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「闇出さん、体育祭休んでたよね?」
どうしたの、体調不良?と相模くんに聞かれる。

  体育祭の振替休日が明け、通常の登校日。生徒玄関でばったり会った相模くんに挨拶され、そのまま一緒に教室に向かいながら質問された。
  一瞬足が止まりそうになるが
「うん、体調不良。頭痛が酷かったから休んだんだ」
と笑顔を作り、あながち間違ってもいない嘘をつく。

 そもそも相模くんとは関わりたくなかったのに、同じ教室なせいで自動的に一緒に行くことなって、朝から神経をとがらせてたのに。いきなり核心的なこと聞く?攻略キャラっぽさを出してくるな…というか私が攻略されてる気分になってきた。コミュ強なんだから、もっと他の話題あったでしょ?!?

 ふーん、そうなんだ。と微妙に納得のいってない顔をした相模くんだが、またいつもの笑顔に戻り
「今日もつらいようだったら言ってね」
と告げ、教室のドアを開けた。

  だけど、教室内でも油断できない。
  ⸺なんてったって、隣の席が甲斐くんだから!!!!!!!!
   一昨日デートらしきものをして、照れ臭いしあんまり顔を合わせたくない。ゲーム通りに無断欠席をしてくれてたら良いものを、やはり期待を裏切って甲斐くんは今日も真面目に登校してる。

  自分の席に着こうとした時、
「…はよ」
と甲斐くんがぼそっと呟いた。
  ぱっと甲斐くんを見ると目が合ったので、私もおはようと返す。
「この間の、楽しかったな。……また、行こうな」
少し赤くなった甲斐くんが話す。
  私もつられて照れながら、なんとか「…うん」と返事をした。

 相模くんの席が離れてて良かったーーーーーーーー!!!!体調不良とか言った手前、聞かれてたら気まずくなるからね!
 でもって、何で誘いを肯定したんだ自分!甲斐くん普通に恐いし、他のクラスメイトたちの目もあるから『いやです』なんて言えないけど‼︎
 自分で自分の首を絞めてる…。だけど仕方ないよね……。


 体調不良は嘘だったはずなのに、本当に頭痛がしてきて授業に集中できなくなったため、先生に断りを入れて保健室へ向かう。
 ⸺保健室、という場所に嫌な予感がしてさらに頭が痛くなってくる。

「あれ、レミちゃん」
保健室のドアを開けると佐滝くんがぱっとこちらを振り向く。

 …そう、保健室と言えば佐滝くん。ゲーム内でも佐滝くんと会うのはほぼ保健室で、ここはもう佐滝くんの根城と化している。
 具合悪いなら保健室行くしかないと思って来たけれど、佐滝くんがいて休めるのか…⁈

 変態系ヤンデレの佐滝くんは、別にヤンデレが何段階もあったり、子どもの頃と大人の頃で大きく姿が変わるとかそういう事ではなく、ハアハアペロペロという性的嗜好の変態だ。
 そんな乙ゲーキャラがいてたまるか。
 ヒロインのドS対応もドM対応も全て美味しくいただけてしまう、攻略回避困難なキャラクター。別名『話し聞かない系ヤンデレ』というやつだ。

「どうしたの~?ケガでもした?レミちゃんがケガなんてしたら僕哀しいよ」
 全く悲しそうな顔じゃなく、それどころかニヤリと笑いながら佐滝くんは言う。なんとも薄っぺらい。

 佐滝くんのキャラ的にそこそこはちゃんと心配してくれているのだろうが、ナチュラルに少しサイコパスっぽいので心配している“フリ”感が否めない。
 ケガにさえも興奮してR-18展開に持っていくようなキャラだしね。

「あの、頭ちょっと痛くて……」
「あれっ、そうだったんだ。だいじょうぶ~?ベッドに寝てなよ」
いま先生いないから寝るくらいしか対処しようがないしね~、とベッドの方へ誘導される。

「ありがとう……?」
「い~え。……ふふ」
 その意味深な笑みは何だ、と訝しんだところでハッと気づく。

 ベッドの上に座った私と、そのすぐ横に手をついた佐滝くん。
「……2人っきりてことは~、」
やばい、と思うのに比例して頭の痛みも強くなってくる。

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