ソウサクスルカイダン

山口五日

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ころころエンピツ

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 唯ちゃんという女の子が通う小学校では、ころころエンピツという占いが流行っていた。

 六角形のエンピツのそれぞれの面に数字を振って、出た数字によって運勢を判断する。

 例えば1が出たらラッキー、2が出たらまあまあラッキー、3が出たら超ラッキー、4が出たらアンラッキー、5が出たらまあまあアンラッキー、6が出たら超アンラッキーといった占い。

 唯ちゃんも学校で友達とよく占って遊んでいたそうだ。ある日、自宅の自分の部屋で宿題をしている最中、集中力が切れて一人でころころエンピツをしていた。

 1、4、6、2、1、5、6、2、1……当然だが、いろんな数字が出た。

 唯ちゃんのころころエンピツも3が超ラッキーなので、「3が出ますように、3が出ますように、3が出ますように」と念じながら転がす。

 ですが、一向に3は出ませんでした。

 それどころか4、6、5、5、6、4、5と悪い数字ばかりが出てくるので、余計ムキになってエンピツを転がした。

 すると4、5、4、6、6、4、6、6、6、6……6ばかり出るようになってしまった。

 なんだか気味が悪くなった唯ちゃんは、台所にいるはずのお母さんのもとへ行こうとしたその時、立ち上がった拍子にエンピツを落としてしまう。落ちたエンピツはころころ床を転がっていった。

 拾おうと転がるエンピツを行方を見ていると、何かにぶつかって止まる。

 それは誰かの足。家にいる自分以外、お母さんの足ではない。皺だらけで、爪が鳥の鉤爪のように変形した足だ。そして聞いたことのない、しわがれたお婆さんの声で「もう占わないの?」と唯ちゃんに言ってきた。

 この時、唯ちゃんはなによりも、知らない人が部屋の中にいることに恐怖して悲鳴を上げた。

 するとすぐお母さんは来てくれたものの、部屋の中には唯ちゃんだけ。誰もいなかった。

 唯ちゃんは今あったことを話したが、お母さんには夢でも見たのだろうと信じてはくれなかった。

 だが、唯ちゃんは実際に足をはっきりと見たし、声もしっかり聞こえた。あれは決して夢ではなく、現実だと、お母さんに信じてもらえなくても唯ちゃんは思った。

 それからも学校ではころころエンピツは流行ったが、このことをきっかけに唯ちゃんはエンピツを転がすことはやめた。

 占いというものは、神様の言葉を聞く儀式的な行為といった捉え方がある。もしかすると唯ちゃんは、ころころエンピツで神様のような存在を、呼び出していたのかもしれない。

 6、超アンラッキーばかりを出す神様。

 もしあのまま占いを続けてもらっていたら、唯ちゃんはどうなっていたのだろうか。
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