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二章
自覚してしまいました
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微睡みの縁にいた僕は、窮屈さを感じて目を開ける。
端的に言うと、狭い。
そっと瞼を上げると、いきなり月色の瞳が視界に飛び込んできて息が止まる。
「サー……ク、どうしたの?
隣のベッドにいたのに」
吐息がかかるほどの至近距離にどぎまぎしていると、ちょっと考えてから相棒は呟く。
「精神回復」
「……ねえ、本当に本気で言ってるんだよね、それ」
「当たり前だ」
「なにか、あった?」
僕の問いに、少しだけ金の瞳が揺らぐ。
一つ瞬きをしてから憂鬱そうに息を吐いた。
「あー……もう帰りてえ。やっぱ人の多いとこに来ると碌な事がねぇわ」
答えになってなかった。
理由はよく解らないけど、落ち込んでいるように見えたので、僕はよしよしとサークの頭を撫でてあげた。
さらさらの紫色の髪の感触が心地いい。
ふわりと何故かコーヒーの薫りが髪からする。
もしかして、下の階に降りて来たのかな。
そこでなにかあったのかも。
「あとちょっとだから頑張ろう。ね?」
まるで小さい子供をあやしているようで、可笑しくなってふふっと笑ってしまった。
「笑うなよ。しかし面倒くせぇなあ……」
「そんなに?」
「ああ」
いつも不遜極まりないサークがここまでごねているなんて。僕が寝ている間に何があったんだろう。
気にはなったけれど、そろそろ起きて身支度をする時間だ。
どうにか機嫌を直して貰って動いてくれないと、僕の背中側でルーナが寝ているので、ベッドから降りられない。
「じゃあ……」
僕は目を閉じて、サークのおでこと自分のおでこをこつんとくっつけた。
「僕の元気を分けてあげる」
しばらくそうしてじっとしていても反応がないので、今度は優しく頭を抱き込んで撫でてみる。
そうしていると、背後でむくりとルーナが起き上がる気配がした。
首だけを巡らせて振り向くと、さも何か言いたげな表情をしていた。
そして小さなふっくらした唇がぱくぱくと動いて何かを伝えてくる。
ええと……あ、ま、や、か、す、な。
手厳しい。
うーんとルーナは何事も無かったように伸びをして、僕の背中をぽんぽんと叩いてからベッドを降りた。
かと思うと一人でごそごそと着替えを始める。
昨日着せてもらった洋服と、あと数枚身体に合った物は、メリルさんの好意でそのまま譲って貰える事になった。
「サーク、そろそろ準備しよう。ルーナも起きたし、着替えして。
帰るにしてもまずは城まで戻らなきゃ」
乱れた紫の絹糸の隙間から、物憂げな金の瞳が僕を見上げてくる。
その妖艶さにどきりとしながらも、僕はえいっと上掛けを跳ね上げて身体を起こした。
それからなおもぐだぐだするサークに身支度をさせてから階下で朝食を摂ったんだけど……
なんだか大人達の様子が少しおかしい。
具体的にはアズヴァルド側の大人達だ。
いつも快活なウィル様の表情は少しばかり寂しげで、マルーセルさんもどこかぼんやりしている。
サークは黙々と朝食を食べていて、いつも通りといえばそうなんだけど、時折視線が気まずそうに泳いでいる。
僕も今朝のルーナの告白で頭が占められていたけど、この大人達ほど気もそぞろではない。
微妙な食卓の空気の中、ふとメリルさんと目が合ったが、朗らかな彼女にすら困ったように微笑まれた。
ともかくも僕達は出発の用意をして、アースリング子爵夫妻と、名残惜しげなメリルさんに見送られながら城への帰路に着く。
馬車が三台になったので、少しだけ配置変えをした。
ウィル様の馬車にサークとニファさんとルーナ、ルーベンス皇子の馬車にリファ様とアーシャさんにハーティさん。
僕の乗ってきた馬車にマルーセルさんとエルトールさん、リウさんと、一台ずつ魔術師の誰かが乗っている。
ルーナを連れて行くことについては、出発前に僕からサークにお願いしていた。
アースリングの警邏隊には昨日のうちに迷子の連絡は入れてもらっている。
もしルーナを知る人が現れたら、またここに戻ってくるけれど、そうでない間はしばらく一緒に居たいと告げた。
今朝のルーナの話を信じるならば、警邏隊から連絡がくることはありえないだろう。
けれど、子供の姿のルーナをアースリングに置いていくわけにはいかない。その行き先は孤児院になってしまうからだ。
僕は馬車の外を流れる景色を眺めながら、おかあさんについてサークにどう説明するかばかりを考えていた。
だから、向かいに座るエルトールさんがこちらをじっと見つめている事に気づいて一瞬たじろいでしまった。
「っ、エルトールさん?」
「ああすまないね。君があんまり思い詰めたようだったから気になって」
う、そんなに深刻な顔していたのか。
僕はつい空笑いをしてしまう。
「何でもないんです。ちょっと考え事していただけで」
「今日のそちらの皆は、揃って様子がおかしいようだね。まあ生きていれば色々と苦悩することもあるだろうけど。
君のように人並み外れて恵まれた容姿を持っていても、悩むことがあるんだね」
「そんな、恵まれているなんて……困り事、多いですよ。
女の子に間違われるのはいつもですし、そのせいでアズヴァルドのメイドさんにはドレスまで仕立てられてしまいました」
「ドレス?」
「はい」
堪らずといったふうにエルトールさんは吹き出して笑いだす。
隣のリウさんは流石に声を上げて笑ったりはしなかったけど、表情を石像のように引き締めて視線を窓の外に逃がしていた。
「それ初耳ですね。もしかしてケイティですか?そんな粋なことするの」
「うん。今着てるこの服と一緒に作ったって、見せてくれたよ」
粋って。
押し黙っていたマルーセルさんが、急に息を吹き返したように僕をきらきらした目で見つめてきた。
「タリュス君、それはぜひ着てくださいよ!
一生の記念になりますから!何でしたら肖像画も描いて貰いましょう、私が欲しいです!」
「え、着ないよ?」
「ええーいいじゃないですかあ。
全くもう、頑固な所はイグニシオンさんとよく似てますね」
あれ、何だろう。マルーセルさんがサークをそんな風に言うのは初めてだ。
もしかして朝サークが落ち込んだ原因は、マルーセルさんと何かあったのかも。ケンカでもしたのかな?
「ふっふふ……悪いな、笑ってしまった。
いや、しかし同感だ。タリュス君なら、きっとうちの姫君のような美しいご令嬢になるだろう。
ぜひお目にかかりたいものだ」
「エルトールさんまで……
僕はウィル様みたいに男らしくなりたいんです」
「無い物ねだりというものかな。しかし目指すものがはっきりしているのは良いことだよ。
到達点が見えれば努力の方向もおのずと分かることだし」
「ん、そうですよね……」
僕の理想。僕のこれからのこと。
サークと一緒にいたい。
できればおかあさんとも暮らしたい。
いつかは二人が僕を頼ってくれる位の大人になりたい。
この理想を叶えるにはどうしたらいいんだろう?
僕は胸に浮かぶ消えない問いかけを抱えながら、表面上は何事もないように馬車の中で和やかな会話を続けた。
途中で昼食の時間になったので、食事と休憩をとる為、大きな街で馬車が停められた。
馬車から降りると、とてとてとルーナが近づいてきて、きゅっと僕の脚にしがみついてくる。
その表情はどこか嬉しげに微笑んでいて、どうやら良いことがあったようだ。
僕はルーナに笑い返して手を繋ぎ、皆と一緒に街一番の立派な食堂に入っていく。
僕のいなかった行きと、帰りの行程でも食事を摂る街と店は事前に決められていて、高貴な人達が安全に使えるよう予約を取っていた。
ウィル様達王族やサーク達魔術師は、貴人の使う特別室で食事をする。
予約なしでも利用出来る、この大きな食堂ホールにいるのは、急遽増えた僕とルーナ、メイドさん三人と騎士さん四人、それとクレードルさんたち御者の三人。
「どうしたの?ルーナ、ずっと嬉しそうだね。
二ファさん、わかる?」
ルーナの楽しそうな様子が気になったけど、本人に直接聞けないので、同じテーブルについたニファさんに聞いてみる。
「特には思い当たりませんが……
道中は陛下とイグニシオン様が、お互いの意中のお相手についてお話されていたくらいですね」
「え……二人ともいるの?すきなひと」
「どうもそのようですよ。お名前は出されておりませんが、想い続けている方がいるようで。
互いのご苦労を励まし合っておられました」
ウィル様もだけど、あのサークに?
……すきなひと?
突然降ってわいた事実に、何故か頭が真っ白になる。
からん、と音がしたので視線をゆっくりと下げると、いつの間にかフォークを手から取り落としていたらしく、テーブルの上に落としてしまっていた。
「タリュス様、大丈夫ですか……?お顔が真っ青ですよ」
近くにいた給仕係に替わりのフォークを頼んでくれながら、ニファさんが気遣わしげに声をかけてくれる。
けど、僕は反応できなかった。
白いテーブルクロスに、フォークを落とした時の染みが出来ているのを眺める。
あ、なんだかこれに似ている。
真っ白だった心に生まれてしまった、黒い感情。
ぐるぐると思考が止まらない。
いつから?
断言できるけど、僕がサークと暮らすようになってから、女の人と会っている様子はなかった。
サークはあまり外出をしない。
買い出しや時折あった仕事の時はいつも僕を伴ってくれたし、その時も常に一緒にいて、密かに誰かと会うこともなかったはずだ。
じゃあ、僕と知り合う前だ。
誰だろう。そんなにも長い間、サークに想われているひと。
どうしてか胸がじりじりと焦げ付くように痛み始める。
「タリュス様……申し訳ありません、余計なことを申し上げました」
ニファさんがどうして謝るんだろう。
違う、僕が、勝手に。
どうしよう、何でもないって言いたいのに。
ひく、と頬がひきつるばかりで上手く笑えない。
「ニファさんが、謝ることないよ。
……びっくりした、だけだから。
ごめんなさい、ちょっと、外に出るね」
どうにかそれだけ告げて、僕は逃げるように食事の途中で席を立つ。
もうとてもご飯を食べる気にはなれなかった。
覚束ない足を叱咤しながらようやく食堂を出た。
敷地内に設えられている、煉瓦で作られた小さな花壇を見つけて、その縁にへなりと腰掛ける。
頭が重くて、僕は両手を膝の上で組んで額を押し付けた。
動悸がおさまらない。どうしてこんなに動揺しているのかわからない。
サークの向けてくれる、いつもの優しい瞳が脳裏に甦る。
何の根拠もないけれど、あの優しいひかりは、僕だけに向けてくれていると思っていた。
そうじゃなかった。僕は特別じゃなかった。
勝手に僕だけが、そう思い込んでいただけなんだ。
どんなひとなんだろう。
あの人嫌いのサークが、好きになったひとがいる。
その事実が胸に刺さって、痛い。
ぽたり、と両足の間に滴が落ちて足元の煉瓦を濡らした。
何度も、何度も。
それが自分の目から落ちている涙だと気づくまで、しばらくかかった。
「タリュス」
鈴の音が僕の耳朶を打ったのは、どれくらい経った頃だろう。
ふわりと頭を撫でられて、僕はのろのろと視線を上げた。
そこにいたのはルーナだった。
水色の鮮やかな瞳が瞬いて、僕と同じ目線で真っ直ぐに射抜くように見つめてくる。
「そんなに泣かないで。わたしの愛しい子」
だって、止まらない。
悲しくて苦しくて、全ての言葉が喉に詰まって。
涙が溢れてどうしようもないんだ。
ーーおかあさん。僕は……どうしてしまったの?
ああそれよりルーナ、声を出しちゃだめだ。
誰かに聞かれでもしたら。
思考がまとまらない。
ただぽろぽろと涙を落とすことしかできない。
そんな情けない僕の、濡れた頬を優しくハンカチで拭いながらルーナは唇を開いた。
「サークを愛しているんだな、タリュス」
どうしてルーナは、痛みを堪えるように辛そうにしているんだろう。
「昨日からもしかしてとは思ったんだ。
その気持ちは、相棒や家族としての愛情ではないよ。
……君は彼に、恋をしている。
だから彼に想い人がいたのが、そんなにも辛いんだ」
ーー僕が、恋?
そんなはずはない。
だって僕は男で、サークだって。
「……タリュス。教えた通り、君はわたしの子だ。
まだ確証はないが、もしかしたら君はわたしとつくりが近いのかもしれない。
言ったろ、君のおとうさんを好きになったから、わたしは女性型に身体を変えたと」
その時、ルーナの後ろに水の精霊がふわりと漂っているのに気がついた。
淡く煌めく水色の膜が張られていて、それが防音の役目をしているとわかる。
魔術とは少し違う気配がするけれど、透明なガラスに水を流しているように見える流動するその膜は、外へ会話が聞こえないようにしているようだ。
「君もたぶんわたしと同じだ。
わたしは男性の身体で産まれたが、身体が子供を作れる位に成熟すると、性別を変える事ができるようになった。
惹かれる相手の性別は、どちらでもあり得るんだよ」
は、と自嘲の笑みが溢れた。
僕が性別を変えられる?とても信じられない。
それに、今さらその事になんの意味があるだろう。
「だって、おかあさん。
そんなの、意味ないよ……
サークにはもう、す、すきな、ひとが……いるんだから」
「……ん、そうだな。わたしも彼らの会話は聞いていたから、わかってる。
けどね、相手はどこにいるのかわからないと言ってもいたんだ」
え、と俯きかけた視線を上げると、ルーナは困ったように眉尻を下げていた。
「名前は決して言わなかったけれど、ずっと探しているのに見つからないんだそうだ。その生死さえもわからないと。
だから諦められずに燻っているんだろうね」
ずきりと胸が痛んだ。
さっきの痛みとは少し違う。
そんなに長く探しているのに、見つけることが出来ないサークの事を思ってだ。
大好きなひとの生死すらわからないなんて、それはどれくらい辛い事だろう。
「そんな事情だから、彼の中で長いこと決着がつけられないんだろう。
ねえ、タリュス。言い方は悪いが、これは君にまだ勝機があるって事だよ」
ルーナが僕の頬を優しく撫でる。
意図が解らず首を傾げた僕に、にやりと勝ち気に微笑んだ。
「君が、その相手以上の存在になればいい。
現状を見れば、彼が大事にしている存在が君なのは誰の目にも明らかだ。
彼が君に抱いているのは過剰な親愛だが、それをあと一押しして恋に落とせばいい」
……恋に落とす?
そんな事が可能なんだろうか。
「君が女性型になれるかどうか、もう少し身体が成熟すれば解る。そうなってから本格的に口説きにかかればいいさ。
まあもしかしたら、今の溺愛ぶりをみる限り、彼は君が男でも受け入れるかもしれないね」
ルーナの言葉に、つい頬が熱くなる。
ほんのちょっとだけ、想像してしまったのだ。
サークが僕を恋人のように扱ったら、どうなるんだろうかと。
……これはサークが悪い。この頃よく僕にくっついてくるせいだ。
「せっかく恋心を自覚したのに、諦めるのはまだ早いだろ?」
僕の反応を見てルーナは笑みを深くした。
「……まだ、自分の事もちゃんとわかってないから、ルーナの言うとおりにするか、わからないけど……」
「今は顔を上げてくれたら、それでいい」
小さなルーナの引く手に導かれるように、僕はゆっくりと立ち上がる。
まだ気持ちの整理なんて全然つかない。
けど、不思議と涙は止まった。
もし……僕がおかあさんみたいに、女性になれたら?
僕は相棒としてだけでなく、サークと一緒にいられるのかもしれない。
誰かを想い続けている恋心を、こちらに向けてもらえる可能性が、まだ残っている。
「……うん。ちよっとだけど、落ち着いたかも。
そうだ、ニファさんに謝らなきゃ。
……来てくれて……ありがとう。おかあさん」
上手く笑えるかわからなかったけれど、感謝の気持ちを伝えたくてどうにか微笑む。
ルーナはそれはそれは嬉しそうに。
おかあさんだから当然だよ、と笑ってくれた。
端的に言うと、狭い。
そっと瞼を上げると、いきなり月色の瞳が視界に飛び込んできて息が止まる。
「サー……ク、どうしたの?
隣のベッドにいたのに」
吐息がかかるほどの至近距離にどぎまぎしていると、ちょっと考えてから相棒は呟く。
「精神回復」
「……ねえ、本当に本気で言ってるんだよね、それ」
「当たり前だ」
「なにか、あった?」
僕の問いに、少しだけ金の瞳が揺らぐ。
一つ瞬きをしてから憂鬱そうに息を吐いた。
「あー……もう帰りてえ。やっぱ人の多いとこに来ると碌な事がねぇわ」
答えになってなかった。
理由はよく解らないけど、落ち込んでいるように見えたので、僕はよしよしとサークの頭を撫でてあげた。
さらさらの紫色の髪の感触が心地いい。
ふわりと何故かコーヒーの薫りが髪からする。
もしかして、下の階に降りて来たのかな。
そこでなにかあったのかも。
「あとちょっとだから頑張ろう。ね?」
まるで小さい子供をあやしているようで、可笑しくなってふふっと笑ってしまった。
「笑うなよ。しかし面倒くせぇなあ……」
「そんなに?」
「ああ」
いつも不遜極まりないサークがここまでごねているなんて。僕が寝ている間に何があったんだろう。
気にはなったけれど、そろそろ起きて身支度をする時間だ。
どうにか機嫌を直して貰って動いてくれないと、僕の背中側でルーナが寝ているので、ベッドから降りられない。
「じゃあ……」
僕は目を閉じて、サークのおでこと自分のおでこをこつんとくっつけた。
「僕の元気を分けてあげる」
しばらくそうしてじっとしていても反応がないので、今度は優しく頭を抱き込んで撫でてみる。
そうしていると、背後でむくりとルーナが起き上がる気配がした。
首だけを巡らせて振り向くと、さも何か言いたげな表情をしていた。
そして小さなふっくらした唇がぱくぱくと動いて何かを伝えてくる。
ええと……あ、ま、や、か、す、な。
手厳しい。
うーんとルーナは何事も無かったように伸びをして、僕の背中をぽんぽんと叩いてからベッドを降りた。
かと思うと一人でごそごそと着替えを始める。
昨日着せてもらった洋服と、あと数枚身体に合った物は、メリルさんの好意でそのまま譲って貰える事になった。
「サーク、そろそろ準備しよう。ルーナも起きたし、着替えして。
帰るにしてもまずは城まで戻らなきゃ」
乱れた紫の絹糸の隙間から、物憂げな金の瞳が僕を見上げてくる。
その妖艶さにどきりとしながらも、僕はえいっと上掛けを跳ね上げて身体を起こした。
それからなおもぐだぐだするサークに身支度をさせてから階下で朝食を摂ったんだけど……
なんだか大人達の様子が少しおかしい。
具体的にはアズヴァルド側の大人達だ。
いつも快活なウィル様の表情は少しばかり寂しげで、マルーセルさんもどこかぼんやりしている。
サークは黙々と朝食を食べていて、いつも通りといえばそうなんだけど、時折視線が気まずそうに泳いでいる。
僕も今朝のルーナの告白で頭が占められていたけど、この大人達ほど気もそぞろではない。
微妙な食卓の空気の中、ふとメリルさんと目が合ったが、朗らかな彼女にすら困ったように微笑まれた。
ともかくも僕達は出発の用意をして、アースリング子爵夫妻と、名残惜しげなメリルさんに見送られながら城への帰路に着く。
馬車が三台になったので、少しだけ配置変えをした。
ウィル様の馬車にサークとニファさんとルーナ、ルーベンス皇子の馬車にリファ様とアーシャさんにハーティさん。
僕の乗ってきた馬車にマルーセルさんとエルトールさん、リウさんと、一台ずつ魔術師の誰かが乗っている。
ルーナを連れて行くことについては、出発前に僕からサークにお願いしていた。
アースリングの警邏隊には昨日のうちに迷子の連絡は入れてもらっている。
もしルーナを知る人が現れたら、またここに戻ってくるけれど、そうでない間はしばらく一緒に居たいと告げた。
今朝のルーナの話を信じるならば、警邏隊から連絡がくることはありえないだろう。
けれど、子供の姿のルーナをアースリングに置いていくわけにはいかない。その行き先は孤児院になってしまうからだ。
僕は馬車の外を流れる景色を眺めながら、おかあさんについてサークにどう説明するかばかりを考えていた。
だから、向かいに座るエルトールさんがこちらをじっと見つめている事に気づいて一瞬たじろいでしまった。
「っ、エルトールさん?」
「ああすまないね。君があんまり思い詰めたようだったから気になって」
う、そんなに深刻な顔していたのか。
僕はつい空笑いをしてしまう。
「何でもないんです。ちょっと考え事していただけで」
「今日のそちらの皆は、揃って様子がおかしいようだね。まあ生きていれば色々と苦悩することもあるだろうけど。
君のように人並み外れて恵まれた容姿を持っていても、悩むことがあるんだね」
「そんな、恵まれているなんて……困り事、多いですよ。
女の子に間違われるのはいつもですし、そのせいでアズヴァルドのメイドさんにはドレスまで仕立てられてしまいました」
「ドレス?」
「はい」
堪らずといったふうにエルトールさんは吹き出して笑いだす。
隣のリウさんは流石に声を上げて笑ったりはしなかったけど、表情を石像のように引き締めて視線を窓の外に逃がしていた。
「それ初耳ですね。もしかしてケイティですか?そんな粋なことするの」
「うん。今着てるこの服と一緒に作ったって、見せてくれたよ」
粋って。
押し黙っていたマルーセルさんが、急に息を吹き返したように僕をきらきらした目で見つめてきた。
「タリュス君、それはぜひ着てくださいよ!
