37 / 93
ワンワンと聖域
第35話 スーパーレイラさんタイム!
しおりを挟む
「よしっ! それじゃあ行ってくるのじゃ!」
「おい、大丈夫なのか?」
それで本当に倒せるのかとナエが不安そうな目を向ける。ジェノスも口には出さないが心配しているのか、ジッとレイラが入っている鎧を見ていた。
すると自信満々とばかりに、二人に親指を立てて応える。
「大丈夫じゃ! それにこの体が破壊されても、儂自身は無事じゃからのう」
黒王虫の鎧の体を動かし、ドラゴンキラーを手にしたレイラはゆっくりとオワリビトに近付いて行った。
オワリビトはレイラが近付いて来るのを待ち構えているようだ。
「キヒヒヒッ」
まるで獲物がやって来たと、喜んでいるかのように笑うオワリビト。そして、レイラはあと一歩で《ミソロジィ・シールド》の光の膜の外に出るというところまで来た。
「ふむ。さて……それじゃあ始めるかのう……はあっ!」
「キヒッ!?」
最後の一歩を踏み出しつつ、洗練された鋭い斬撃がレイラから放たれる。オワリビトはそれを回避するが、紙一重といった様子だ。大きく後ろに飛び退いたところを見ると、レイラが纏うワンワンの魔力に気付いているらしい。光の膜から出た事で、纏う魔力を感じ取る事ができたようだ。
レイラはステータスの各項目を一・五倍ほど引き上げる【ステータス向上】。魔法を三日使用不可にする代わりに生命力、攻撃力、守備力、俊敏力を二倍強化する【魔法封印強化】。剣を用いた戦闘時に攻撃力、俊敏力を一・五倍強化する【剣術】。俊敏力を瞬間的に三倍まで高める【加速】。相手の動きに瞬時に反応できる【反射対応】など複数のスキルを使っている。
魂だけの体では使い道がなかったスキルだったが、今回はこうして鎧ではあるが体を手に入れたので使う事ができた。
複数のスキルを使う事でクロ並みのステータスとなるレイラ。そのうえ、黒王虫の鎧にドラゴンキラーと言った強力な装備を身に付けている。今のレイラは勇者と同等の力を有しているかもしれなかった。
「のじゃのじゃのじゃのじゃのじゃぁっ!」
「キ、キヒッ……」
一振りする度に【加速】を使い、もはやジェノス達では視認する事が難しい斬撃を連続で放つ。オワリビトはレイラの攻撃をひたすら避ける。その様子から回避に精一杯で、反撃する余裕はないようであった。
しかし、攻撃がまるで当たらない。回避に専念されれば、こちらの攻撃を当てるのが難しく、どれだけ剣を振るっても結果は空振りだ。
いくら攻撃しても当たらない事に、レイラは口を尖らせる。
「むうっ……動くでないわ!」
そんな事を言われても、斬られそうになれば誰でも避ける。まして自身に有効な攻撃であれば。ワンワンの魔力を纏った剣は浅く斬られただけでも、深刻なダメージになる恐れがあった。
その為、オワリビトは避け続け、隙を見ては攻撃と……という考えはないようだ。隙があれば、この場から離脱しようとしていた。鎧までもワンワンの魔力を纏っているので迂闊に攻撃はできない。
レイラには勝てないと判断したようで、必死に逃げようとしていた。
だが、そう簡単にレイラはオワリビトを逃がすつもりはない。先程、神からオワリビトを倒す手順を教えて貰うとともに、こちらにクロが戻って来ているのを知らされた。もし、この場に留まらせる事ができなければ、クロが襲われる可能性がある。そう思い、レイラは決して逃がさない、ここで倒すと決めていた。
「レイラ! 儂に強化を!」
「《ゲランタル》!」
レイラの声を受けてナエは瞬時に魔法を使う。自身のステータスが向上した事を感じると、新たにスキルを使用する。
「これでもくらえいっ! 【金縛り】じゃ!」
「キッ!?」
オワリビトが動きが止まった。【金縛り】は対象を一時的に動けなくするスキルで、運命力が相手よりも高ければ高いほど拘束力を高める。
レイラは【金縛り】の効果はすぐに解かれると、スキルの感触から感じていた。
だが、一瞬でも動きを止める事ができるのであれば充分。レイラは複数のスキル、そして駄目押しの《ゲランダル》による強化による一撃を放った。
オワリビトは【金縛り】による拘束から逃れようと、必死に体を動かそうとした。そして【金縛り】を打ち破り、体を動かせるようになるのだが、回避行動を取るには遅過ぎた。
