自称平凡少年の異世界学園生活

木島綾太

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【五ノ章】納涼祭

第六十九話 夢を魅せる者《取材編》

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「午後から初等部の授業補佐? それって、特別カリキュラムの?」
「うん。ナラタが購買に行ってる間に言われたんだよ」

 購買のパンにかじりついたナラタが首をかしげる。
 召喚獣保護施設から学園に帰ってきた俺達は、教室で昼食を取ろうとして。
 そこに訪れたシルフィ先生に午後の授業を手伝ってほしいと告げられた。
 特に何か用事があるわけでもないので承諾。エリック達も折角だから付き合うと言ってくれた。

「ふぅん……ちょっとは知ってるけど、顧問にあまり首を突っ込むなって言われて取材は自重してたのよね。確かエリックとセリスの家族なんでしょ?」
「ああ、そうだぜ。自慢の家族だ」
「元気いっぱいヤンチャ盛りな奴らさ」
「報道クラブでもその程度しか知らないって事は、学園長や先生が手を回してくれてたのかな?」
「他の生徒と違って事情が特殊ですからね」

 三人のやりとりを尻目に、弁当を片付けながら小声で隣のカグヤと話す。
 無関係な人の目線では事前に知らせも無く、突然編入が決定した十数人の初等部生徒だ。興味が湧かないはずがない。
 刺激を求める連中には格好の的ではあるが、ある程度の抑制は出来ている。
 特にユキの“獣化”──フェンリルに変化する能力は、精神状態の良し悪しで暴発してしまう。非常に不安定で、人目に付く恐れがあるにもかかわらず誰にもバレていない。
 学園長が変化する場所や時間帯を指定してくれるおかげだ。まあ、アカツキ荘の中か外の二択だけど。

「資料をまとめようと思ったけど、近い立場かつ別の視点で見た印象を加味しないと一方的か……よし、私も同行する」
「えっ、うぅん……いや、大丈夫か。んじゃあ、各自武器を持って校庭に集合ね」
『了解』

 子ども達もこちらでの暮らしにだいぶ慣れたし、ユキもつい先日“獣化”して遊んだばかりなので、知らない人が来ても大丈夫だろう。

「…………ん? 武器?」

 食べかけのサンドイッチを片手に、疑問を投げかけるナラタをスルーして。
 俺達はアカツキ荘にそれぞれの武器を取りに行った。

 ◆◇◆◇◆

 日々過ぎていく度に、日差しの熱量が増してくる午後の時間。
 校庭に集まった孤児院の子ども達の前に。
 シルフィ先生と手伝いのアカツキ荘メンバー。ついでに戦闘科の授業だとは思わず、猫耳を垂れさせながら沈んだ表情をしているナラタが並ぶ。

「──それでは今からこちらの皆さんで指導していきます。準備はよろしいですか?」
『はーい!』
「三人か四人でグループを組んで、ちゃんと距離を取って行動するように。出来るな?」
『もちろん!』
「いい返事だね。さあ、始めるよ!」

 セリスの言葉を最後に散らばっていった子ども達を眺める。
 うん、あれくらい離れてたら衝突する事もないかな。

「……私、戦闘科って得意じゃないんだけど」
「まったく、話を聞かず安易に頷くから……出来そうにないなら取材に専念していいよ。そっちが本命でしょ」
「ですが、もし白熱し過ぎて歯止めが利かなそうな子がいたら止めてあげてくださいね」
「わかった……」

 暗に戦力外通告を受けたナラタは、取材用の手帳を取り出して子ども達のグループに向かった。
 もうすでに激しい戦闘音があちらこちらで響いている。

「では私達も別れて指導していきましょうか」
「だね。作ってあげた装備の調子も確認したいし、俺はユキのいるところを見てくるよ」

 互いに気を付けるように目配せして、元気に跳ね回る碧色あおいろ混じりの白髪に近づく。
 子ども達の中でもキオやヨムルなど年長の子を相手にして多対一。
 体格差もあり、種族特有の跳躍力や瞬発力で翻弄する二人に対して。ユキは全体的に高水準な身体能力を遺憾なく発揮し、数的不利を物ともしないパワフルさで押し返す。
 咄嗟の挟撃を、二人が吹き飛ばされたところで手を叩き、注目を集めた。
 パッと花が咲いたような笑顔を浮かべて、駆け寄ってきたユキの頭を撫でる。

