5 / 10
はじめまして
しおりを挟む
「おはよう」
「おはよー、昨日のドラマ見た?」
「見た見た!それより今日、転校生が来るんだって」
「えっ本当!どんな子が来るの!」
みんなが元気よく会話している中、俺はいつも通り一人静かに席に着いた。転校生なんて俺には関係ないしな。
「初めまして、山梨県から来た原城杏一です。これからよろしくお願いします」
先生からの紹介や転校生の自己紹介が進んでいる時、俺は窓の外を眺めていた。とても天気が良い日で、蝶が花の周りを飛んでいるのが見えた。
今日も特に何事もなく終わるだろうなと考えていた時、前から強い視線を感じた。
「初めまして、原城杏一です。今日からよろしくな」
「えっ、あの……よろしく、お願いします」
は?なんで俺の前なんだよ。望んでこうなったわけじゃないのに、なんだか女子からの視線が痛い。俺の平穏な日々を返してくれよ。無駄にイケメンなのも腹が立つ。
昨日、俺の席の後ろに机を置き始めたから何かと思ってたけれど、転校生の机だったのか。絶対に後ろの席は譲りたくないから、机を持ってきた先生に俺の前においてくれって言ったんだよな。もっと考えるべきだった。
起きてしまったことは仕方がない。この状況で何事もなく過ごせるように全力を尽くすだけだ。
「安藤、原城に学校の案内とかしてやれよー」
先生がそう言って朝のホームルームは終わった。そして、俺の平和な時間も終わりを告げたと思っていた。
だが、めちゃくちゃ話しかけられるかもと思ってびくびくしていたのに、朝に話しかけられて以降は特に何もなかった。
周りに勝手に人が集まって、俺に話す時間なんてなさそうだった。さっきも部活動の見学とかであっちこっちに引っ張られていたし、なんか杞憂だったな。
図書委員の当番があった俺は、放課後の大して人の来ない図書館へ行き、貸出台で呆けていた。どうせ今日も誰も来ないだろ。
夕日に当たってうとうと(・・・・)していると、足音が聞こえてきた。ん?誰だよ。
「これ借りるよ」
えっ、こいつ何でいるの、取り巻きはどうした?
「そんな驚かなくてもいいだろ。バーコード読み取ってくれる?」
「あ、はい」
あっこれ、俺が好きな作者の本だ。
「あのさ、一緒に帰らない?さっきまで部活動見学していたんだけれど、トイレに行ってたら迷っちゃってさ。どうせもう委員の仕事も終わりだろ?」
時計を指しながら相変わらずかっこいい顔で笑っている。なんなんだこいつは、勝手に迷子になって俺と一緒に帰ろうって、一緒にいるのを見られるのは嫌なのに。
だってこいつ転校初日から人気者になっちゃってるし、なるべく静かに関わらずに過ごしたい俺としては、一緒にいて百害あって一利なしな存在だ。でも、転校生を無視して先に帰るっていうのもなんだか後味が悪い。
しばらく悩んだ後、仕方ないから一緒に帰るかと思い鞄を持とうとした。持とうとしたのだが、なぜかあいつが俺のカバンを持っている。
「おい、返せよ」
「ははっ返して欲しかったら一緒に帰るぞ」
小走りで図書館を出ていこうとするあいつを急いで追いかけた。そしてそのまま玄関まで走り抜けて、俺は息を切らしていた。
「安藤は走るのが遅いな」
それなりの距離を走ったはずなのに余裕そうなあいつは、俺を見ながら笑っている。なんで俺がこんなに振り回されてるんだよ。俺の方が転校生みたいじゃないか。さすがに腹が立ったのでキッと睨んでみた。
「悪かったって、ほら鞄返すよ」
あいつから鞄を奪い取って靴を履き替える。本当はそのまま無視して帰ってもよかったのだが、振り返って見たときのあいつの顔が何だか放っておけなかったから……
「何でそこに突っ立ってるんだよ。一緒に帰るんじゃなかったのか」
「…た、けいた、京太。起きろ、祭りの準備するぞ。」
あれ、夢か。どうやら昼寝をしてしまっていたみたいだ。杏一に初めて会った日、確かあの後に本の作者の話とかで盛り上がって、気づいたら友達になってたよな。
杏一はあれやこれやと俺の前に持ってきて、いろいろ準備している。これから着替えて祭りの手順を聞くのだが、いくら何でも付け焼き刃すぎないか。
時間は沢山あったはずなのに、聞いてもはぐらかされてばかりで祭りの内容はほとんどよく分かっていない。村に来てから気づけば1週間は過ぎていた。
村の繁栄を願う祭りらしいが、そもそも村人と会っていないから繫栄とか言われてもなあという感じだ。だが、引き受けてしまったからにはちゃんとやらなきゃだめだよな。
「おはよー、昨日のドラマ見た?」
