黒く嗤う

きぃすけ

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計画

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 杏一は、父と儀式の確認を行うために離れを後にし、東棟の小さな和室に入った。

「父さん、ただ今戻りました」

「久しぶりだな。例の子は連れてこられたのか?」

「はい、連れてきました。まだ何も知りませんから、1週間は離れの人払いをお願いします」

「それについては安心しろ。今の時期は血縁者と信頼している者しかいないし、誰も禁忌は侵さないだろう。儀式の準備はもうすぐ終わるから、お前はその子のことだけを考えていればいいさ」

「分かりました。それでは、儀式は手筈通りにお願いします」

 手短に打ち合わせをし、帰り道に一人廊下を歩きながらほくそ笑んだ。

 一度西棟に戻って必要なものを準備し、使用人に仕事を伝える。今のところは順調に進んでいるが、京太はどうしているだろうか。そろそろ戻って荷解きを手伝いに行かないとな。




「これはこっちで、これはあっちに入れて……」

 スーツケースとリュックサックに入れてきた荷物を箪笥にしまいながら、部屋を見渡した。ここは20畳ほどの和室で、隅には大きめの箪笥と棚、押し入れがある。

 離れに入って突き当りの部屋にいるのだが、こういう分離している家っていうのはもっと小さいものなんだと思っていた。なのにこの離れはかなり大きく、屋敷の広さに圧倒されている自分がいた。屋敷自体がでかいのは外観で分かっていたつもりだったが、自分の予想を上回る大きさだで、杏一はすごくお坊ちゃんなんだなーと実感した。

 部屋から出て探検して見ても面白そうだとも思ったが、人に会うなって言われたし、変に歩いて迷うのも嫌だったので、杏一が戻るまで荷物を片付けて待つことにしよう。




「もう片付けたのか」

「あっお帰り、ちゃんと挨拶してくれたか?」

「ああ、友達も連れてきたって伝えてきた。あと1週間くらいで祭りがあるから、それにも参加したらいいってさ。今人が足りないからやってほしい役割があるんだ」

「本当!祭りってどんなことするんだ?俺にできることなら何でもやるよ」

「難しいことじゃないから大丈夫、神社に行ってお祈りするだけだよ」

「へーそっか、じゃあ俺にもできそう。」

「とりあえず今は夕飯だな。昼に軽く食べてから何も食べてないだろ、川魚でも食うか?」

「食べる食べる!」

「じゃあちょっと待ってろ、すぐ持ってくるから」


 10分程で戻ってきた杏一にこっちで食べるぞ、と俺は隣の部屋に連れてこられた。

 部屋は10畳くらいのフローリングで、4人座れるイスとテーブルがあった。そのテーブルの上には焼き魚とみそ汁、漬物とご飯というザ日本食が置かれていた。

 さっきお手伝いさんがいるとか言っていたから、これもそうなのかな。旅館みたいだ。

 二人で夕飯を食べて荷物を片付けた後、風呂に入った。風呂も離れに付いていて、ここも一般家庭の風呂場より明らかに広かった。もういちいち規模がでかいのには慣れてきている。

 俺と入れ替わりで杏一が風呂に入っている間、最初にいた部屋に行くと布団が二つ敷かれていた。なんか修学旅行みたいだな。

 まあ、高校の卒業旅行として来ているから修学旅行と言えば修学旅行なんだけれど。学校の旅行は体調が優れなくて行けなかったから、この旅行は楽しみたいな。

 布団の上で物思いに耽っていると眠気が襲ってきた。朝からずっと移動で疲れたあいつが来るまでちょっと横になってよう。




「京太、もう寝たのか?」

 肩を軽くたたいても起きる気配はなく、すうすうと気持ちよさそうに寝息を立てている。今日は移動ばかりで、あまり外に出歩かない京太にとって辛かったかもしれない。

 頭を撫でて自分も寝ることにした。明日は何をしようか。
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