「相変わらず凄い力だね。でも言いつけ通り、しっかり手加減できてるみたいでよかったよ」
「ほんと!? えへへ……ほめられちゃった」

 初めて出会った時に打ち明けられた悩みだ。
 ユキは同年代の子達と比べて力が強過ぎて制御できない。日常生活にも支障を及ぼす程の力で誰かを、家族を傷つけてしまうのではないか、と気に病んでいた。
 過去に《デミウル》が企てたエリクシル量産の為、数々の人間が犠牲となった実験。
 人工的に高ランクの魔物モンスター、フェンリルを造り出す素体とされた中で唯一の成功例。
 初等部一年と変わらない幼い外見は、フェンリルの細胞によって成長を阻害されているせいで。本来の年齢は恐らく
 想像を絶する程の責め苦を受けた彼女は精神も肉体も健全とは言いがたく、小さな体に似合わない強大な力は大人を軽々と圧倒する。
 フェンリルに変化する“獣化”も謎が多く不安だが、恒常的な問題として致命的なのは力の制御だった。

 だから特別カリキュラムとアカツキ荘の時間を利用して徹底的に仕込んだ。高いポテンシャルを秘めた体の使い方を。
 不安定な“獣化”が衆目に晒されよくない輩を寄せ付ける、とか。
 混ざり合った魔物の本能が不意に目覚めるのではないか、とか。
 日常に溶け込んだ異物の化けの皮がいつか剥がれる、とか。
 散々考えた不穏の種を、そんなもん知ったこっちゃねぇよ、と投げ捨てた。子どもに頼られたなら胸を張って全力で応えてやるしかないだろう。
 あり余る力を正直にぶつけてやる必要は無い。
 誰にも負けないとっておきの力を別に回せばいい。
 自分の価値が凄まじい力と“獣化”だけなんて狭い視点は持たせない。

「にぃに! あのね、! うまくできるようになったの!」
「うんうん、ちゃんと見てたよ」

 笑顔を向けたまま、ユキは両手を広げる。
 ユキにのみ限った話ではないが、俺は子ども達に練武術の技を伝授していた。
 武術の基本である歩法から派生した無級の技。初級、中級、上級へと続く技の基礎となる“綺羅星きらぼし”と“深華月みかづき”。
 この二つを持てる全てを使って叩き込んだ。
 思想も行動も目指す先も。個々に合わせたアレンジを加えて、誰もが技を得られるように。
 結果として全員が“綺羅星”と“深華月”を会得し、子ども達の戦闘力は格段に跳ね上がった。一部の子どもは、会得する過程でどんな戦況でも冷静でいられる胆力と眼を持つようにもなった。みんな才能あり過ぎじゃない?

 そして重点的に指導していたユキは、“綺羅星”の周囲を利用する性質を自身に当てはめて。
 力を振り回すのではなく力で振り回す“回しの技”を編み出した。
 相手の攻撃を受け流す動作を攻めに変え続ける技術。ユキの強靭な肉体によって可能とされている技で、理論上は多対一だろうが一切の攻撃を受けない。
 要するに常時カウンター状態で戦えるというわけだ。チートかな?
 当然要求される技量は相当なものではあるが、そこもしっかり指導したので問題なし。
 その副産物として、あり余る力を手加減する仕方を覚えたのだ。よかったねぇ。