「見た見た!それより今日、転校生が来るんだって」
「えっ本当!どんな子が来るの!」
みんなが元気よく会話している中、俺はいつも通り一人静かに席に着いた。転校生なんて俺には関係ないしな。
「初めまして、山梨県から来た原城杏一です。これからよろしくお願いします」
先生からの紹介や転校生の自己紹介が進んでいる時、俺は窓の外を眺めていた。とても天気が良い日で、蝶が花の周りを飛んでいるのが見えた。
今日も特に何事もなく終わるだろうなと考えていた時、前から強い視線を感じた。
「初めまして、原城杏一です。今日からよろしくな」
「えっ、あの……よろしく、お願いします」
は?なんで俺の前なんだよ。望んでこうなったわけじゃないのに、なんだか女子からの視線が痛い。俺の平穏な日々を返してくれよ。無駄にイケメンなのも腹が立つ。
昨日、俺の席の後ろに机を置き始めたから何かと思ってたけれど、転校生の机だったのか。絶対に後ろの席は譲りたくないから、机を持ってきた先生に俺の前においてくれって言ったんだよな。もっと考えるべきだった。
起きてしまったことは仕方がない。この状況で何事もなく過ごせるように全力を尽くすだけだ。
「安藤、原城に学校の案内とかしてやれよー」
先生がそう言って朝のホームルームは終わった。そして、俺の平和な時間も終わりを告げたと思っていた。
だが、めちゃくちゃ話しかけられるかもと思ってびくびくしていたのに、朝に話しかけられて以降は特に何もなかった。
周りに勝手に人が集まって、俺に話す時間なんてなさそうだった。さっきも部活動の見学とかであっちこっちに引っ張られていたし、なんか杞憂だったな。
図書委員の当番があった俺は、放課後の大して人の来ない図書館へ行き、貸出台で呆けていた。どうせ今日も誰も来ないだろ。
夕日に当たってうとうと(・・・・)していると、足音が聞こえてきた。ん?誰だよ。
「これ借りるよ」
えっ、こいつ何でいるの、取り巻きはどうした?
「そんな驚かなくてもいいだろ。バーコード読み取ってくれる?」
「あ、はい」
あっこれ、俺が好きな作者の本だ。
「あのさ、一緒に帰らない?さっきまで部活動見学していたんだけれど、トイレに行ってたら迷っちゃってさ。どうせもう委員の仕事も終わりだろ?」
時計を指しながら相変わらずかっこいい顔で笑っている。なんなんだこいつは、勝手に迷子になって俺と一緒に帰ろうって、一緒にいるのを見られるのは嫌なのに。
だってこいつ転校初日から人気者になっちゃってるし、なるべく静かに関わらずに過ごしたい俺としては、一緒にいて百害あって一利なしな存在だ。でも、転校生を無視して先に帰るっていうのもなんだか後味が悪い。
しばらく悩んだ後、仕方ないから一緒に帰るかと思い鞄を持とうとした。持とうとしたのだが、なぜかあいつが俺のカバンを持っている。
「おい、返せよ」
「ははっ返して欲しかったら一緒に帰るぞ」
小走りで図書館を出ていこうとするあいつを急いで追いかけた。そしてそのまま玄関まで走り抜けて、俺は息を切らしていた。
「安藤は走るのが遅いな」
それなりの距離を走ったはずなのに余裕そうなあいつは、俺を見ながら笑っている。なんで俺がこんなに振り回されてるんだよ。俺の方が転校生みたいじゃないか。さすがに腹が立ったのでキッと睨んでみた。
「悪かったって、ほら鞄返すよ」
あいつから鞄を奪い取って靴を履き替える。本当はそのまま無視して帰ってもよかったのだが、振り返って見たときのあいつの顔が何だか放っておけなかったから……
「何でそこに突っ立ってるんだよ。一緒に帰るんじゃなかったのか」
「…た、けいた、京太。起きろ、祭りの準備するぞ。」
あれ、夢か。どうやら昼寝をしてしまっていたみたいだ。杏一に初めて会った日、確かあの後に本の作者の話とかで盛り上がって、気づいたら友達になってたよな。
杏一はあれやこれやと俺の前に持ってきて、いろいろ準備している。これから着替えて祭りの手順を聞くのだが、いくら何でも付け焼き刃すぎないか。
時間は沢山あったはずなのに、聞いてもはぐらかされてばかりで祭りの内容はほとんどよく分かっていない。村に来てから気づけば1週間は過ぎていた。
村の繁栄を願う祭りらしいが、そもそも村人と会っていないから繫栄とか言われてもなあという感じだ。だが、引き受けてしまったからにはちゃんとやらなきゃだめだよな。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる