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水の手
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とある小学校の薄暗い倉庫。
そこには過去に使用していた教科書や、歴代の教師が作った資料などが置かれていた。教師しか普段出入りしない倉庫で、生徒たちの間では開かずの部屋と呼ばれる場所だった。
生徒にとっては入れない場所というだけで、好奇心を刺激され、そのうえ誰もいないはずなのに中から物音がする、女の子の泣き声が聞こえるなどといった噂もあって余計に興味がそそられた。
その小学校に通う洋子ちゃんという女の子は、噂を聞いて友達と倉庫にやって来た。
洋子ちゃんたちは扉の前まで来て、「部屋の中から何か聞こえない?」「聞こえた聞こえたー!」とワイワイ盛り上がる。
もちろん、中には誰もいないので、そんな音は聞こえない。ふざけて騒いでいるだけだ。
そして、おふざけの延長で洋子ちゃんは扉に手を掛けた。開かないと思っていた洋子ちゃん。だが、前に倉庫を利用した先生が鍵を開けたままにしてしまったようで、扉が開いてしまった。
まさか開くとは思っていなかった洋子ちゃんたちは声を上げて驚いたものの、恐怖よりも好奇心が勝ってしまう。
普段は入れない場所に、洋子ちゃんたちの好奇心は抑え切れず入ってみることにした。
埃っぽい空気を感じながら倉庫の中を見てみる。見慣れない古い教科書、教師のお手製の教材。それから教科書以外の古い本、トロフィー、図工で作られたと思われる人型の粘土作品、それと理科の授業で使ったのか川原で拾ったような石もあった。
「中ってこんなふうになってるんだー」
「ほこりっぽーい」
「この教科書ふるーい」
そんなふうに洋子ちゃんたちは、噂のことは忘れて興味津々といった様子で室内を見た。
ただ、とある一角で洋子ちゃんたちの会話は止まる。
倉庫の奥には昆虫のピン止めされた標本、瓶詰されたカエルうや蛇のホルマリン漬け、ウサギと思われる骨格が置かれていた。それらがあまりにも不気味で思わず黙ってしまう。
その中で、ひときわ目を引くものがあった。それは両手のひらで辛うじて持てそうな、ホルマリン漬けと思われる瓶。液体は濁っていて中が見れない。だけどそこには「手」と書かれたラベルが貼られていた。
気味が悪かったものの、よく中を見ようと近付いてみる。
ただ近付いていたところ、洋子ちゃんの友達の一人が悲鳴を上げた。それに驚いて全員慌てて倉庫を飛び出す。
しばらく廊下を走って倉庫から離れると、洋子ちゃんは突然悲鳴を上げた友達に何があったのか尋ねた。
「な、中がね、ちょっと見えたのっ。瓶の中、水かきが生えた手だった……カエルじゃなくて、それよりももっと大きな……」
そう怯えながら、その友達は話してくれた。
もう一度行って確かめてみようと洋子ちゃんたちは倉庫に向かってみたものの、その時には倉庫の鍵はしっかりとかかっていて開けることはできなかった。
本当に水かきが生えた手があったのかはわからない。
ただ、その日、下校しようと昇降口で上履きから靴に履き替える時に、自分の足首が濡れていることに気付く。
指で濡れている部分に触れてみた洋子ちゃん。それは少し粘り気があって、恐る恐る匂いを嗅いでみると生臭い。
もしかして友達が言ってた水かきが生えた手に掴まれたんじゃ……と洋子ちゃんは思わずにはいられなかった。
その後、すっかり怖くなってしまった洋子ちゃんは倉庫には決して近付こうとはしなかった。
そこには過去に使用していた教科書や、歴代の教師が作った資料などが置かれていた。教師しか普段出入りしない倉庫で、生徒たちの間では開かずの部屋と呼ばれる場所だった。
生徒にとっては入れない場所というだけで、好奇心を刺激され、そのうえ誰もいないはずなのに中から物音がする、女の子の泣き声が聞こえるなどといった噂もあって余計に興味がそそられた。
その小学校に通う洋子ちゃんという女の子は、噂を聞いて友達と倉庫にやって来た。
洋子ちゃんたちは扉の前まで来て、「部屋の中から何か聞こえない?」「聞こえた聞こえたー!」とワイワイ盛り上がる。
もちろん、中には誰もいないので、そんな音は聞こえない。ふざけて騒いでいるだけだ。
そして、おふざけの延長で洋子ちゃんは扉に手を掛けた。開かないと思っていた洋子ちゃん。だが、前に倉庫を利用した先生が鍵を開けたままにしてしまったようで、扉が開いてしまった。
まさか開くとは思っていなかった洋子ちゃんたちは声を上げて驚いたものの、恐怖よりも好奇心が勝ってしまう。
普段は入れない場所に、洋子ちゃんたちの好奇心は抑え切れず入ってみることにした。
埃っぽい空気を感じながら倉庫の中を見てみる。見慣れない古い教科書、教師のお手製の教材。それから教科書以外の古い本、トロフィー、図工で作られたと思われる人型の粘土作品、それと理科の授業で使ったのか川原で拾ったような石もあった。
「中ってこんなふうになってるんだー」
「ほこりっぽーい」
「この教科書ふるーい」
そんなふうに洋子ちゃんたちは、噂のことは忘れて興味津々といった様子で室内を見た。
ただ、とある一角で洋子ちゃんたちの会話は止まる。
倉庫の奥には昆虫のピン止めされた標本、瓶詰されたカエルうや蛇のホルマリン漬け、ウサギと思われる骨格が置かれていた。それらがあまりにも不気味で思わず黙ってしまう。
その中で、ひときわ目を引くものがあった。それは両手のひらで辛うじて持てそうな、ホルマリン漬けと思われる瓶。液体は濁っていて中が見れない。だけどそこには「手」と書かれたラベルが貼られていた。
気味が悪かったものの、よく中を見ようと近付いてみる。
ただ近付いていたところ、洋子ちゃんの友達の一人が悲鳴を上げた。それに驚いて全員慌てて倉庫を飛び出す。
しばらく廊下を走って倉庫から離れると、洋子ちゃんは突然悲鳴を上げた友達に何があったのか尋ねた。
「な、中がね、ちょっと見えたのっ。瓶の中、水かきが生えた手だった……カエルじゃなくて、それよりももっと大きな……」
そう怯えながら、その友達は話してくれた。
もう一度行って確かめてみようと洋子ちゃんたちは倉庫に向かってみたものの、その時には倉庫の鍵はしっかりとかかっていて開けることはできなかった。
本当に水かきが生えた手があったのかはわからない。
ただ、その日、下校しようと昇降口で上履きから靴に履き替える時に、自分の足首が濡れていることに気付く。
指で濡れている部分に触れてみた洋子ちゃん。それは少し粘り気があって、恐る恐る匂いを嗅いでみると生臭い。
もしかして友達が言ってた水かきが生えた手に掴まれたんじゃ……と洋子ちゃんは思わずにはいられなかった。
その後、すっかり怖くなってしまった洋子ちゃんは倉庫には決して近付こうとはしなかった。
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