
101 / 249
【五ノ章】納涼祭

幕間 他者からの評価

しおりを挟む
警戒パトロールを終えた自警団の一人。
「クロト? ああ、学生だってのに夜間パトロールに参加してる珍しいヤツだな。あまり顔を合わせる機会が少ないからなんて言えばいいか……ああ、でも前に学園職員が起こした不祥事を解決したとかで、エルノール団長に気に入られてるらしいな。
 アイツのおかげで解決した事件もあるし、団員の実力向上を目的とした模擬戦でかなり好成績を叩き出してたって話だ。

 武具や防具なんかの備品修理もやってくれてるみたいだぜ。頼まれてもいねぇ、金になるわけでもねぇのにな……まっ、ありがたいけどよ。
 団員が持ち込んだ悩みとか相談事も聞いてやってるんだっけな? ここのところ彼女ができたとかいう団員が増えてきてんだよ……たぶんアイツが助言してるんじゃねぇか?
 ……っと悪いな、昼休憩ももうすぐ終わる。他に聞きたけりゃ交代で来るヤツに聞いてくれ」

ギルドに勤めているクラス鑑定士職員。
「彼について、ですか。そうですね……個人の情報漏洩は防がなくてはならないのに、私のせいで彼に大変な思いをさせてしまいました。初めて見るクラスで浮かれていたのかもしれません……落ち込んでいたら、逆にまったく気にしていないと気遣われてしまって。
 普段と変わらず、ギルドの依頼で酒場での調理や事務作業をこなす彼を見て、いつまでもうじうじとしているのはダメだと自省して、ようやく立ち直ったんです。

 それでも血まみれでギルドに運び込まれた時は心臓が止まるかと思いました。治療を受ける最中も激痛で叫ぶ姿はッ……とても、痛々しかった。
 ……彼はユニーク魔物モンスターを四体も相手取って討伐し、奇襲してきた最後の一体を救出に向かったエリックさんやカグヤさんと協力して倒したそうですよ。
 迷宮ダンジョンは何が起こるかわからない。不測の事態で命の危険におちいるのは珍しくありません。──ですがそれでも、あそこまで命を張って行動する彼には、少し体を休めてもらいたいですね」

眠たげな図書館司書。
「……インタビューされるほどの事をしたんですか、あの人。最近は街中を文字通り飛び回っているみたいですけど……納涼祭で特待生の特集記事を発表する? なるほど、その為にですか。

 ……私見ですが、誠実でしっかり仕事はこなしていますね。偶に鍛冶関連の書物に食らいついて手が止まる事もありますが、私もよくやりますしおおむね許容範囲内です。
 しかし学業でも仕事でも自分に出来ない事は素直に人を頼り、受けた恩はきっちり返そうとする。そういった部分をおろそかにはしたくないみたいです。

 ……他者を尊重し、敬意を持って対応する。でも、決して堅苦しいわけではない……人として好ましい方だと思います。常々なにかしら怪我をして周りに心配させるのは、改善してほしいところですが。
 ……こんな感じでいいですか? ではこれから読書の時間ですのでお引き取りを……えっ、休憩時間過ぎてる? 読んでる暇は無い? …………わかりました、蔵書点検行ってきます……」

研究室を独占する怪しい女教師。
「報道クラブがこんな所に来るとはな。先日どこぞの馬鹿が学食で騒ぎを起こしたそうだが、それに関係しているか? ……副部長と取り巻きがクロトに突っかかっていった? 馬鹿ではなく彼我の実力差もはかれない阿呆だったか。

 で、君はクロトについての取材と……まあいい。率直に言おう、彼は騒動を引き寄せる天才だ。自分から関わっていき大抵ロクでもない目に遭い、解決する為に奔走している。
 褒めてるわけではないぞ、巻き込まれた私は現在進行形で調査や検査に追われているからな。身から出た錆ではあるが、心構えができていない時に爆弾を持ってこないでほしい……最近はユキの調子が安定しているのが救いだな。

 話がズレてしまったか。なんだかんだ言いつつやるべき事はやるし、責任感もある。分不相応な問題に直面してごり押しするのは良くないが、そうならないように努力してるしカバーしてくれる仲間もいる。
 総評として多少マイナス面も見えるが補って余る程のプラス要素があり、結果として事態を良い方向に転がせる力を持った男だ。敵も作りやすいだろうが、味方も多い。これで十分か?
 ……ならばいい。さて、私はこれから実験に移る。少々危険な薬品を使うからな、早急な退室をオススメするよ」

最近学園に帰ってきた生徒会長。
「なんか焦げ臭くない? ああ、リーク先生がまたやらかしたのね。いつもの事だけど、生徒会に苦情が来るから少しは自重してもらいたいなぁ。
 んで、なんだっけ? 特待生特集? クロト君の事でしょ?

 編入したのは知ってたよ。でも顔を合わせたのは中間試験辺りが初めてで、それから指名依頼で忙しかったから話したのも数回程度だし、詳しくは知らないんだけどねぇ。
 ……そういえば何週間か前に学園長室に行ったら、ミィナ先生も含めて三人で一緒に事務作業してたな。ちょうど休憩中でクロト君に肩揉みされてたよ。めちゃくちゃ痛いけど相当効いてたみたい。

 だいぶ距離感が近いように思えたけど、一緒に住んでるならあれくらい普通なのかな……ん? それ以外で何か無いかって?
 うーん……魔剣の事……はともかく、生徒会がやる業務を代わりにこなしてもらったり、Dランク冒険者にしては異常に手強かったり、編入した子ども達の入学金返済の為に頑張ってるのは知ってる。周りからは小さい依頼しかしないから、それで小馬鹿にされたり喧嘩を売られる事もあるけど、本人は気にしてないね。

 なんというか、自分の決めた芯を絶対に曲げない人なんだと思う。才能が無くても、技術が無くても、知識が無くても。足りないなりに全力で必死に対応してるように見える。
 頑張り屋とか努力家な印象が強いかな……あと、意外と勉強が出来るから教えて欲しい……学年が違うから無理? そっかぁ……」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

処理中です...