アイドルをおっかけて

ひーさん

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青春時代

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僕たちは、若い頃アイドルグループの追っかけをしていた。無料チケットが当たり、軽い気持ちで行ったライブで、観客を楽しませる姿、一生懸命に踊る姿に魅了され、気がついたら彼女達を追っかける日々が続いた。

僕の名前はタカシ、高校時代バンドを少ししていたが、楽器は得意ではなかった為、ボーカルとして活動したが、趣味の延長でプロは目指してはいなかった。ロックやパンクばかり聞いて正直この時までは、アイドルに偏見があったのかも知れない。

高校卒業後、音楽の仕事をやりたかったが、一歩踏み出す勇気もなく、工場勤務。田舎育ちの僕は、県外に就職するも、馴染めず、やりたいこともない、僕はすぐに逃げ帰ってしまった。

毎日、ダラダラとアルバイト生活をしては繰り返し布団に入る日常に嫌気がさしていた。

「今日も、疲れた!」

バイトも終わり、家に着いて布団に潜りこもうとした。

「♪ ♪」

着信ノブ

「はい、もしもしタカシです」

「タカシ?ノブだけど、明日バイト休み?」

「明日は休みだよ。どうした?」

ノブは高校時代からの親友で卒業してからも、変わらず良く会う。

「明日、ライブいかない?」

「誰のライブ?」

「・・アイドル」

「ハァ?アイドル?誰が?」

「いやぁ、だから、俺とタカシで」

正直この時俺は、ビックリした。
ノブとは、似た者同士で趣味も一緒だった。
そんな男から、アイドルの言葉が出たのだから

「どうした?突然。頭でもぶつけたか?」

「違う、違う、たまたま、無料ライブチケットが当たって」

「音楽好きで暇人っていったら、タカシしか、いないでしょ」

「たしかに・・っておい」

「俺も忙しいんだけどねぇ」

「嘘つけ、どうせ何もないだろう?」

たしかに、明日の予定もなくダラダラ過ごそうと考えていた。

「しょうがねぇなぁ、付き合ってやるよ。ノブの頼みだしな」

「OK、ありがとう。じゃあ明日迎えに行くから」

「ノブ、俺曲全然知らんし、アイドルの、ライブって、オタクばっかりで怖いんじゃない?」

「大丈夫!俺が曲編集して聴かせるから」

この時は、気づかなかったが、すでに、ノブはアイドルにはまっていたのだった。

「じゃあ、明日。お疲れ」

「アイドルかぁ、うかねぇかな俺・・」

未知のライブの期待と不安を胸に眠りについた。

「ピンポーン」

「はい!」

「俺、ノブだけど、準備できた?」

「今、出るから、待ってて」

「おはよう」

「おはよう、なぁーノブ格好Tシャツていい?」

「何でもいいよ」

準備ができ、車に乗り込もうとした瞬間唖然とした・・

「このウチワとペンライトは何?」

「あ・・それねぇ、もらったやつ」

ノブは嘘をつけない性格なので直ぐに、気づいた。

「ノブ、お前めっちゃファンだろ!」

「・・・」

「隠せてないから!別に言えばいいのに」

「いやぁ、馬鹿にされたり、引かれるかなって」

当時、アイドルに偏見を持っている人が多く、アイドル好きと言うと変な目で見られることが多かった。僕もその一部だったのかも知れない。

車内では、今からライブで歌う曲やおすすめ、彼女達の素晴らしさを目を輝かせて喋るノブを見て、不安よりも期待が膨らんでいき、目的地に着いた。

「ここが、アイドルのライブ会場か」

自分の好きな推しの名前入りタオルやTシャツ。集まって音楽をかけて盛りあがってる人の熱気に溢れてた。

「すげぇーな」

僕はあまりの光景に唖然とした。
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