34 / 57
第5章 蠱惑、カマラアサマラ
第35話 旅路
しおりを挟む「なぁレオン、ここはどこだ?」
レオン達はレントをイケレントにしてしまった怪獣、カマラアサマラを倒しに行くため西の街ホープレイに向けて歩を進めていた。4日以内に倒さないと危険なためさっさと倒したい所なんだが、すでにノーエルを出てはや1日、一刻も早く倒さないとさよならイケレントどころか3つの街の住人の7割もさよならしてしまうのでホープレイに今すぐにでも辿り着きたいのだが……
「ここは……その…どこだろうな?」
迷ったのだ。
「ぉぉおい!!レオン!しっかりしてくれ!このままじゃ俺のアイデンティティーどころかマジで命もなくなるから!!」
確かにレントの言う通りだ。
このままレントがホープレイに辿り着けずにここらで死んでしまってはどうすればいいのか全くわからない。大体こんな死に方してしまっては自分達も泣くに泣けないし、供養すらも大変なのである。
だけど、全くわからない。
ただ無限に広がる荒野、山すらも見えない。地面も砂だらけで既に砂漠と化している。ノーエルに戻る手段さえも今となってはわからなくなってしまった。
「あ、アカネさん、わかりますか……?」
イケメンになったレントは半泣き状態でアカネのもとに縋り付く。何故か敬語になっているし。
「ごめん、私もわからない…」
そりゃ、アカネだってこんな場所は来たことがないのだ、わからないに決まっている。旅の行き際に持ってきておいた地図に目を落としてみるが状況を打破できるようなものではない。
「この範囲の地図が見事に茶色一色だな。東西南北を示す記号はお情けで描いてあるが、こうも殺風景だと僕らが今どの方向向いてるのかもわからんな。」
つまり、八方塞がり。
「方位磁石でもあればわかるんだけどね…私たち肝心なものを買い忘れちゃったみたいだね」
二人の言葉を聞いたレントはショックを受けた様子で俯く。
俯いて歩いたまま数刻。突如レオンは顔をあげ辺りを見回す。
「レオンくん?どうかしたの?」
「いや、なんかガタガタと聞こえてな。」
「え?俺ぁ全然わかんねーな」
「わたしも」
レオンの言葉に二人を首を傾げてる。という事は神的聴力を持つレオンにしかまだわからない音だと言うことに気づく。
「いや、聞き間違いかも知れない。もう一度よく聞くよ。」
耳に手を翳し全神経を聴力に集中させる。すると、暫時は薄く聞こえていた音も段々と大きくしっかりと聞き取れるようになる。それはガタガタと硬い地面を何かが転がる音と硬いもので地面を叩く音がユニゾンして耳に届く。レオンはその音を瞬時に聞き分け判断、音の発生源を特定するまでに時間はそうかからなかった。
「聞こえた!これは車輪の音だ。地面をリズムよく蹴る音からして馬車だろう。だが1匹だけじゃない、2匹…だな。馬車本体も安定感を保つために四輪の物に乗っている。何処ぞのお偉いさんや国の者が乗ってるだろう。」
音から得た情報をレオンは二人に説明する。終始、アカネとレントは口を開けてあっけらかんと佇んでいた。
「さ、さすが神聴力……」
「ほんと…私達まだ何も聞こえてないのに」
「まぁ…昔から五感だけは良いんだ。病気でも能力でもない、完全に生まれつきだ。」
取り敢えず助け舟を見つけれたのだから話は早い。ホープレイまでの道のりを聞いてあとはそれに従うだけだ。
馬車が近くまで来る。不本意なやり方ではあるが、レオンは両手を広げて馬車の前に佇む。二頭の馬は目の前に現れたレオンを無視することなどなく、ましてや蹴り飛ばすなんて事はせずにその足を止める。レオンはそんな馬をみて、よくできたやつだなと思いつつ馬車の側面、扉がある方へと歩みを進め2回、軽く握った拳を当ててノックする。
「すみません、少し道に迷っしまって。お時間に余裕があったら道を教えて頂きたいんですけど。」
レオンが言葉を発して数秒、中からは2人の声、男性と女性の声が薄っすらと聞こえる。そこからまた数秒、「いいですよー」の声と共に扉を開けて現れた人物にレオンは驚愕した。
「えっ…か、カルクス先生!?」
「はーい?って、レオンくん!?」
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~
すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》
猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。
不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。
何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。
ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。
人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。
そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。
男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。
そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。
(
大失恋した稀代の魔術師は、のんべんだらりと暮らしたい
当麻月菜
ファンタジー
ナルナータ国には国王陛下から直々に<慧眼の魔術師>という二つ名を拝命した稀代の魔術師がいる。
しかしその実態は、人間不信で人間嫌い。加えて4年前の大失恋を引きずって絶賛引きこもり中の公爵令嬢で、富と名声より、のんべんだらりとした生活を望んでいる。
そんなコミュ障&傷心&ずぼら魔術師ファルファラに一つの王命が下された。
『不穏分子であるとある貴族と結婚して内情を探り粛々と排除しろ』と。
それと同時に王子から『王命に従いたくないなら、北方の領主であり聖剣の持ち主であるグロッソと共に北方の魔物調査に行け』と取引を持ち掛けられる。
無論、ファルファラは北方の魔物調査を選んだ。
けれど道中、失恋相手と望まぬ再会をして事態はどんどんややこしくなっていく。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
聖なる幼女のお仕事、それは…
咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。
村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。
それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。
この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる