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コラム
小説を書く練習
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文芸サークルなど、小説の技術向上を目指している場所では、たいがい写生文や三題噺などの練習行事がある。
私も一時期サークルに入るなりして、そういった練習をしたことがあるが、つまらない上に役に立っているようにも感じず、虚しい気分になったものである。
そこでここでは、役に立つ小説の練習方法について紹介する。なお、番号が大きくなるにつれ難易度が高くなる。
1.描写練習
描写練習というと、定番は写生文である。「秋の風景」などというお題が出されて、延々と紅葉やらいわし雲やらを書く。
しかし、そもそも描写とは「何かを表現するため」に書くもので、意味もなくだらだらと文章を長くすればいいというものではない。意味のない文章の羅列など、書くのも読むのも苦痛なだけである。
描写練習の課題を設定する場合、描写対象(風景や人物など)だけでなく、場面・状況設定を一緒に用意するといい。
例題はこんな感じ。
1.公園で一組の男女が別れ話をしているシーンを描写せよ。
2.広場で子供達が野球をしているのを、猫が観察している。猫の視点から野球の風景を描写せよ。
3.男が一人、自宅のマンションで、自分の誕生日をお祝いしているシーンを描写せよ。
これら課題に取り組む際の注意としては、これは描写練習なので、雰囲気を演出することに注力すること。設定の面白さに頼ろうとしない。「別れ話をしている男女は、実はムー大陸の生き残りで……」などと、わけのわからん設定を付け加えてウケを狙おうとしても、かえってお寒い作品になるだけである。ありふれたシチュエーションをそれなりに仕上げるのが、この課題のポイント。
同じシチュエーションで書いたら、ダブるんじゃないかと心配するかもしれないが、その必要は無い。書き手によって全然違う物が仕上がるし、実力差もはっきりと出る。
2.有名書き出しから小説を作る
「ノックの音がした」(星新一『ノックの音が』)や「こんな夢を見た」(夏目漱石『夢十夜』)から書き出す掌編課題。
書き出しを決める課題の問題は、「下手な書き出しからはろくな作品が仕上がらない」という点にある。ヘタクソが考えたヘタクソ書き出しを課題にするよりは、実績のある書き出しを使った方がマシ、というわけ。
「ノック」や「夢」に限らず、プロの作家の掌編、短編の書き出しからいろいろ拝借してみよう。
なお、有栖川有栖氏が「有栖川さんとつくる不思議の物語」という企画をやっていて、毎月書き出しを決めて課題を提出しているので、これを勝手に利用する、という手もある(笑) ここにURLを記すことはしないが、検索すればすぐ見つかるはず。
「有栖川さんとつくる不思議の物語」の応募規定は1200字だが、これは無視して、掌編・短編クラスまでの作品に仕上げる程度の縛りでやった方がいいかと思う。有栖氏の書き出しはある程度字数を必要とするものが多く、1200字でまともな小説に仕上げるのは厳し過ぎる(読売新聞に掲載する関係で、字数制限が厳しいのだと思う)。
3.PR小説
たとえば、日産自動車から「未来の車をイメージした掌編を書いて下さい」と依頼されたと仮定して、その仕事をこなす、という課題。面白くて楽しい小説にするのはもちろん、車のマイナスイメージを煽るような小説を書いてはいけないのは言わずもがな(笑)
クライアントを想定して書く練習は、読者を想定して書くことに他ならず、やっていて損はない。
4.海外作品の翻訳
外国語で書かれた作品を日本語に翻訳する。これは本稿の中でも特におすすめの練習。やってみればすぐわかることだが、外国語のニュアンスはそのまま日本語に訳すことができない場合が多く、日本語としての創作力が問われる。翻訳する際は、他の訳を参考にしてもいいこととする。また、学校でやったであろう、理屈としては合っているかもしれないが日本語としてなっていない訳ではなく、全体の文脈を考えて、多少原文のニュアンスとは異なっても、日本語として自然に読める文章を目指すこと。
ドイルのシャーロック・ホームズシリーズやポーなどは、原文も訳も入手しやすく、そこそこの長さで、かつ、もともと面白い作品なので翻訳作業も楽しめるだろう。
5.民話・音楽歌詞の小説化
民話や歌詞を小説化するという練習法。かなり難易度が高いので、それなりにやる気のある人同士で行うことを推奨する。『竹取物語』などの長い作品を選ぶと本気で大変なので、ロシア民話『おおきなかぶ』などの短いものの方がおすすめ。
この課題のポイントは、変な設定を付け加えないこと、ストーリーを一切変えずに仕上げること。ただし、音楽の歌詞を課題にした場合、内容がかなり抽象的な場合があるので、その場合はある程度独自の解釈をしてもいいことにする。とにかく、原作に忠実に仕上げるように心がける。
6.有名シリーズの二次創作
さらに超難関課題。『シャーロック・ホームズ』シリーズなど、有名短編シリーズの新作を自分で作ってしまうというもの。当然、原作作家との勝負になる。
私も一時期サークルに入るなりして、そういった練習をしたことがあるが、つまらない上に役に立っているようにも感じず、虚しい気分になったものである。
そこでここでは、役に立つ小説の練習方法について紹介する。なお、番号が大きくなるにつれ難易度が高くなる。
1.描写練習
描写練習というと、定番は写生文である。「秋の風景」などというお題が出されて、延々と紅葉やらいわし雲やらを書く。
しかし、そもそも描写とは「何かを表現するため」に書くもので、意味もなくだらだらと文章を長くすればいいというものではない。意味のない文章の羅列など、書くのも読むのも苦痛なだけである。
描写練習の課題を設定する場合、描写対象(風景や人物など)だけでなく、場面・状況設定を一緒に用意するといい。
例題はこんな感じ。
1.公園で一組の男女が別れ話をしているシーンを描写せよ。
2.広場で子供達が野球をしているのを、猫が観察している。猫の視点から野球の風景を描写せよ。
3.男が一人、自宅のマンションで、自分の誕生日をお祝いしているシーンを描写せよ。
これら課題に取り組む際の注意としては、これは描写練習なので、雰囲気を演出することに注力すること。設定の面白さに頼ろうとしない。「別れ話をしている男女は、実はムー大陸の生き残りで……」などと、わけのわからん設定を付け加えてウケを狙おうとしても、かえってお寒い作品になるだけである。ありふれたシチュエーションをそれなりに仕上げるのが、この課題のポイント。
同じシチュエーションで書いたら、ダブるんじゃないかと心配するかもしれないが、その必要は無い。書き手によって全然違う物が仕上がるし、実力差もはっきりと出る。
2.有名書き出しから小説を作る
「ノックの音がした」(星新一『ノックの音が』)や「こんな夢を見た」(夏目漱石『夢十夜』)から書き出す掌編課題。
書き出しを決める課題の問題は、「下手な書き出しからはろくな作品が仕上がらない」という点にある。ヘタクソが考えたヘタクソ書き出しを課題にするよりは、実績のある書き出しを使った方がマシ、というわけ。
「ノック」や「夢」に限らず、プロの作家の掌編、短編の書き出しからいろいろ拝借してみよう。
なお、有栖川有栖氏が「有栖川さんとつくる不思議の物語」という企画をやっていて、毎月書き出しを決めて課題を提出しているので、これを勝手に利用する、という手もある(笑) ここにURLを記すことはしないが、検索すればすぐ見つかるはず。
「有栖川さんとつくる不思議の物語」の応募規定は1200字だが、これは無視して、掌編・短編クラスまでの作品に仕上げる程度の縛りでやった方がいいかと思う。有栖氏の書き出しはある程度字数を必要とするものが多く、1200字でまともな小説に仕上げるのは厳し過ぎる(読売新聞に掲載する関係で、字数制限が厳しいのだと思う)。
3.PR小説
たとえば、日産自動車から「未来の車をイメージした掌編を書いて下さい」と依頼されたと仮定して、その仕事をこなす、という課題。面白くて楽しい小説にするのはもちろん、車のマイナスイメージを煽るような小説を書いてはいけないのは言わずもがな(笑)
クライアントを想定して書く練習は、読者を想定して書くことに他ならず、やっていて損はない。
4.海外作品の翻訳
外国語で書かれた作品を日本語に翻訳する。これは本稿の中でも特におすすめの練習。やってみればすぐわかることだが、外国語のニュアンスはそのまま日本語に訳すことができない場合が多く、日本語としての創作力が問われる。翻訳する際は、他の訳を参考にしてもいいこととする。また、学校でやったであろう、理屈としては合っているかもしれないが日本語としてなっていない訳ではなく、全体の文脈を考えて、多少原文のニュアンスとは異なっても、日本語として自然に読める文章を目指すこと。
ドイルのシャーロック・ホームズシリーズやポーなどは、原文も訳も入手しやすく、そこそこの長さで、かつ、もともと面白い作品なので翻訳作業も楽しめるだろう。
5.民話・音楽歌詞の小説化
民話や歌詞を小説化するという練習法。かなり難易度が高いので、それなりにやる気のある人同士で行うことを推奨する。『竹取物語』などの長い作品を選ぶと本気で大変なので、ロシア民話『おおきなかぶ』などの短いものの方がおすすめ。
この課題のポイントは、変な設定を付け加えないこと、ストーリーを一切変えずに仕上げること。ただし、音楽の歌詞を課題にした場合、内容がかなり抽象的な場合があるので、その場合はある程度独自の解釈をしてもいいことにする。とにかく、原作に忠実に仕上げるように心がける。
6.有名シリーズの二次創作
さらに超難関課題。『シャーロック・ホームズ』シリーズなど、有名短編シリーズの新作を自分で作ってしまうというもの。当然、原作作家との勝負になる。
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