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2.鹿翁館の探索
しおりを挟む 小一時間の楽しい山登りの末、僕らはついに鹿翁館に辿り着いた。
どんなに不気味でゴスい館なのかと想像していたが、その実態は、いかにも普通なたたずまいだった。戦前までに日本で建てられた西洋風の館としては標準的で、日本家屋の基準からしたら大豪邸かもしれないが、西洋の館としては小さい方。セレブの暮らす邸宅というよりは、日本に出稼ぎに来た西欧人が家族と住んでいた、といった感じの館である。
館の正面に広がる、芝生を敷き詰めた庭は、当然と言えば当然だが、すっかり荒れ放題でまだらに枯れ、雑草が伸び放題になっている。ただ、道から玄関口に至るまでの道だけは、雑草が刈られて歩きやすくなっていた。たぶん、教授達が簡易に手入れしたのだろう。
館の外壁は、ところどころ塗装が剥げているが、全体には薄緑色で塗装されている。まあ、なんというか、普通である。長いこと放置されていたので古びて、ところどころ痛んではいるが、それにしても単なる廃屋、といった感じである。悪魔や吸血鬼や怪しい科学者が住んでいるような、ツタが絡まり尖塔に大鴉が留まり、といった大仰で邪悪な感じはない。
ともかく、梶原の後に続き、館の中に入る。
館の中も、さほど目を惹くものはなかった。長年放置された普通の洋館。玄関からホールに入ると、二階へ続く階段と、どこかへ続く扉がふたつ見える。梶原が近くの方の扉を開けて中に入るので、続く。
そこは応接間のようだった。部屋の中央にソファが置かれ、壁際には棚などがあったが、特に目を引いたのは南側が全面窓ガラスになっていて、開放的な作りになっているところだった。そして、その窓ガラス越しに、外の風景を見つめている人影がひとつ。
その人はこちらに気付くと振り返った。懐かしい顔だ。
「ああ、道村君、お久しぶり」
そう言って手を差し出してきたのは、長家である。学生時代は髪が肩まであったが、ばっさりと短髪にしている。髪をばっさりやるのが同期の間で流行っているのだろうか。まあ、同期は3人しかいないのだが。
昔の長家はもっと大人しそうな、いかにも文系な雰囲気の学生だったが、今ではタフそうな印象になっている。動作や言葉もはきはきしていて、いかにも前線で戦う考古学者、といった感じである。
僕は差し出された手を握り返しながら、言った。
「やあ、長家さん。フロリダにいるんだって? よく来たね」
長家は笑いながら言った。
「いやあ、アメリカにいるとね、何をするにも移動距離が長いもんだから、日本に来るのもあんまり大変って感覚がなくなっちゃったんだよね。特に私はフロリダとユカタン半島を行ったり来たりしてるわけでさ、国境を越えるのも特別じゃないわけよ」
「そんなものなの? こっちは県をまたくだけで大冒険だよ。まあ、久々に会えて嬉しいよ」
「こちらこそ」
ひとしきり挨拶が終わったところで、梶原が長家に尋ねる。
「ところで、ざっと見た感じ、どう?」
「うーん、まあ、洋館についてそう詳しいわけじゃないけどさ、見た感じは、戦前の日本で、西洋人が住むために建てた家としては標準的かな。イギリス風の普通のやつだよね。ふたつのことを除いては」
「何?」
「ひとつは立地。なんだってこんな不便な山奥に建てたんだかね。別荘という感じでもないし。もうひとつは裏庭。日本の庭園の真似をしたかったのか、芝生に不規則に岩が置かれていたり、変なところに木が生えていたりしてる」
「なるほど。似たようなことは教授も指摘していたよ」
「まあでも、いま重要なのは、教授がどこに消えたのか、ということだろうけど。今のところ、手掛かりらしいものは見つけてないよ」
「そうか」
二人の話が一段落した隙を見て、僕は言った。
「梶原。教授が失踪したときの状況をもう少し詳しく教えてくれないか?」
「わかった。俺達がその日、館を訪れたのは朝早くだった。教授は前日、研究室で何やら史料を引っ張り出してきては、手帳にしきりに何か書き込みをしていたんだけど、朝早くに俺を呼び出して、館に向かうと言ってきた。ずいぶん興奮している様子だったよ。あの教授にしては珍しいことだった。わかるだろ? それで、俺が車を運転して、教授と二人で館に来たんだ。時間はよく分からないが、ここに着いたのが朝8時とか、そのくらいだったと思う。えらい早い時間にコンビニでおにぎりを買って、それを食いながらさっきの山道を登ってきたのを覚えている。
館に着くと、教授は書斎を調べると言い、俺には応接間で待つよう言った。たぶん、一人で邪魔をされずに調査をしたい、ということなんだろうと俺は思い、言われたとおりにここで待つことにした。その間にデスクワークをこなしながらね。学生のレポートの採点をしたりとか」
「書斎というのは?」
「二階だ。案内しよう」
僕たちは梶原に続き、応接間を出て二階への階段を上る。階段は、僕らが歩く度にきしみをあげる程度には痛んでいたものの、いきなり底が抜ける心配はしなくても良さそうだった。一方で、手すりは下手に体重を預けたりすると危なそうだった。
階段を上ると、まっすぐに伸びる廊下があって、それに沿って扉が3つ見える。
きしむ廊下を歩きながら、梶原が説明する。
「手前二つが居間、もしくはゲストルーム。部屋には家具などはなく、空っぽになっているから、どういう使われ方をしていたかは正確には分からないけど、ともかく寛いだり寝たりするところだろうね。気になるなら後で見たらいいよ。で、一番奥が書斎だ」
梶原はその扉を開けた。中は真っ暗である。梶原は入り口付近でごそごそしていたが、やがて、乾いた音と共に、明かりが点いた。電気は通っているらしい。
その部屋を覗いた瞬間、僕の背筋に冷たいものが走った。この館にやってきて初めて、言い知れぬ不気味なものを感じた。
書斎を見るまでの僕は、正直、この館のあまりの平凡さ、つまらなさに失望していたところがあった。これの件は梶原が言うような「専門家」の出る幕はなく、やはり、警察の仕事なのではないか。ただの失踪事件に過ぎないのではないだろうか、と。
しかし、その書斎を見た瞬間、僕は梶原の言った意味を理解した気がした。
ただし、書斎が見るからに異常だった、というわけではない。部屋の壁は三面とも本棚となっており、そこには本が詰め込まれ、部屋の中央には机があり、椅子がある、という、書斎としてはごく普通の作りだった。
あとは、絨毯の上に紙やら本やらが少々散らばっている。これは書斎としては普通じゃないかもしれないが、主人のいない荒れ果てた館としては、そう変でもないだろう。
「お、こりゃボルヘスだね」
長家が絨毯の上に落ちている一冊を拾い上げた。表題はアルファベットで綴られている。僕は英語ならそこそこ読めるが、その表題は何と書いてあるか読めなかった。
「それ、何語なの? 英語じゃないよね」
「スペイン語だよ。『短くてすんごい物語』ってタイトル。日本語だと何て訳されるのか知らないけど」
梶原が尋ねた。
「で、そのボルヘスってのは何者なんだ?」
聞かれた長家は少し考え込んでから言った。
「うーん。まあ、小説家ってことでいいんじゃないかな。もっともらしいウソを書くのがうまい人だよ。この本は古今東西の怪談を集めた本、という体で書かれていて、結構有名なやつ。本当に怪談を集めて作ったのか、それともボルヘスの創作なのかはわからないけどね」
「怪談? グリム童話みたいなやつ? それともラヴクラフトとか?」
「いやあ、私は小説は専門じゃないから、そう聞かれてもねえ。神話や伝承っぽいんだけど、どことなく作り物くさいところがある、というか」
彼女はページを適当にぱらぱらめくりながら言った。
「俺だって専門じゃないけどさ。しかし、長家がスペイン語を読めるってことなら有り難いよ。正直、何を書いてるのかわからないものが多くてさ」
「わかった。手掛かりになりそうなものがないか、調べてみるよ」
僕は言った。
「話を戻そう。梶原がさっきの応接間にいる間、教授はここで何かをやっていたって話だったよね。それで?」
梶原は困ったような表情をした。
「それが、あとはそれっきりなんだ。日が暮れだしたんで、そろそろ帰った方がいいと思い、俺は教授を呼びに行った。しかし、ノックをしても返事がない。それで、ドアのノブをひねってみた。カギはかかっておらず、開けてみたら、誰もいなかったんだよ」
本をめくりながら、長家が言った。
「基本的なことを2つ聞かせて。まず、教授は本当に書斎に行ったのか。そして、梶原君が知らない間に、ホールから外に出た可能性はないのか」
「教授が書斎に行ったかどうかは、厳密に言うと分からない。俺は二階に行かなかったからね。ただ、朝に館に来たとき、ホールで教授が二階に上がったところは見ている。それを見送ってから応接間に入ったんだ。ただ、二階にはこの書斎以外、見るべきものはないから、書斎に行った可能性が高いとは思うよ。後で他の部屋を見てごらんよ。空っぽで何もないから。
で、次に、俺が知らない間にホールから外に出た可能性だが、これも、全くないとは言わないけど、まずないと思う。というのは、さっき君らも階段を上ったときに気付いたと思うけど、あの階段は使うと結構派手に音を立てるんだ。応接間からでもそれははっきり聞こえる。そして、二階から一階に降りる術は、あの階段を使う以外にない。まあ、カーテンを縄はしご代わりにして窓から脱出するとか、そういうことは可能かもしれないけど、そうした痕跡は見つからなかった。
あと、応接間にはでっかい窓があっただろ? 俺は窓の方を向いて仕事をしてたんだけど、となると、仮に教授がひっそりと階段を下りてホールから外に出て、さっきの山道に行こうとしたら、歩く人影が視界に入ったはずなんだ。これも絶対的な証拠とは言えないけどね」
「じゃあ僕からも質問しよう。仮に教授がこっそり外へ出たとして、徒歩でどこかに行くとしたら、考えられるアテはあるの?」
「この山には他に何もないから、行くとすれば、さっき通ってきた道を戻って、人里まで行くしかないだろうと思う。教授は運転免許を持ってないし、その日乗ってきた車はそのままあったから、車でどこかに行った可能性はない。さっきの道を徒歩でとなると、無理じゃないけどすんごい大変だろうね。だいたい、そんなことをする理由がないと思う。町に戻りたいなら俺に言えば済むことだろ? なんで大変な思いをしてまで徒歩でこっそり帰るのさ」
僕はいつの間にか腕組みをしていた。梶原の言ったことを頭の中で整理して、それで、もう一つ質問が浮かぶ。
「じゃあ、警察はどう考えてるの?」
「警察は、この館についてはさほど調べていない。争った形跡や血痕などの、ここで事件があったことを示すものがないかは調べていたけど、何も出なかったらしい。あと、この山の中もボランティアと共に数日間捜索していたけど、同じく何も見つからなかった。もちろん、さっき通った道には教授を含む複数の足跡があったけど、特に不審な点はなかったらしい。要するに死体を引きずった跡とか、そういうのはなかったってこと。
あとは、教授の家族や交友関係とかを当たって、トラブルに巻き込まれていなかったかを調べたり、教授の行きそうな場所を中心に、教授を見かけなかったか聞き込みをしている。それはそれで現実的なやり方だろうから、文句はない。ただ、俺はどうも、この館そのものに答えが隠されていると感じるんだ」
不意にそこで、会話が途切れた。長家が無意味に本のページをめくる音だけが、室内に規則的に響く。
やがて長家は、ぱたん、と本を閉じた。
「まあ、本当に教授の消息の手掛かりが出るかはわからないけど、せっかく来たんだから調査をはじめようよ。手順はどうするの?」
「うん。俺は今のところ、3つの方面から調査できると考えている。ひとつはこの館の歴史的事実を紐解くこと。これはラザロゼミのゼミ生に図書館などで調べてもらっている。次に、この館の構造や地質の調査。正直あまり期待していないけど、地面に何か埋まっているとか、隠し部屋があるとか、そういうものを探す。最後に、この書斎の調査。本やメモ片を調べて情報を見つける。ああ、あと、ラザロ教授の研究室での手掛かり探しも、ゼミ生を中心にやってもらっているよ。まだ成果はあがっていないけどね。何か意見はある?」
梶原は僕と長家を交互に見る。二人とも何も言わないのを確認すると、頷いて、扉の方へと向かう。
「じゃあ、まずは二人で書斎を調べ始めてもらえないかな。俺はゼミ生の様子を見てこなきゃならないんだ。できるだけすぐ帰るよ」
長家と僕はうなずき、それから、代表で僕が言った。
「わかった。とにかく、やってみないことにはわからんからね」
「ありがとう。じゃあ、俺は行くよ。また後で」
そう言うと、梶原は書斎から出て行った。
残された僕と長家は、しかし、すぐには作業を始めずに、二人して息を殺してその場で突っ立っていた。
しばらくすると、階段のきしみ音が規則正しく聞こえてくる。
長家が、感心したように頷きながら言った。
「なるほど。確かにけっこう、音がするね」
「それに、さっきの話だと、仮にこっそり外に出たとしても、行く場所がないってことだったからなあ。しかし、だとすると、教授はここで蒸発したことになる。そんなことってあるのかな?」
「さあね。ところで、道村君はどう思う?」
長家はイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「何が?」
「梶原君が、どうやって教授を殺して埋めたか」
僕は真顔で言った。
「あいつが犯人だったら、話は簡単なんだよな。その可能性は否定できないよ」
長家も、真面目な表情に戻って言った。
「まあね」
それから、気分を変えようとしたのか、ひとつ咳払いをし、いつもより少し明るめの声で言った。
「ところで、道村君はまだこの館をひととおり見てないんじゃなかった?」
「ああ、来たばかりだからね」
「じゃあ、仕事にかかる前に、ざっと案内するよ。館のことを調べるなら、まずはここの概略を把握しておくべきでしょ」
言われてみたらその通りなので、僕はお願いすることにした。
いや、実際のところは単に、この書斎にいたくなかっただけかもしれない。どうもここには居心地の悪さを感じる。
長家と僕は書斎を出ると、まずは書斎の隣の扉を開けた。