「キオもヨムルも良い動きだったよ。片方が“綺羅星”で意識を集中させて、もう片方が“深華月”の歩法で死角から奇襲する……声に出さなくても連携が取れてたね」

 ユキを撫でまわす手は止めず、寄ってきた二人を褒める。
 年長組──真の年長はユキだが──は武器をかかげ、顔を見合わせて照れくさそうに笑う。

「クロト兄ちゃんが色々教えてくれたおかげだぜ」
「何も出来ずに無力で悔しかった、孤児院を焼かれた時と比べれば成長したよね」
「だな。っと、そうだ、武器の調整をお願いしたかったんだ」
「あっ! ユキもユキも!」
「俺もそのつもりで三人の所に来たからね。ちょっと見せてくれるか」

 広げた風呂敷の上に置かれた、いくつか突起の付いた短い棒状の物体が二つ。
 黒の布地に幾何学模様が描かれ、手の甲から五指にかけて蒼白い結晶体が埋め込まれた指抜き手袋を眺める。
 棒状の物体は見た目で言えば剣の柄。名前は“トリック・マギア”。
 とある魔物素材と精製金属インゴットを混ぜた特殊金属で作りあげており、高い魔力伝導率と耐久性を保持し、小型化にも成功している。
 意図的に魔科の国グリモワールで流通している可変兵装に寄せて作っているが、遠距離に対応できる能力は無く近接一辺倒。だが、性能は格別だ。

 “トリック・マギア”は内臓してある充填可能な魔力結晶マナ・クリスタの魔力を特定の形、大中小に調節できる刃状で放出し、実体を持たない半透明の刀剣を展開する。
 実体が無いと言いつつ魔法陣を描き加えた刀剣は反発性を持っていて、魔力結晶を硬化させたようなものだ。並の鉄剣程度なら余裕で弾き返せる。
 小型なので制服のポケットに収納可能で、消費した魔力は大気中の魔素から自動で補填されるし、じかに魔力を注入してもいい。
 出力部など精密な部分は無理だが、そこ以外の手入れは個人で出来るように設計している。

 初等部の、ましてや子どもに与える物としては破格の性能。
 彼らにとって馴染み深い可変兵装に近く、変則的な動きが得意であるからこそ使いこなせる変幻自在の刃。
 手品のように相手をあざむく魔法の武器──それが“トリック・マギア”。

「ふむふむ……毎日ちゃんと手入れはしているようだね。魔力伝導率によどみは無く、各調節部、出力も異常が無い辺り無茶な使い方はしていないみたいだ」
「やったら兄ちゃん、怒るじゃん……」
「当たり前だろ。トリック・マギアが壊れるのは構わないが、問題なのは壊れるまで追い込まれる状況になったって事だ。優先すべきは自分と仲間。武器は捨てても命は捨てるな」

 目立った故障も見受けられないトリック・マギアを返しながら釘を刺す。
 二人は思い当たる節があるのか、バツの悪そうな顔をしてそっぽを向く。
 以前、冒険者の依頼を体験しよう、という名目で。子ども達の内、キオやヨムルを含む数人が迷宮ダンジョン攻略をおこなった。
 その際、不慮の事故によってユニーク魔物モンスターに襲撃される事態に。
 シルフィ先生ではなく別の教師が引率してくれたのだが、ユニークの奇襲で半死半生。子ども達も何人かは無視できないケガを負ったが、アリアドネの転移石での脱出ができた。
 しかし転移石を使う隙を作る為に二人が囮を引き受け、迷宮に取り残されてしまった。

 ギルドの酒場でアルバイトをしていた俺の元に駆け込んできた子ども達から事情を聞いて、単独で迷宮に突撃。
 五体のユニークに囲まれている絶望的な状況を、後から合流したエリック達と共に打開して、命からがら地上に帰ってきたのだ。
 奇襲を受けた教師よりも酷い怪我を負って半日寝込んだり、無茶をしたキオとヨムル──ついでに俺も説教を受けたり。
 なんとか全員無事に生き残れた訳だが、下手をすれば何人か死んでいた。

 引率の教師が、子ども達が。誰かが悪いというわけでなく、ただ運が悪かっただけだ。
 だけどそんな出来事があった為、彼らはその話を持ち出されると自責の念が浮かぶらしい。
 俺も偉そうな口を叩けるほど出来た人間じゃないけど、《ディスカード》からようやく地上に出てきて、夢に挑戦できるようになったんだ。
 命は大事にしてもらいたいよ。

「まあ、あの時みたいな極端に危険な目に遭うのは稀だし、何度掘り返されても気分が悪くなる。これ以上は言わんよ」
「でも想定はしておけ、でしょ?」
「実際に体験したんだからかさないのは損だよ……先に二人で使い心地を試してくれ。俺はユキの武器に専念する」
「「へーい」」

 返す言葉は気だるげでありながら、横顔は真剣そのもの。
 少し離れた位置で半透明の刀剣が交差し合う様を一瞥してから、手元の手袋に視線を落とす。
 エンハンスグラブtype‐ゼロの改良版。
 並の武器ではすぐに壊してしまう怪力に耐える専用の武器、エンハンスクラブtype‐ワイ。ユキの強みを更に高める筋力強化・硬化能力に併せて、一定量の魔力を込めた際に鋭利な氷の爪を出現させる。

 氷の爪に関しては国外遠征の前に、“冬樹の森林”と呼ばれる迷宮で討伐したユニーク素材“冷酷な碧き魔爪”と“凍てつく吹雪の結晶”。
 素材置き場の肥やしとなっていた二つの素材をふんだんに注ぎ込んだ為、発現するようになった。
 そうして素材の特性をモロに受けたtype‐Yは、ユキの適性属性である氷寄りの水属性と相性がとても良い。

 エンハンスグラブが元々持つ燃費の悪さに関しては、多少改善したが目標には程遠い。
 しかしユキの魔力量は子ども達の中でも、それどころかアカツキ荘の中でもトップレベルに多い。
 ほぼ無限とも言えるシルフィ先生の次くらいに豊富だと言えば、異常さが分かるだろうか。
 それがフェンリルの影響によるものだという調べは付いていて、何か危険性があるかもしれないと忠告は受けた。だが本人が特に異常なしと宣言しているならば、せっかく備わった物を利用しない手はない。

 膨大な魔力に応えられるだけの柔軟性と靭性を両立させ、素材の伝導率をユキの魔力回路と同調シンクロするように調整すれば、凶悪な燃費であっても半日以上は強化を維持していられる。
 実質、折れず曲がらず砕けない武器だ。作っておいてアレだけど、やり過ぎた。
 まあ、見逃せない欠点としてトリック・マギアより各種調整──魔法陣の術式、回路接続部などが複雑化しているので、俺しか手を加えられない。
 言うほど大したデメリットではないのだが、自分で手入れをする経験が得られなくなってしまうので、俺的にはマイナス評価である。

「自分の物だからこそつちかうべきなんだけどねぇ……別で何か作ってあげようかな……」
「ん? なぁに?」
「なんでもないよ。……ほいっ、調整終了。着けてみて」

 ルーン文字を刻む“刻筆”で術式を書き直したtype‐Yを手渡す。
 伸縮性もあるので小さな手でもしっかり馴染むそれは、ユキの魔力が込められた瞬間──透き通る快音と共に鋭く伸びた氷爪が出現させた。
 片手に三本ずつ。一本一本が短剣のようで、しなやかな体の動きに合わせて風を切り、冷えた魔力の残滓を残す。

「うんっ、いつも通り!」
「みたいだね。何度も言ってるけど、普段は爪を出さずに使ってよ? 魔物相手ならまだしも人に向けて振るうのは危険だから」
「わかってるよぉ」

 そんなことはしない、と不服そうにぷくっと膨らませた。
 子ども達に武器を渡してから、耳にタコが出来るかもってくらい注意してるからな。わずらわしく感じるのも無理はない。
 だけどいつか、こうして間近で見守っていられる時間は少なくなる。
 つまづいても、転んでも、挫けても。手を差し伸べたい時に俺やエリック達はいない。
 一人で立ち直る土台を、基礎を作りあげなくてはいけない。

 子ども達には未来がある。希望がある。夢がある。
 偽りの空を映す地下で夢見ていた、辿り着きたい場所へ向かう挑戦権を得た子ども達を応援したい。
 遠回りでも近道でも、道を決めるのは彼らだ。数々の道を示して背中を押すのが俺達だ。その為なら嫌われ役になっても構わないと思っている。

 ……まあ、そういう対応をしている際、精神の奥で同調してるレオ曰く“血反吐を吐くような衝撃が襲ってくる”らしいが。
 現実世界の表情は変わらないのに、精神的な苦痛はとてつもないそうだ。なるほど、道理で胃がひっくり返りそうなくらい気分が悪くなる訳だ。
 高校一年の時、学童保育のアルバイトでも程々に甘やかすやり方が性に合ってたから、子どもに嫌われるというのが相当キツかった記憶がある。
 悪ガキには相応の言動だったが、それすらツラかった。イレーネ? あいつは子どもじゃなくて女神だからアレくらいでいいのだ。

 今にして思えば、どんな子どもが相手でも寛容かんよう的に、真摯に接するようになったのは学童保育からかもしれない。
 まさかその経験がこうして活かせるとはなぁ……。
 そう考えるとなんだか感慨深くなり、ふと視界に入った、眉根を寄せて不機嫌な顔で睨みつけるユキの頬を突っつく。
 ぽひゅ、と。間抜けな空気の抜ける音が口から漏れた。

「にぃに~!」
「やっべ……キオ、ヨムル! ユキが怒った、助けて!」
「なんで!?」
「うわっ、こっちくんな!」

 地鳴りが響きそうなほど力強く迫ってくる彼女に背を向けて。
 思わぬ情報に振り返る二人の方へ走り、巻き込む。
 非難を受けながらも突発的な鬼ごっこ──捕まったら鯖折りの刑となる、命懸けの勝負が始まった。

 ◆◇◆◇◆

「アイツら、何してんの……? 遊んでる?」
「毎度恒例の鬼ごっこじゃね? ガキどもの連携とスタミナの両方を万遍なく鍛え上げる特訓だぜ」
「他にも反射神経と瞬発力を鍛える障害物ダッシュとかやってたねぇ」
「クロトさんが使う練武術の基礎を、過去の経験を交えて面白おかしく教える事もありますよ」
「それ以外に興味を持った事を体験させる為に、外部から講師となる人を呼んで実演してもらうもよおしも行いましたね」

「なんだってそんなに取り組んでいられるの? 自分には何の利益にもならないでしょ」
「利益とか損得勘定ありきでアイツの相手をしてたら疲れるぞ。一応、そういう事も考えたりはするが、単純にやりたい事を全力でやろうとするだけだ」
「なんて言ってたっけねぇ……ああ、いだかせた夢を諦めさせたくない、だったかな」
「これまでの出会いが、小さくてもきっかけとして心に残ってくれたら嬉しい、とも言ってましたね」
「今までの自分がそうやって助けてもらったから、自分なりのやり方で手を貸してやりたい……立派な精神の持ち主ですよ、彼は」

「つっても、最近は俺達に隠れてコソコソと何かやってるみたいだけどな」
「作らなくていいはずの石鹸を大量生産してたよなぁ」
「この間は余ったお菓子の詰め合わせを持って、どこかへ出掛けていましたね」
「冒険者ギルドに呼び出されて、依頼を受注するのが急に増え始めた時期と重なりますね。彼の性格から考えるに後ろめたい事ではないと思いますが、少し不安です」
「……そこまで知られていながら、あんなにも…………夢を魅せる者、か」
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