「キヒィィィィィィィィィィィィィッ!」
「のじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
オワリビトはなんとか避けようとするが、それよりも早くレイラの剣が振り下ろされた。
斬りつけられたオワリビトは剣が通った跡から赤黒い血ではなく、黒い液体が噴出する。先程現れた時に地面から湧いたものと同様のもののようだ。
「キ……キヒ、ヒ……」
掠れた声を上げながらふらつくオワリビト。徐々にオワリビト全身が、まるで氷が溶けるように黒い液体に変わっていく。やがて声すら上げられないほどに体が液体に変わり、大きな黒い水溜まりになる。
「……ふうっ、終わったようじゃのう」
水溜まりが消えたのを確認すると、レイラは息を吐いて警戒を解く。
それを見て、ジェノス達もオワリビトを倒したのだと実感が湧いた。倒した光景を目の前で見たのだが、あれほどの化物を倒せたという事が、いまいち現実であるとは思えなかったのだ。
「まさか……本当にあんな化物を倒しちまうなんてな……」
「凄いぜ、レイラ! クロと同じくらい強いんじゃねえか?」
「わうっ! 凄いよレイラ!」
「ふふふっ、この鎧や剣があったおかげじゃよ。まあ、儂だからこそ勝てたというのは事実じゃがのうっ!」
すっかり有頂天になっていたレイラ。だが、脅威を退けてくれた彼女を嗜める者はいない。
「はあっ……はあっ……みんな、大丈夫? あれ……黒いのは?」
「クロ! 良かったぜ……無事だったんだな……」
「う、うん……なんか男の人が助けてくれて……あれ? こっちにも現れたって……」
「オワリビトの事か? あれならレイラが倒したぞ」
「ふふっ、凄いじゃろ」
「レイラちゃんが? 凄い……って! 誰!?」
黒い鎧の存在にそこで初めて気付いたクロ。
それからジェノス達はクロに、天使の事やオワリビトの事などこれまでの出来事を話すのであった。
「おい、大丈夫なのか?」
それで本当に倒せるのかとナエが不安そうな目を向ける。ジェノスも口には出さないが心配しているのか、ジッとレイラが入っている鎧を見ていた。
すると自信満々とばかりに、二人に親指を立てて応える。
「大丈夫じゃ! それにこの体が破壊されても、儂自身は無事じゃからのう」
黒王虫の鎧の体を動かし、ドラゴンキラーを手にしたレイラはゆっくりとオワリビトに近付いて行った。
オワリビトはレイラが近付いて来るのを待ち構えているようだ。
「キヒヒヒッ」
まるで獲物がやって来たと、喜んでいるかのように笑うオワリビト。そして、レイラはあと一歩で《ミソロジィ・シールド》の光の膜の外に出るというところまで来た。
「ふむ。さて……それじゃあ始めるかのう……はあっ!」
「キヒッ!?」
最後の一歩を踏み出しつつ、洗練された鋭い斬撃がレイラから放たれる。オワリビトはそれを回避するが、紙一重といった様子だ。大きく後ろに飛び退いたところを見ると、レイラが纏うワンワンの魔力に気付いているらしい。光の膜から出た事で、纏う魔力を感じ取る事ができたようだ。
レイラはステータスの各項目を一・五倍ほど引き上げる【ステータス向上】。魔法を三日使用不可にする代わりに生命力、攻撃力、守備力、俊敏力を二倍強化する【魔法封印強化】。剣を用いた戦闘時に攻撃力、俊敏力を一・五倍強化する【剣術】。俊敏力を瞬間的に三倍まで高める【加速】。相手の動きに瞬時に反応できる【反射対応】など複数のスキルを使っている。
魂だけの体では使い道がなかったスキルだったが、今回はこうして鎧ではあるが体を手に入れたので使う事ができた。
複数のスキルを使う事でクロ並みのステータスとなるレイラ。そのうえ、黒王虫の鎧にドラゴンキラーと言った強力な装備を身に付けている。今のレイラは勇者と同等の力を有しているかもしれなかった。
「のじゃのじゃのじゃのじゃのじゃぁっ!」
「キ、キヒッ……」
一振りする度に【加速】を使い、もはやジェノス達では視認する事が難しい斬撃を連続で放つ。オワリビトはレイラの攻撃をひたすら避ける。その様子から回避に精一杯で、反撃する余裕はないようであった。