そこは先ほど梶原が言っていたように、空き部屋になっていた。ただ、絨毯に残っている跡や、壁紙の日焼けの度合いの違いなどから、そこがかつて寝室か何かだったことがわかる。
部屋の南側には窓がある。一応、そこから下に降りられるのか確かめようと側に寄ってみたが、かなり高さがある上、ここから降りると正面の庭に出てしまう。庭は応接間から丸見えだから、こっそり抜け出すには不都合である。
その隣の部屋も同じ間取りの空き部屋だった。寝室として使われていたらしい痕跡があるのも同じ。二階はこれでおしまい。
階段をきしませて一階に下りる。館に来たときは、玄関口から右手にある手前の扉から入って、そこが応接間だったわけだが、今度は、階段の奥にある扉を開ける。その先はさらに廊下になっていて、左右に扉がある。左手がトイレと浴室。右手がキッチンになっていた。
キッチンには、最近使われた形跡がある。館の調査中に教授達が利用したことがあるのだろう。
キッチンには、食堂に続く扉と、裏庭に出る勝手口がある。
まずは食堂の方に出てみる。食堂には長いテーブルが置かれ、テーブルクロスがかけられている。そして、一定間隔で燭台が置かれている。ただ、長年使われていないのは明らかで、燭台は錆付き、テーブルや椅子のニスはすっかり劣化して剥がれている。
主人が座る席の後ろには暖炉がある。この暖炉も長いこと使われた形跡がない。そして暖炉の上には、木製の雄鹿の仮面が飾ってあった。立派な角を生やし、厳めしい顔つきをした鹿である。
「鹿翁館という名前の由来はこれなのかな?」
僕は仮面を見上げながら言った。長家も同じように仮面を見上げながら、首を傾げる。
「さあ。私はむしろ、鹿翁館という名前だから、この仮面を飾ってみたんじゃないかと思ってたんだけど」
「なんでそう思うの?」
僕が尋ねると、長家は仮面を指さして言った。
「見た感じ、これって結構新しいもののような気がしない? 館の年季の入り方と比べると浮いて見えるというか。館と一緒に年を取ったんじゃなくて、途中から後付けされたもののように見えるんだよね。まあ、実際のところはわからないけど」
「なるほど」
言われてみると、仮面は痛みが少ない。それは、表面に塗られたニスが劣化していないことからも明らかだった。日常的に使用されるテーブルや椅子と、直射日光が差し込まない壁に掛けられた仮面とを単純に比較することはできないが、それにしても彼女が「浮いている」と評した感じは確かにあった。
キッチンに戻り、今度は勝手口から外に出る。外には使用人が住んでいたと思われる小屋と、物置があった。そして、その先は裏庭になっている。
裏庭は、長家がさきほど奇妙だ、みたいなことを言っていたような気がするが、確かに奇妙な庭だった。表と同じく芝を敷き詰めているのだが(そしてやはり表と同じように、今となっては芝生は荒れているのだが)、その中に大きな岩が無造作にいくつか置かれていたりする。そして、ある岩の隣には、これまた樫の木が一本、でんと植わっている。もともと生えていたのではなく、わざわざ植えたのであろう。そんなものを植えたせいで、木の陰になる部分だけ、せっかくの芝生がはげ上がって、土が露出している。
この館の主が何をしたかったのかは分からないが、かなり変なセンスの持ち主だったようである。
裏庭はそのくらいにして、使用人の小屋を覗く。本館とは比べるまでもなく質素な作りだが、それでも学生のアパート暮らしよりは遙かに広々としている。いずれにせよ、小屋の中は片付いており、何も無かった。また、埃の積もり方からしても、長年使われていないことが窺える。比較的新しい足跡がいくつかあったが、これは館の調査の時に付いたものだろう。失踪事件とは関係なさそうである。
物置には、スコップやバケツなど、主に庭の手入れ用と思われるものが収納されている。目に付いたもので興味深かったのは、年代物の自動芝刈り機である。ちょっと埃を払って動かしてみたい気分になったが、何十年も使われていなかったわけだから、本気で動かそうとしたらエンジンの分解清掃は絶対に必須だろう。そんなことをしている場合ではない。
といったところで、館の見学ツアーは終わりである。帰り道に、長家が尋ねてきた。
「どう、何か気になったところはある?」
「うん。まあ、はっきり言って平凡な洋館だよね。裏庭のセンスは変だし、なんでこんなところに建っているのか、という謎はあるけど、ごく普通に使われてきた、ごく普通のお家に見える」
「けどさ、こうなると圧倒的に変じゃない?」
長家の含みのある言葉に、僕は首を傾げた。そう言われても、思い当たることがない。なので、素直に訊いてみた。
「何が」
長家は言った。
「書斎だけが片付いてないってこと」
僕は思わず身震いした。心底書斎に戻りたくなくなってきた。
どんなに不気味でゴスい館なのかと想像していたが、その実態は、いかにも普通なたたずまいだった。戦前までに日本で建てられた西洋風の館としては標準的で、日本家屋の基準からしたら大豪邸かもしれないが、西洋の館としては小さい方。セレブの暮らす邸宅というよりは、日本に出稼ぎに来た西欧人が家族と住んでいた、といった感じの館である。
館の正面に広がる、芝生を敷き詰めた庭は、当然と言えば当然だが、すっかり荒れ放題でまだらに枯れ、雑草が伸び放題になっている。ただ、道から玄関口に至るまでの道だけは、雑草が刈られて歩きやすくなっていた。たぶん、教授達が簡易に手入れしたのだろう。
館の外壁は、ところどころ塗装が剥げているが、全体には薄緑色で塗装されている。まあ、なんというか、普通である。長いこと放置されていたので古びて、ところどころ痛んではいるが、それにしても単なる廃屋、といった感じである。悪魔や吸血鬼や怪しい科学者が住んでいるような、ツタが絡まり尖塔に大鴉が留まり、といった大仰で邪悪な感じはない。
ともかく、梶原の後に続き、館の中に入る。
館の中も、さほど目を惹くものはなかった。長年放置された普通の洋館。玄関からホールに入ると、二階へ続く階段と、どこかへ続く扉がふたつ見える。梶原が近くの方の扉を開けて中に入るので、続く。
そこは応接間のようだった。部屋の中央にソファが置かれ、壁際には棚などがあったが、特に目を引いたのは南側が全面窓ガラスになっていて、開放的な作りになっているところだった。そして、その窓ガラス越しに、外の風景を見つめている人影がひとつ。
その人はこちらに気付くと振り返った。懐かしい顔だ。
「ああ、道村君、お久しぶり」
そう言って手を差し出してきたのは、長家である。学生時代は髪が肩まであったが、ばっさりと短髪にしている。髪をばっさりやるのが同期の間で流行っているのだろうか。まあ、同期は3人しかいないのだが。
昔の長家はもっと大人しそうな、いかにも文系な雰囲気の学生だったが、今ではタフそうな印象になっている。動作や言葉もはきはきしていて、いかにも前線で戦う考古学者、といった感じである。
僕は差し出された手を握り返しながら、言った。
「やあ、長家さん。フロリダにいるんだって? よく来たね」
長家は笑いながら言った。
「いやあ、アメリカにいるとね、何をするにも移動距離が長いもんだから、日本に来るのもあんまり大変って感覚がなくなっちゃったんだよね。特に私はフロリダとユカタン半島を行ったり来たりしてるわけでさ、国境を越えるのも特別じゃないわけよ」
「そんなものなの? こっちは県をまたくだけで大冒険だよ。まあ、久々に会えて嬉しいよ」
「こちらこそ」
ひとしきり挨拶が終わったところで、梶原が長家に尋ねる。
「ところで、ざっと見た感じ、どう?」
「うーん、まあ、洋館についてそう詳しいわけじゃないけどさ、見た感じは、戦前の日本で、西洋人が住むために建てた家としては標準的かな。イギリス風の普通のやつだよね。ふたつのことを除いては」
「何?」
「ひとつは立地。なんだってこんな不便な山奥に建てたんだかね。別荘という感じでもないし。もうひとつは裏庭。日本の庭園の真似をしたかったのか、芝生に不規則に岩が置かれていたり、変なところに木が生えていたりしてる」
「なるほど。似たようなことは教授も指摘していたよ」
「まあでも、いま重要なのは、教授がどこに消えたのか、ということだろうけど。今のところ、手掛かりらしいものは見つけてないよ」
「そうか」
二人の話が一段落した隙を見て、僕は言った。
「梶原。教授が失踪したときの状況をもう少し詳しく教えてくれないか?」
「わかった。俺達がその日、館を訪れたのは朝早くだった。教授は前日、研究室で何やら史料を引っ張り出してきては、手帳にしきりに何か書き込みをしていたんだけど、朝早くに俺を呼び出して、館に向かうと言ってきた。ずいぶん興奮している様子だったよ。あの教授にしては珍しいことだった。わかるだろ? それで、俺が車を運転して、教授と二人で館に来たんだ。時間はよく分からないが、ここに着いたのが朝8時とか、そのくらいだったと思う。えらい早い時間にコンビニでおにぎりを買って、それを食いながらさっきの山道を登ってきたのを覚えている。
館に着くと、教授は書斎を調べると言い、俺には応接間で待つよう言った。たぶん、一人で邪魔をされずに調査をしたい、ということなんだろうと俺は思い、言われたとおりにここで待つことにした。その間にデスクワークをこなしながらね。学生のレポートの採点をしたりとか」
「書斎というのは?」
「二階だ。案内しよう」
僕たちは梶原に続き、応接間を出て二階への階段を上る。階段は、僕らが歩く度にきしみをあげる程度には痛んでいたものの、いきなり底が抜ける心配はしなくても良さそうだった。一方で、手すりは下手に体重を預けたりすると危なそうだった。
階段を上ると、まっすぐに伸びる廊下があって、それに沿って扉が3つ見える。
きしむ廊下を歩きながら、梶原が説明する。
「手前二つが居間、もしくはゲストルーム。部屋には家具などはなく、空っぽになっているから、どういう使われ方をしていたかは正確には分からないけど、ともかく寛いだり寝たりするところだろうね。気になるなら後で見たらいいよ。で、一番奥が書斎だ」
梶原はその扉を開けた。中は真っ暗である。梶原は入り口付近でごそごそしていたが、やがて、乾いた音と共に、明かりが点いた。電気は通っているらしい。
その部屋を覗いた瞬間、僕の背筋に冷たいものが走った。この館にやってきて初めて、言い知れぬ不気味なものを感じた。
書斎を見るまでの僕は、正直、この館のあまりの平凡さ、つまらなさに失望していたところがあった。これの件は梶原が言うような「専門家」の出る幕はなく、やはり、警察の仕事なのではないか。ただの失踪事件に過ぎないのではないだろうか、と。
しかし、その書斎を見た瞬間、僕は梶原の言った意味を理解した気がした。
ただし、書斎が見るからに異常だった、というわけではない。部屋の壁は三面とも本棚となっており、そこには本が詰め込まれ、部屋の中央には机があり、椅子がある、という、書斎としてはごく普通の作りだった。
あとは、絨毯の上に紙やら本やらが少々散らばっている。これは書斎としては普通じゃないかもしれないが、主人のいない荒れ果てた館としては、そう変でもないだろう。
「お、こりゃボルヘスだね」
長家が絨毯の上に落ちている一冊を拾い上げた。表題はアルファベットで綴られている。僕は英語ならそこそこ読めるが、その表題は何と書いてあるか読めなかった。
「それ、何語なの? 英語じゃないよね」
「スペイン語だよ。『短くてすんごい物語』ってタイトル。日本語だと何て訳されるのか知らないけど」
梶原が尋ねた。
「で、そのボルヘスってのは何者なんだ?」
聞かれた長家は少し考え込んでから言った。
「うーん。まあ、小説家ってことでいいんじゃないかな。もっともらしいウソを書くのがうまい人だよ。この本は古今東西の怪談を集めた本、という体で書かれていて、結構有名なやつ。本当に怪談を集めて作ったのか、それともボルヘスの創作なのかはわからないけどね」
「怪談? グリム童話みたいなやつ? それともラヴクラフトとか?」
「いやあ、私は小説は専門じゃないから、そう聞かれてもねえ。神話や伝承っぽいんだけど、どことなく作り物くさいところがある、というか」
彼女はページを適当にぱらぱらめくりながら言った。
「俺だって専門じゃないけどさ。しかし、長家がスペイン語を読めるってことなら有り難いよ。正直、何を書いてるのかわからないものが多くてさ」
「わかった。手掛かりになりそうなものがないか、調べてみるよ」
僕は言った。
「話を戻そう。梶原がさっきの応接間にいる間、教授はここで何かをやっていたって話だったよね。それで?」
梶原は困ったような表情をした。
「それが、あとはそれっきりなんだ。日が暮れだしたんで、そろそろ帰った方がいいと思い、俺は教授を呼びに行った。しかし、ノックをしても返事がない。それで、ドアのノブをひねってみた。カギはかかっておらず、開けてみたら、誰もいなかったんだよ」
本をめくりながら、長家が言った。
「基本的なことを2つ聞かせて。まず、教授は本当に書斎に行ったのか。そして、梶原君が知らない間に、ホールから外に出た可能性はないのか」
「教授が書斎に行ったかどうかは、厳密に言うと分からない。俺は二階に行かなかったからね。ただ、朝に館に来たとき、ホールで教授が二階に上がったところは見ている。それを見送ってから応接間に入ったんだ。ただ、二階にはこの書斎以外、見るべきものはないから、書斎に行った可能性が高いとは思うよ。後で他の部屋を見てごらんよ。空っぽで何もないから。
で、次に、俺が知らない間にホールから外に出た可能性だが、これも、全くないとは言わないけど、まずないと思う。というのは、さっき君らも階段を上ったときに気付いたと思うけど、あの階段は使うと結構派手に音を立てるんだ。応接間からでもそれははっきり聞こえる。そして、二階から一階に降りる術は、あの階段を使う以外にない。まあ、カーテンを縄はしご代わりにして窓から脱出するとか、そういうことは可能かもしれないけど、そうした痕跡は見つからなかった。
あと、応接間にはでっかい窓があっただろ? 俺は窓の方を向いて仕事をしてたんだけど、となると、仮に教授がひっそりと階段を下りてホールから外に出て、さっきの山道に行こうとしたら、歩く人影が視界に入ったはずなんだ。これも絶対的な証拠とは言えないけどね」
「じゃあ僕からも質問しよう。仮に教授がこっそり外へ出たとして、徒歩でどこかに行くとしたら、考えられるアテはあるの?」
「この山には他に何もないから、行くとすれば、さっき通ってきた道を戻って、人里まで行くしかないだろうと思う。教授は運転免許を持ってないし、その日乗ってきた車はそのままあったから、車でどこかに行った可能性はない。さっきの道を徒歩でとなると、無理じゃないけどすんごい大変だろうね。だいたい、そんなことをする理由がないと思う。町に戻りたいなら俺に言えば済むことだろ? なんで大変な思いをしてまで徒歩でこっそり帰るのさ」
僕はいつの間にか腕組みをしていた。梶原の言ったことを頭の中で整理して、それで、もう一つ質問が浮かぶ。
「じゃあ、警察はどう考えてるの?」
「警察は、この館についてはさほど調べていない。争った形跡や血痕などの、ここで事件があったことを示すものがないかは調べていたけど、何も出なかったらしい。あと、この山の中もボランティアと共に数日間捜索していたけど、同じく何も見つからなかった。もちろん、さっき通った道には教授を含む複数の足跡があったけど、特に不審な点はなかったらしい。要するに死体を引きずった跡とか、そういうのはなかったってこと。
あとは、教授の家族や交友関係とかを当たって、トラブルに巻き込まれていなかったかを調べたり、教授の行きそうな場所を中心に、教授を見かけなかったか聞き込みをしている。それはそれで現実的なやり方だろうから、文句はない。ただ、俺はどうも、この館そのものに答えが隠されていると感じるんだ」
不意にそこで、会話が途切れた。長家が無意味に本のページをめくる音だけが、室内に規則的に響く。
やがて長家は、ぱたん、と本を閉じた。
「まあ、本当に教授の消息の手掛かりが出るかはわからないけど、せっかく来たんだから調査をはじめようよ。手順はどうするの?」
「うん。俺は今のところ、3つの方面から調査できると考えている。ひとつはこの館の歴史的事実を紐解くこと。これはラザロゼミのゼミ生に図書館などで調べてもらっている。次に、この館の構造や地質の調査。正直あまり期待していないけど、地面に何か埋まっているとか、隠し部屋があるとか、そういうものを探す。最後に、この書斎の調査。本やメモ片を調べて情報を見つける。ああ、あと、ラザロ教授の研究室での手掛かり探しも、ゼミ生を中心にやってもらっているよ。まだ成果はあがっていないけどね。何か意見はある?」
梶原は僕と長家を交互に見る。二人とも何も言わないのを確認すると、頷いて、扉の方へと向かう。
「じゃあ、まずは二人で書斎を調べ始めてもらえないかな。俺はゼミ生の様子を見てこなきゃならないんだ。できるだけすぐ帰るよ」
長家と僕はうなずき、それから、代表で僕が言った。
「わかった。とにかく、やってみないことにはわからんからね」
「ありがとう。じゃあ、俺は行くよ。また後で」
そう言うと、梶原は書斎から出て行った。
残された僕と長家は、しかし、すぐには作業を始めずに、二人して息を殺してその場で突っ立っていた。
しばらくすると、階段のきしみ音が規則正しく聞こえてくる。
長家が、感心したように頷きながら言った。
「なるほど。確かにけっこう、音がするね」
「それに、さっきの話だと、仮にこっそり外に出たとしても、行く場所がないってことだったからなあ。しかし、だとすると、教授はここで蒸発したことになる。そんなことってあるのかな?」
「さあね。ところで、道村君はどう思う?」
長家はイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「何が?」
「梶原君が、どうやって教授を殺して埋めたか」
僕は真顔で言った。
「あいつが犯人だったら、話は簡単なんだよな。その可能性は否定できないよ」
長家も、真面目な表情に戻って言った。
「まあね」
それから、気分を変えようとしたのか、ひとつ咳払いをし、いつもより少し明るめの声で言った。
「ところで、道村君はまだこの館をひととおり見てないんじゃなかった?」
「ああ、来たばかりだからね」
「じゃあ、仕事にかかる前に、ざっと案内するよ。館のことを調べるなら、まずはここの概略を把握しておくべきでしょ」
言われてみたらその通りなので、僕はお願いすることにした。
いや、実際のところは単に、この書斎にいたくなかっただけかもしれない。どうもここには居心地の悪さを感じる。
長家と僕は書斎を出ると、まずは書斎の隣の扉を開けた。
そこは先ほど梶原が言っていたように、空き部屋になっていた。ただ、絨毯に残っている跡や、壁紙の日焼けの度合いの違いなどから、そこがかつて寝室か何かだったことがわかる。
