霊飼い術師の鎮魂歌

夕々夜宵

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第5章 蠱惑、カマラアサマラ

第35話 旅路

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「なぁレオン、ここはどこだ?」
    レオン達はレントをイケレントにしてしまった怪獣、カマラアサマラを倒しに行くため西の街ホープレイに向けて歩を進めていた。4日以内に倒さないと危険なためさっさと倒したい所なんだが、すでにノーエルを出てはや1日、一刻も早く倒さないとさよならイケレントどころか3つの街の住人の7割もさよならしてしまうのでホープレイに今すぐにでも辿り着きたいのだが……
「ここは……その…どこだろうな?」
    迷ったのだ。
「ぉぉおい!!レオン!しっかりしてくれ!このままじゃ俺のアイデンティティーどころかマジで命もなくなるから!!」
    確かにレントの言う通りだ。
このままレントがホープレイに辿り着けずにここらで死んでしまってはどうすればいいのか全くわからない。大体こんな死に方してしまっては自分達も泣くに泣けないし、供養すらも大変なのである。
    だけど、全くわからない。
    ただ無限に広がる荒野、山すらも見えない。地面も砂だらけで既に砂漠と化している。ノーエルに戻る手段さえも今となってはわからなくなってしまった。
「あ、アカネさん、わかりますか……?」
    イケメンになったレントは半泣き状態でアカネのもとに縋り付く。何故か敬語になっているし。
「ごめん、私もわからない…」
    そりゃ、アカネだってこんな場所は来たことがないのだ、わからないに決まっている。旅の行き際に持ってきておいた地図に目を落としてみるが状況を打破できるようなものではない。
「この範囲の地図が見事に茶色一色だな。東西南北を示す記号はお情けで描いてあるが、こうも殺風景だと僕らが今どの方向向いてるのかもわからんな。」
    つまり、八方塞がり。
「方位磁石でもあればわかるんだけどね…私たち肝心なものを買い忘れちゃったみたいだね」
    二人の言葉を聞いたレントはショックを受けた様子で俯く。
   俯いて歩いたまま数刻。突如レオンは顔をあげ辺りを見回す。
「レオンくん?どうかしたの?」
「いや、なんかガタガタと聞こえてな。」
「え?俺ぁ全然わかんねーな」
「わたしも」
    レオンの言葉に二人を首を傾げてる。という事は神的聴力を持つレオンにしかまだわからない音だと言うことに気づく。
「いや、聞き間違いかも知れない。もう一度よく聞くよ。」
    耳に手を翳し全神経を聴力に集中させる。すると、暫時は薄く聞こえていた音も段々と大きくしっかりと聞き取れるようになる。それはガタガタと硬い地面を何かが転がる音と硬いもので地面を叩く音がユニゾンして耳に届く。レオンはその音を瞬時に聞き分け判断、音の発生源を特定するまでに時間はそうかからなかった。
「聞こえた!これは車輪の音だ。地面をリズムよく蹴る音からして馬車だろう。だが1匹だけじゃない、2匹…だな。馬車本体も安定感を保つために四輪の物に乗っている。何処ぞのお偉いさんや国の者が乗ってるだろう。」
    音から得た情報をレオンは二人に説明する。終始、アカネとレントは口を開けてあっけらかんと佇んでいた。
「さ、さすが神聴力……」
「ほんと…私達まだ何も聞こえてないのに」
「まぁ…昔から五感だけは良いんだ。病気でも能力でもない、完全に生まれつきだ。」
    取り敢えず助け舟を見つけれたのだから話は早い。ホープレイまでの道のりを聞いてあとはそれに従うだけだ。
    馬車が近くまで来る。不本意なやり方ではあるが、レオンは両手を広げて馬車の前に佇む。二頭の馬は目の前に現れたレオンを無視することなどなく、ましてや蹴り飛ばすなんて事はせずにその足を止める。レオンはそんな馬をみて、よくできたやつだなと思いつつ馬車の側面、扉がある方へと歩みを進め2回、軽く握った拳を当ててノックする。
「すみません、少し道に迷っしまって。お時間に余裕があったら道を教えて頂きたいんですけど。」
    レオンが言葉を発して数秒、中からは2人の声、男性と女性の声が薄っすらと聞こえる。そこからまた数秒、「いいですよー」の声と共に扉を開けて現れた人物にレオンは驚愕した。

「えっ…か、カルクス先生!?」
「はーい?って、レオンくん!?」
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