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人との縁
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燦々と辺りを照らす太陽、若草色の大地、眠りから醒める動物たち……
目の前にはいきいきと拍動する景色が広がっている。
「綺麗だね、怜。遥々王都から一週間かけてやってきた甲斐があったね」
「うん、そうなんだけど……まだ僕は怖いや」
「過去なんてものは所詮過去だよ。私たちは今を生きてるんだから過去なんか気にしない方が楽だよ。過去に囚われてばっかりじゃ未来へは進めないんだからさ!」
震えてる怜を元気づけるように声を張り上げる。私だって、怖くないと言えば嘘になる。強がりだ。そんな不安そうにしている怜がいるのに私まで不安になってたら年上として格好がつかない。怜の前だけではかっこいい幼馴染のままでいたい。
「ほら!怜。あっち見て!」
そこには言葉では言い表せないような幻想的な景色が広がっていた。多種多様な自然魔法生物に彩られ、精霊が自由に飛び回っている。
『現実じゃないみたい』
怜と言葉が重なった。でも本当にそう思った。王都じゃ、あんな人の手が、魔法が入った様な場所じゃ見られないものがここにはあったから。
「言ったでしょ、怜。前のこの場所は恐怖だらけだったけど、今はこんなに綺麗な場所になってる。だから、過去に囚われて今を見ないのは損だよ!」
人は過去を生きることはできないんだから。
「……そう、だね。こんなに綺麗な景色を見ないのは損だ」
やっと過去から抜けられたね。あの親たちから解放されたんだね、怜。
「うーん、こことっても綺麗だから後三日くらいいようかなぁ。どう思う、怜?」
三日もあれば怜も私もきっと気持ちの整理はできるだろうし。
「三日くらいなら精霊様のお怒りも買わないだろうし大丈夫だと思うよ。ありがとう、黎華姉さん」
「怜だけのためじゃないよ、私のためでもあるんだから感謝されることはしてないよ」
『いたぞー!悪魔の村の生き残りだ!殺せ!』
追手がもうここまで。この精霊の森なら流石に追ってこないと思っていたのに。
「怜、追手だ!ここでゆっくりしてる時間はなくなった。逃げるよ!」
「ううん、僕はもういいよ。ここまでこれて、過去から今に進むことができたから。それに僕はもう手遅れだ」
「解除」
「れ、れん?その姿どうしたの?それじゃあまるで村のみんなと……」
同じじゃない?
もうその言葉は私の口から発せられることはなかった。息ができなかった。
「ごめんね、黎華姉さん。いや、黎華。僕たちはいつまで経っても化け物なんだ」
『所詮、人間の絆はこんなものなんだな。あーあ、詰まんねぇ。どこかにもっと重くて、面白いやつはいないのか?』
簡単すぎる。
目の前にはいきいきと拍動する景色が広がっている。
「綺麗だね、怜。遥々王都から一週間かけてやってきた甲斐があったね」
「うん、そうなんだけど……まだ僕は怖いや」
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震えてる怜を元気づけるように声を張り上げる。私だって、怖くないと言えば嘘になる。強がりだ。そんな不安そうにしている怜がいるのに私まで不安になってたら年上として格好がつかない。怜の前だけではかっこいい幼馴染のままでいたい。
「ほら!怜。あっち見て!」
そこには言葉では言い表せないような幻想的な景色が広がっていた。多種多様な自然魔法生物に彩られ、精霊が自由に飛び回っている。
『現実じゃないみたい』
怜と言葉が重なった。でも本当にそう思った。王都じゃ、あんな人の手が、魔法が入った様な場所じゃ見られないものがここにはあったから。
「言ったでしょ、怜。前のこの場所は恐怖だらけだったけど、今はこんなに綺麗な場所になってる。だから、過去に囚われて今を見ないのは損だよ!」
人は過去を生きることはできないんだから。
「……そう、だね。こんなに綺麗な景色を見ないのは損だ」
やっと過去から抜けられたね。あの親たちから解放されたんだね、怜。
「うーん、こことっても綺麗だから後三日くらいいようかなぁ。どう思う、怜?」
三日もあれば怜も私もきっと気持ちの整理はできるだろうし。
「三日くらいなら精霊様のお怒りも買わないだろうし大丈夫だと思うよ。ありがとう、黎華姉さん」
「怜だけのためじゃないよ、私のためでもあるんだから感謝されることはしてないよ」
『いたぞー!悪魔の村の生き残りだ!殺せ!』
追手がもうここまで。この精霊の森なら流石に追ってこないと思っていたのに。
「怜、追手だ!ここでゆっくりしてる時間はなくなった。逃げるよ!」
「ううん、僕はもういいよ。ここまでこれて、過去から今に進むことができたから。それに僕はもう手遅れだ」
「解除」
「れ、れん?その姿どうしたの?それじゃあまるで村のみんなと……」
同じじゃない?
もうその言葉は私の口から発せられることはなかった。息ができなかった。
「ごめんね、黎華姉さん。いや、黎華。僕たちはいつまで経っても化け物なんだ」
『所詮、人間の絆はこんなものなんだな。あーあ、詰まんねぇ。どこかにもっと重くて、面白いやつはいないのか?』
簡単すぎる。
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