部屋の南側には窓がある。一応、そこから下に降りられるのか確かめようと側に寄ってみたが、かなり高さがある上、ここから降りると正面の庭に出てしまう。庭は応接間から丸見えだから、こっそり抜け出すには不都合である。
その隣の部屋も同じ間取りの空き部屋だった。寝室として使われていたらしい痕跡があるのも同じ。二階はこれでおしまい。
階段をきしませて一階に下りる。館に来たときは、玄関口から右手にある手前の扉から入って、そこが応接間だったわけだが、今度は、階段の奥にある扉を開ける。その先はさらに廊下になっていて、左右に扉がある。左手がトイレと浴室。右手がキッチンになっていた。
キッチンには、最近使われた形跡がある。館の調査中に教授達が利用したことがあるのだろう。
キッチンには、食堂に続く扉と、裏庭に出る勝手口がある。
まずは食堂の方に出てみる。食堂には長いテーブルが置かれ、テーブルクロスがかけられている。そして、一定間隔で燭台が置かれている。ただ、長年使われていないのは明らかで、燭台は錆付き、テーブルや椅子のニスはすっかり劣化して剥がれている。
主人が座る席の後ろには暖炉がある。この暖炉も長いこと使われた形跡がない。そして暖炉の上には、木製の雄鹿の仮面が飾ってあった。立派な角を生やし、厳めしい顔つきをした鹿である。
「鹿翁館という名前の由来はこれなのかな?」
僕は仮面を見上げながら言った。長家も同じように仮面を見上げながら、首を傾げる。
「さあ。私はむしろ、鹿翁館という名前だから、この仮面を飾ってみたんじゃないかと思ってたんだけど」
「なんでそう思うの?」
僕が尋ねると、長家は仮面を指さして言った。
「見た感じ、これって結構新しいもののような気がしない? 館の年季の入り方と比べると浮いて見えるというか。館と一緒に年を取ったんじゃなくて、途中から後付けされたもののように見えるんだよね。まあ、実際のところはわからないけど」
「なるほど」
言われてみると、仮面は痛みが少ない。それは、表面に塗られたニスが劣化していないことからも明らかだった。日常的に使用されるテーブルや椅子と、直射日光が差し込まない壁に掛けられた仮面とを単純に比較することはできないが、それにしても彼女が「浮いている」と評した感じは確かにあった。
キッチンに戻り、今度は勝手口から外に出る。外には使用人が住んでいたと思われる小屋と、物置があった。そして、その先は裏庭になっている。
裏庭は、長家がさきほど奇妙だ、みたいなことを言っていたような気がするが、確かに奇妙な庭だった。表と同じく芝を敷き詰めているのだが(そしてやはり表と同じように、今となっては芝生は荒れているのだが)、その中に大きな岩が無造作にいくつか置かれていたりする。そして、ある岩の隣には、これまた樫の木が一本、でんと植わっている。もともと生えていたのではなく、わざわざ植えたのであろう。そんなものを植えたせいで、木の陰になる部分だけ、せっかくの芝生がはげ上がって、土が露出している。
この館の主が何をしたかったのかは分からないが、かなり変なセンスの持ち主だったようである。
裏庭はそのくらいにして、使用人の小屋を覗く。本館とは比べるまでもなく質素な作りだが、それでも学生のアパート暮らしよりは遙かに広々としている。いずれにせよ、小屋の中は片付いており、何も無かった。また、埃の積もり方からしても、長年使われていないことが窺える。比較的新しい足跡がいくつかあったが、これは館の調査の時に付いたものだろう。失踪事件とは関係なさそうである。
物置には、スコップやバケツなど、主に庭の手入れ用と思われるものが収納されている。目に付いたもので興味深かったのは、年代物の自動芝刈り機である。ちょっと埃を払って動かしてみたい気分になったが、何十年も使われていなかったわけだから、本気で動かそうとしたらエンジンの分解清掃は絶対に必須だろう。そんなことをしている場合ではない。
といったところで、館の見学ツアーは終わりである。帰り道に、長家が尋ねてきた。
「どう、何か気になったところはある?」
「うん。まあ、はっきり言って平凡な洋館だよね。裏庭のセンスは変だし、なんでこんなところに建っているのか、という謎はあるけど、ごく普通に使われてきた、ごく普通のお家に見える」
「けどさ、こうなると圧倒的に変じゃない?」
長家の含みのある言葉に、僕は首を傾げた。そう言われても、思い当たることがない。なので、素直に訊いてみた。
「何が」
長家は言った。
「書斎だけが片付いてないってこと」
僕は思わず身震いした。心底書斎に戻りたくなくなってきた。
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