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【四ノ章】借金生活、再び
第六十一話 エピローグ
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打ち上げパーティーは大盛況のまま終わり、学食おばちゃんズの言いつけ通り食堂の片付けを全員で済ませた。
使う前より綺麗にする気持ちで掃除して、寮の門限前に満腹満足幸せ気分で解散。
親方やサリファ夫妻、手土産に料理を包んだ袋を持ったリードを見送り、俺達──アカツキ荘のメンバーも我が家へ帰路に着いていた。
「うぇへへへ……」
酔いつぶれたダメな大人を背負って。
実はこいつ、食うだけ食って飲んで騒ぎまくり、持ち込んできた酒を飲み干した途端に糸が切れたように倒れたのだ。
国外遠征から中間試験の疲労が重なった上で酒が入った結果、そうなってしまうのはしょうがないと言える。
無防備にも酒瓶を抱いてテーブルに突っ伏した情けない恰好を晒して、全員から憐憫にも似た生暖かい視線を向けられたのも仕方ないだろう。自業自得だし。
そんな彼女を放置して掃除してたら、フェイスハガーも真っ青な速度で背中に貼り付いてきて離れなくなった。
振り返った瞬間、予備動作無しで跳びかかってきて心臓が破裂するかと思ったぞちくしょうめ。寝ぼけているが故の行動だとしてもホラー映画ばりに怖かったぞ、食べた物ぜんぶ吐き出すところだったわ。
数分前の恐怖映像を思い出し、背筋が泡立つような感覚に襲われる。
「しあわせー……」
当の本人は寝言をこぼしながら全然起きないし、力いっぱいに引っ張っても離れない。でも背中に触れてる柔らかい感触は役得だと思います。最高です。
「すみませんクロトさん。帰ったら引き剥がしてベッドに放り投げますので、それまで我慢してください」
「ええまあ、ぜひそうしてもらえると助かります」
「傍目から見ても相当はしゃいでたしなぁ。俺らも人のこと言えねぇけど」
容赦の無いシルフィ先生の言葉に、俺と同じようにユキを背負ったエリックが笑う。
ユキは、というより子ども達も見ず知らずの人が大勢いて最初は委縮してしまうかとも思ったが、頑張って話そうと自発的に行動していた。
勇気を出して一歩を踏み出し、馴染もうと努力する姿に涙を流す姉弟が居たのは言うまでもない。
そうして打ち上げが終わる頃には騒ぎ疲れたのか、眠りこけてしまう子が出てきた。ユキはその筆頭だ。
他の子は各寮に住む生徒が連れていくと言ってくれたのでお願いして、ユキに関してはエリックに貼り付いて動かなくなったので背負ってもらっている。
「ところでカグヤ、食い切れなかったカルキナを持ち帰って何にするんだい?」
「出汁を取って明日の味噌汁を作ろうかと。使った殻を天日干しして、乾燥させて粉末にすれば調味料にもなりますから」
「いいねぇ! 雑炊もめちゃくちゃ美味かったし、楽しみだよ!」
先行する女子二人は明日の朝食の話題で盛り上がっている。お腹いっぱい食べたはずなのにまたもや空腹になりそうだ。
蟹の味噌汁かぁ……インスタントなら飲んだことあるけど、実際に出汁をとった物はないな。また楽しみが増えたぜ。
雑談をしながら家のある開けた広場に出ると、一つの人影が玄関の照明に照らされ伸びていた。
なんだか前にも同じように人が来た気が……もうすぐ二十一時になろうとしているのに誰だ?
こちらに気づいたのか影が近づいていくる。ぼやけた輪郭が徐々に形を成していくと、さほど年の変わらない女性の姿になっていく。
「……生徒会長?」
ぼそっと呟いたカグヤの言葉に反応した影が歩みを早めた。
全員が息を呑み、身体を強張らせる。月明かりが差し込み、暗くて見えなかった顔が露わになり、
「や、夜分遅くに訪ねてしまい、申し訳なく……」
なぜか今にも泣いてしまいそうな表情で、ふらついた足取りで立ち止まり頭を下げた。
カグヤの言う通りノエル生徒会長だった訳だが、どうしてこんなに疲れ切っているのだろうか。
突然の事態に困惑していると生徒会長が膝から崩れ落ちる。慌てて駆け寄った先生が状態を診ようと手を伸ばして。
ごぎゅるるる!
冗談みたいに大きな腹の虫の音に動きが止まった。恥ずかしそうに顔を両手で隠し、俯く生徒会長を見下ろす俺達。
一瞬の緊張の後に広がる謎の状況に、ただただ時間だけが過ぎていく。
「えっと、あの」
「いえ違うんです本当なら放課後辺りに会いに来ようと思ったんです。でもいなくて探しに行ったら食堂でパーティーしてて、楽しそうな空気の中に上級生という異物を混ぜて白けさせたくなくて、せめて終わるまでここで待ってようと考えた訳でして」
『はあ……』
沈黙に耐え切れず声を掛ければ、別に責めていないのに早口で溢れ出す言い訳のような弁解。
「お昼は担任教師に筆記試験の赤点で小一時間説教されて食べ逃しちゃったし、夜はさっき言ったように立ち尽くしてたから食べてないし、門限も近づいて一旦帰ろうかとも考えたけどここまで待った時間がもったいなくて、意地でも待機しようと一人寂しく夜空を眺めてただけなんですぅ……!」
涙目で身の潔白を証明しようと頑張っているが、誰がどう見ても不審者である。
魔剣の適合者、学園最強、生徒会長。
色々と凄まじい肩書きの塊なのに、目の前にいるのは肩身が狭そうに座り込む一人の女子生徒だ。ギャップがあり過ぎる。
『うぅむ。汝もそうだが、適合者とは変わり者がなりやすいのだろうか』
『張り倒すぞレオ。誰が変わり者だこの野郎』
「ああっ、違う違う……とりあえず用件を手短に伝えないと」
脳内の声に言い返していたら、生徒会長が頭を振って立ち上がった。
空腹でふらついているが視線を俺の方に向けて、頬を緩ませながら。
「簡潔にはっきりと言っておくよ──ボクは君達の敵じゃない」
『っ!?』
この場の全員がうっすらと抱いていた疑問を、見透かしたような言葉をかけてきた。
そして君の、ではなく君達の敵と言ったのだ。つまり彼女は、俺達が魔剣の情報を共有している事実を知り得ていることになる。
さらに言えば自分達には共通の敵がいるという認識を持っている。それがカラミティであるのは間違いない。
懸念があるとすれば、どうやってその事を知ったのか。生徒会長になる程の人物で優れた洞察力があるとしても、あまりにも詳し過ぎる。
学園長室と個人的な場所以外で情報を漏らした記憶はない。可能性があるとしたら実技二日目の早朝──レオに彼女が適合者であると教えられた時か。
気づかなかったが、もしや見回りで俺達の野営地に来ていたのでは……? 学園最強と謳われる実力者なら、察知されずに盗み聞きできるのも可能なはずだ。
しかしそこでカラミティの情報を明かしてはいない。それでも明確に敵がいると分かっているのは、恐らくギルドの依頼で各地を飛んで回る彼女にカラミティが接触したからかもしれない。
内心かなり動揺していて荒唐無稽な予想だが、これが一番有り得る話だと思う。
両手を振りながら敵ではないとアピールをする彼女は、全員の視線を受けて気まずそうに頬を掻く。
「時間も時間だし今日は帰るよ。でも、これだけは覚えていてほしい。会おうとしてもすれ違い続けて何も出来なかったけど、味方である事は伝えておきたかった」
「会長……」
「あとそろそろ空腹で倒れそうだし、君達の団欒を邪魔するのも忍びないからさっさと寮に戻るよ……ごめんね、楽しい雰囲気に水を差すようなマネしてごめんね」
『会長……!』
「大丈夫大丈夫、部屋に戻れば携帯食料あるし。それ食べて朝まで我慢するよ、うん」
『待って会長……!』
平謝りして立ち去ろうとする彼女がかわいそうになってきた。
急いで家の鍵を開けたセリスが、中から作り置きしていたサンドイッチを。カグヤが布で包んだカルキナの脚を数本と、余った米で作ったおにぎりを渡す。
目に見えて顔色が良くなっていく彼女は無言で貰っていいの? という目線を向けてくる。
ええんやで、たらふくお食べ。胸の内に湧いた温かい思いのまま頷く。
「ありがとう、ありがとう……!」
両手で渡された物を抱えて、何度も感謝しながら女子寮の方へ駆けていく。
全員が呆然と立ち尽くし、その背中を見つめる。
「……悪い人じゃあ、なさそうだね」
「面白いっつーか愉快っつーか……なんか抜けてる奴だねぇ」
「前に見た時はあんな残念な感じではなかったんだがな」
「彼女も試験疲れで気が参っていたのでしょう。こうして接触してきた事は、後ほど学園長に相談しましょうか」
「とりあえず、家に入りませんか?」
『うん……』
気の抜けた返事を足下に落としながら我が家へ。
強烈な出来事があって感覚がマヒしてるが、俺達がやるべき事は多い。
子ども達が学園や日常に馴染めるように手伝い、合間に彼らの武具を作成しなくてはいけない。数十人分だ、まとまった時間が欲しい。
入学金返済の為に迷宮攻略や依頼を熟して、足りなければ露店なども開いてお金を稼がなくてはいけない。一五〇〇万メルだ、気が遠くなる。
冒険者として活動する為にまずは折れた長剣を、シフトドライブに耐えうる素材で修繕しなくてはいけない。構想はあるが、親方と協力しないと作れないだろう。
レオの精神世界で魔剣への理解を深めて、異能を使いこなさなくてはいけない。使う、使わないにしろ、カラミティを迎え撃つ為にも決して疎かには出来ない。
目先の問題は最低でもこれくらいあるのだ。あり過ぎる。きつい。
「やることが、やることが多い……!」
吐きたくもない弱音を、誰にも聞こえないように独り言ちながら。
背負っていた学園長を先生と共にソファへ放り投げた。
使う前より綺麗にする気持ちで掃除して、寮の門限前に満腹満足幸せ気分で解散。
親方やサリファ夫妻、手土産に料理を包んだ袋を持ったリードを見送り、俺達──アカツキ荘のメンバーも我が家へ帰路に着いていた。
「うぇへへへ……」
酔いつぶれたダメな大人を背負って。
実はこいつ、食うだけ食って飲んで騒ぎまくり、持ち込んできた酒を飲み干した途端に糸が切れたように倒れたのだ。
国外遠征から中間試験の疲労が重なった上で酒が入った結果、そうなってしまうのはしょうがないと言える。
無防備にも酒瓶を抱いてテーブルに突っ伏した情けない恰好を晒して、全員から憐憫にも似た生暖かい視線を向けられたのも仕方ないだろう。自業自得だし。
そんな彼女を放置して掃除してたら、フェイスハガーも真っ青な速度で背中に貼り付いてきて離れなくなった。
振り返った瞬間、予備動作無しで跳びかかってきて心臓が破裂するかと思ったぞちくしょうめ。寝ぼけているが故の行動だとしてもホラー映画ばりに怖かったぞ、食べた物ぜんぶ吐き出すところだったわ。
数分前の恐怖映像を思い出し、背筋が泡立つような感覚に襲われる。
「しあわせー……」
当の本人は寝言をこぼしながら全然起きないし、力いっぱいに引っ張っても離れない。でも背中に触れてる柔らかい感触は役得だと思います。最高です。
「すみませんクロトさん。帰ったら引き剥がしてベッドに放り投げますので、それまで我慢してください」
「ええまあ、ぜひそうしてもらえると助かります」
「傍目から見ても相当はしゃいでたしなぁ。俺らも人のこと言えねぇけど」
容赦の無いシルフィ先生の言葉に、俺と同じようにユキを背負ったエリックが笑う。
ユキは、というより子ども達も見ず知らずの人が大勢いて最初は委縮してしまうかとも思ったが、頑張って話そうと自発的に行動していた。
勇気を出して一歩を踏み出し、馴染もうと努力する姿に涙を流す姉弟が居たのは言うまでもない。
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「ところでカグヤ、食い切れなかったカルキナを持ち帰って何にするんだい?」
「出汁を取って明日の味噌汁を作ろうかと。使った殻を天日干しして、乾燥させて粉末にすれば調味料にもなりますから」
「いいねぇ! 雑炊もめちゃくちゃ美味かったし、楽しみだよ!」
先行する女子二人は明日の朝食の話題で盛り上がっている。お腹いっぱい食べたはずなのにまたもや空腹になりそうだ。
蟹の味噌汁かぁ……インスタントなら飲んだことあるけど、実際に出汁をとった物はないな。また楽しみが増えたぜ。
雑談をしながら家のある開けた広場に出ると、一つの人影が玄関の照明に照らされ伸びていた。
なんだか前にも同じように人が来た気が……もうすぐ二十一時になろうとしているのに誰だ?
こちらに気づいたのか影が近づいていくる。ぼやけた輪郭が徐々に形を成していくと、さほど年の変わらない女性の姿になっていく。
「……生徒会長?」
ぼそっと呟いたカグヤの言葉に反応した影が歩みを早めた。
全員が息を呑み、身体を強張らせる。月明かりが差し込み、暗くて見えなかった顔が露わになり、
「や、夜分遅くに訪ねてしまい、申し訳なく……」
なぜか今にも泣いてしまいそうな表情で、ふらついた足取りで立ち止まり頭を下げた。
カグヤの言う通りノエル生徒会長だった訳だが、どうしてこんなに疲れ切っているのだろうか。
突然の事態に困惑していると生徒会長が膝から崩れ落ちる。慌てて駆け寄った先生が状態を診ようと手を伸ばして。
ごぎゅるるる!
冗談みたいに大きな腹の虫の音に動きが止まった。恥ずかしそうに顔を両手で隠し、俯く生徒会長を見下ろす俺達。
一瞬の緊張の後に広がる謎の状況に、ただただ時間だけが過ぎていく。
「えっと、あの」
「いえ違うんです本当なら放課後辺りに会いに来ようと思ったんです。でもいなくて探しに行ったら食堂でパーティーしてて、楽しそうな空気の中に上級生という異物を混ぜて白けさせたくなくて、せめて終わるまでここで待ってようと考えた訳でして」
『はあ……』
沈黙に耐え切れず声を掛ければ、別に責めていないのに早口で溢れ出す言い訳のような弁解。
「お昼は担任教師に筆記試験の赤点で小一時間説教されて食べ逃しちゃったし、夜はさっき言ったように立ち尽くしてたから食べてないし、門限も近づいて一旦帰ろうかとも考えたけどここまで待った時間がもったいなくて、意地でも待機しようと一人寂しく夜空を眺めてただけなんですぅ……!」
涙目で身の潔白を証明しようと頑張っているが、誰がどう見ても不審者である。
魔剣の適合者、学園最強、生徒会長。
色々と凄まじい肩書きの塊なのに、目の前にいるのは肩身が狭そうに座り込む一人の女子生徒だ。ギャップがあり過ぎる。
『うぅむ。汝もそうだが、適合者とは変わり者がなりやすいのだろうか』
『張り倒すぞレオ。誰が変わり者だこの野郎』
「ああっ、違う違う……とりあえず用件を手短に伝えないと」
脳内の声に言い返していたら、生徒会長が頭を振って立ち上がった。
空腹でふらついているが視線を俺の方に向けて、頬を緩ませながら。
「簡潔にはっきりと言っておくよ──ボクは君達の敵じゃない」
『っ!?』
この場の全員がうっすらと抱いていた疑問を、見透かしたような言葉をかけてきた。
そして君の、ではなく君達の敵と言ったのだ。つまり彼女は、俺達が魔剣の情報を共有している事実を知り得ていることになる。
さらに言えば自分達には共通の敵がいるという認識を持っている。それがカラミティであるのは間違いない。
懸念があるとすれば、どうやってその事を知ったのか。生徒会長になる程の人物で優れた洞察力があるとしても、あまりにも詳し過ぎる。
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気づかなかったが、もしや見回りで俺達の野営地に来ていたのでは……? 学園最強と謳われる実力者なら、察知されずに盗み聞きできるのも可能なはずだ。
しかしそこでカラミティの情報を明かしてはいない。それでも明確に敵がいると分かっているのは、恐らくギルドの依頼で各地を飛んで回る彼女にカラミティが接触したからかもしれない。
内心かなり動揺していて荒唐無稽な予想だが、これが一番有り得る話だと思う。
両手を振りながら敵ではないとアピールをする彼女は、全員の視線を受けて気まずそうに頬を掻く。
「時間も時間だし今日は帰るよ。でも、これだけは覚えていてほしい。会おうとしてもすれ違い続けて何も出来なかったけど、味方である事は伝えておきたかった」
「会長……」
「あとそろそろ空腹で倒れそうだし、君達の団欒を邪魔するのも忍びないからさっさと寮に戻るよ……ごめんね、楽しい雰囲気に水を差すようなマネしてごめんね」
『会長……!』
「大丈夫大丈夫、部屋に戻れば携帯食料あるし。それ食べて朝まで我慢するよ、うん」
『待って会長……!』
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目に見えて顔色が良くなっていく彼女は無言で貰っていいの? という目線を向けてくる。
ええんやで、たらふくお食べ。胸の内に湧いた温かい思いのまま頷く。
「ありがとう、ありがとう……!」
両手で渡された物を抱えて、何度も感謝しながら女子寮の方へ駆けていく。
全員が呆然と立ち尽くし、その背中を見つめる。
「……悪い人じゃあ、なさそうだね」
「面白いっつーか愉快っつーか……なんか抜けてる奴だねぇ」
「前に見た時はあんな残念な感じではなかったんだがな」
「彼女も試験疲れで気が参っていたのでしょう。こうして接触してきた事は、後ほど学園長に相談しましょうか」
「とりあえず、家に入りませんか?」
『うん……』
気の抜けた返事を足下に落としながら我が家へ。
強烈な出来事があって感覚がマヒしてるが、俺達がやるべき事は多い。
子ども達が学園や日常に馴染めるように手伝い、合間に彼らの武具を作成しなくてはいけない。数十人分だ、まとまった時間が欲しい。
入学金返済の為に迷宮攻略や依頼を熟して、足りなければ露店なども開いてお金を稼がなくてはいけない。一五〇〇万メルだ、気が遠くなる。
冒険者として活動する為にまずは折れた長剣を、シフトドライブに耐えうる素材で修繕しなくてはいけない。構想はあるが、親方と協力しないと作れないだろう。
レオの精神世界で魔剣への理解を深めて、異能を使いこなさなくてはいけない。使う、使わないにしろ、カラミティを迎え撃つ為にも決して疎かには出来ない。
目先の問題は最低でもこれくらいあるのだ。あり過ぎる。きつい。
「やることが、やることが多い……!」
吐きたくもない弱音を、誰にも聞こえないように独り言ちながら。
背負っていた学園長を先生と共にソファへ放り投げた。
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