しかし、攻撃がまるで当たらない。回避に専念されれば、こちらの攻撃を当てるのが難しく、どれだけ剣を振るっても結果は空振りだ。
いくら攻撃しても当たらない事に、レイラは口を尖らせる。
「むうっ……動くでないわ!」
そんな事を言われても、斬られそうになれば誰でも避ける。まして自身に有効な攻撃であれば。ワンワンの魔力を纏った剣は浅く斬られただけでも、深刻なダメージになる恐れがあった。
その為、オワリビトは避け続け、隙を見ては攻撃と……という考えはないようだ。隙があれば、この場から離脱しようとしていた。鎧までもワンワンの魔力を纏っているので迂闊に攻撃はできない。
レイラには勝てないと判断したようで、必死に逃げようとしていた。
だが、そう簡単にレイラはオワリビトを逃がすつもりはない。先程、神からオワリビトを倒す手順を教えて貰うとともに、こちらにクロが戻って来ているのを知らされた。もし、この場に留まらせる事ができなければ、クロが襲われる可能性がある。そう思い、レイラは決して逃がさない、ここで倒すと決めていた。
「レイラ! 儂に強化を!」
「《ゲランタル》!」
レイラの声を受けてナエは瞬時に魔法を使う。自身のステータスが向上した事を感じると、新たにスキルを使用する。
「これでもくらえいっ! 【金縛り】じゃ!」
「キッ!?」
オワリビトが動きが止まった。【金縛り】は対象を一時的に動けなくするスキルで、運命力が相手よりも高ければ高いほど拘束力を高める。
レイラは【金縛り】の効果はすぐに解かれると、スキルの感触から感じていた。
だが、一瞬でも動きを止める事ができるのであれば充分。レイラは複数のスキル、そして駄目押しの《ゲランダル》による強化による一撃を放った。
オワリビトは【金縛り】による拘束から逃れようと、必死に体を動かそうとした。そして【金縛り】を打ち破り、体を動かせるようになるのだが、回避行動を取るには遅過ぎた。
「キヒィィィィィィィィィィィィィッ!」
「のじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
オワリビトはなんとか避けようとするが、それよりも早くレイラの剣が振り下ろされた。
斬りつけられたオワリビトは剣が通った跡から赤黒い血ではなく、黒い液体が噴出する。先程現れた時に地面から湧いたものと同様のもののようだ。
「キ……キヒ、ヒ……」
掠れた声を上げながらふらつくオワリビト。徐々にオワリビト全身が、まるで氷が溶けるように黒い液体に変わっていく。やがて声すら上げられないほどに体が液体に変わり、大きな黒い水溜まりになる。
「……ふうっ、終わったようじゃのう」
水溜まりが消えたのを確認すると、レイラは息を吐いて警戒を解く。
それを見て、ジェノス達もオワリビトを倒したのだと実感が湧いた。倒した光景を目の前で見たのだが、あれほどの化物を倒せたという事が、いまいち現実であるとは思えなかったのだ。
「まさか……本当にあんな化物を倒しちまうなんてな……」
「凄いぜ、レイラ! クロと同じくらい強いんじゃねえか?」
「わうっ! 凄いよレイラ!」
「ふふふっ、この鎧や剣があったおかげじゃよ。まあ、儂だからこそ勝てたというのは事実じゃがのうっ!」
すっかり有頂天になっていたレイラ。だが、脅威を退けてくれた彼女を嗜める者はいない。
「はあっ……はあっ……みんな、大丈夫? あれ……黒いのは?」
「クロ! 良かったぜ……無事だったんだな……」
「う、うん……なんか男の人が助けてくれて……あれ? こっちにも現れたって……」
「オワリビトの事か? あれならレイラが倒したぞ」
「ふふっ、凄いじゃろ」
「レイラちゃんが? 凄い……って! 誰!?」
黒い鎧の存在にそこで初めて気付いたクロ。
それからジェノス達はクロに、天使の事やオワリビトの事などこれまでの出来事を話すのであった。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。
そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる