女装令息と騎士令嬢

汐凪吟

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第二話

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やっぱりお菓子と鍛錬は落ち着くなぁ。お菓子は美味しいから幸福感があるし、鍛錬はいろんなこと忘れられるし、気分がおかしい時はやるしかない!騎士だけどみんな遠征中でいないから私暇だし。でもカイル副団長が珍しく遠征参加してなかったなぁ。家に行ったらいるかな?模擬戦やってみたいんだよね。今日はルーンが来るから行けないけど明日行ってみようかな。
「ラウラさまー!そろそろ時間ですよ、ルーンさまが来る前に汗を流しましょう。」
 いつのまにかリアが少し離れたところにいる。
「えー、あと十分だけ......。」
「なりません!」
 強制的に剣を奪われて連行される。リアには勝てる気がしない。
「あー、お取り込み中?ちょっと来るのが早過ぎたかな?」
 その声の主は私の後ろにいた。声は間違いなくルーンだ。でも姿が違う。ドレス姿じゃない。きれいな、男性だ。
「ル、ルーン?」
「うん、そうだよ。これでわかった?僕は男だって。」
 ん?ちょっと待って、今汗だく......。
「ルーン、それ以上こっちこないで、私汗だくだから!」
 「ラウラさま、タオルだけ置いておくので邪魔ものの私は退散いたします。」
 に、逃げる様は脱兎のごとく......。売られた。
「ラウ、拭いてあげるよ。風邪ひかないようにね?」
「自分で拭くからいいよ。それにしても本当に男だったんだ。よく、ドレスであんな女になれたね。いかにも深窓の令嬢って感じだったのに。魔法?でもそんな魔法ないしなぁ。」
「っ、はは!女になる魔法なんかあるわけないじゃん!それがあったら今頃この国は性犯罪だらけになってるよ。」
 そんなに笑う要素あったかなぁ?タオルで汗を拭いながらルーンをじっと見る。こんなきれいな人がドレスを着ると絶世の美女になるのだから不思議だ。
「そんなにじっとみないでよ、恥ずかしいなぁ。でもこれで僕が男だってわかった?まだわかってないから服でもぬ」
「わかったから、公爵子息がそんなことしないで?!」
「じゃあ結婚の話受けてくれる?といってもラウに選択肢ないようなものになっちゃったけど。」
 私の前に一枚の紙が差し出される。
「何これ?」
「私の父と総帥のサインが入った婚姻届だけど?もう話は通してある。総帥はこんな娘でいいんですかとかいってたけど私は君がいいんだよね。ねぇ、サイン、してくれる?」
 もう用意されてる......。まさかあの短時間でここまで用意したとか?それとも事前にしてたとか?いや、どっちでも色々怖いな。ここまでやられちゃったらしがない侯爵令嬢には断る選択肢がありません。
「サイン、します。」
「あ、魔法文字で書いてね?」
「え?」
 思わず声が漏れた。この人、絶対離婚させない気じゃん。婚姻届で魔法文字とか今どきやらないよ?サインはするけども!だって好みのタイプなんだもん!そして、断言しよう。この人、おかしい。
「じゃあ国王に提出してくるね。公務の書類に混ぜておけば受理してくれるだろうし。すぐ戻ってくるね!」
 また転移で消えてしまった。行き先は王城なんだろうなぁ。陛下の執務室に転移してないよね?
 その頃ルーンは国王に婚姻届を突きつけていたそうだ......。
 
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