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【三ノ章】闇を奪う者

幕間 暗躍

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 煙と炎が揺らめく。発生源には瓦礫の山と、点々と散らばる倒れ伏した人がいた。

「──おい、見つけたか!?」
「いや、こっちには何もない!」
「くそ! ヤツめ……いったいどこへ消えた!」

 その間を縫っていくように怒号と足音が交差し、騒音を生み出す。
 胸に紋章が刺繍された制服を身に着けた彼らはせわしく周囲を警戒していた。

「ちっ、怪我人が多い……誰かこいつを運ぶのを手伝ってくれ!」
「ダメだ、そんな悠長にしてられる場合じゃない! ここで治療する!」
「っ……なら治癒魔法を使えるヤツを呼べ! 早くッ!」

 白衣を着た医者が重傷者に手をかざし、魔法を詠唱する。
 そんな彼らを、過去の遺物を利用して建築された高層ビルの屋上から見下ろす人影があった。
 顔まで覆う茶色の外套に身を包み悠然と佇む人物は、この騒動を起こした張本人だ。

「……」

 人影は静かに上を見る。
 太陽も、月も、星も、空も見えない暗闇の天井には極太の鉄管が刺さり、不気味な脈動を繰り返していた。
 大地の命を搾取し、枯渇させ、絶えず人の欲は資源を独占していく。
 限りない技術の進化は人の節度と理性を奪い、犠牲を伴う利益を追求させて──人を狂わせる。
 静かに、だが着実に破滅の道へ進んでいく様は胸の奥を締め付けた。
 早かれ遅かれ、この国は滅ぶ。抑圧された民の不安と、見えざる脅威に爪をぐ獣によって。
 だが、それは自分には関係のないことであり、同時に自分も目的の為に手段を択ばない我欲の塊であると理解していた。
 もてあそばれ、擦り減らされた限りある命をどう使うか。
 この命が果てる前に目的を達せられるか。
 時間は、残されていない。
 人として終わるか、傀儡として利用されるか……結末は、誰にも選ばせない。




「──っ」




 偽りの空に咆哮がとどろく。
 呼応するように、空からこぼれた一粒のしずくが闇にまぎれた──。

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