一生の記念になりますから!何でしたら肖像画も描いて貰いましょう、私が欲しいです!」
「え、着ないよ?」
「ええーいいじゃないですかあ。
全くもう、頑固な所はイグニシオンさんとよく似てますね」
あれ、何だろう。マルーセルさんがサークをそんな風に言うのは初めてだ。
もしかして朝サークが落ち込んだ原因は、マルーセルさんと何かあったのかも。ケンカでもしたのかな?
「ふっふふ……悪いな、笑ってしまった。
いや、しかし同感だ。タリュス君なら、きっとうちの姫君のような美しいご令嬢になるだろう。
ぜひお目にかかりたいものだ」
「エルトールさんまで……
僕はウィル様みたいに男らしくなりたいんです」
「無い物ねだりというものかな。しかし目指すものがはっきりしているのは良いことだよ。
到達点が見えれば努力の方向もおのずと分かることだし」
「ん、そうですよね……」
僕の理想。僕のこれからのこと。
サークと一緒にいたい。
できればおかあさんとも暮らしたい。
いつかは二人が僕を頼ってくれる位の大人になりたい。
この理想を叶えるにはどうしたらいいんだろう?
僕は胸に浮かぶ消えない問いかけを抱えながら、表面上は何事もないように馬車の中で和やかな会話を続けた。
途中で昼食の時間になったので、食事と休憩をとる為、大きな街で馬車が停められた。
馬車から降りると、とてとてとルーナが近づいてきて、きゅっと僕の脚にしがみついてくる。
その表情はどこか嬉しげに微笑んでいて、どうやら良いことがあったようだ。
僕はルーナに笑い返して手を繋ぎ、皆と一緒に街一番の立派な食堂に入っていく。
僕のいなかった行きと、帰りの行程でも食事を摂る街と店は事前に決められていて、高貴な人達が安全に使えるよう予約を取っていた。
ウィル様達王族やサーク達魔術師は、貴人の使う特別室で食事をする。
予約なしでも利用出来る、この大きな食堂ホールにいるのは、急遽増えた僕とルーナ、メイドさん三人と騎士さん四人、それとクレードルさんたち御者の三人。
「どうしたの?ルーナ、ずっと嬉しそうだね。
二ファさん、わかる?」
ルーナの楽しそうな様子が気になったけど、本人に直接聞けないので、同じテーブルについたニファさんに聞いてみる。
「特には思い当たりませんが……
道中は陛下とイグニシオン様が、お互いの意中のお相手についてお話されていたくらいですね」
「え……二人ともいるの?すきなひと」
「どうもそのようですよ。お名前は出されておりませんが、想い続けている方がいるようで。
互いのご苦労を励まし合っておられました」
ウィル様もだけど、あのサークに?
……すきなひと?
突然降ってわいた事実に、何故か頭が真っ白になる。
からん、と音がしたので視線をゆっくりと下げると、いつの間にかフォークを手から取り落としていたらしく、テーブルの上に落としてしまっていた。
「タリュス様、大丈夫ですか……?お顔が真っ青ですよ」
近くにいた給仕係に替わりのフォークを頼んでくれながら、ニファさんが気遣わしげに声をかけてくれる。
けど、僕は反応できなかった。
白いテーブルクロスに、フォークを落とした時の染みが出来ているのを眺める。
あ、なんだかこれに似ている。
真っ白だった心に生まれてしまった、黒い感情。
ぐるぐると思考が止まらない。
いつから?
断言できるけど、僕がサークと暮らすようになってから、女の人と会っている様子はなかった。
サークはあまり外出をしない。
買い出しや時折あった仕事の時はいつも僕を伴ってくれたし、その時も常に一緒にいて、密かに誰かと会うこともなかったはずだ。
じゃあ、僕と知り合う前だ。
誰だろう。そんなにも長い間、サークに想われているひと。
どうしてか胸がじりじりと焦げ付くように痛み始める。
「タリュス様……申し訳ありません、余計なことを申し上げました」
ニファさんがどうして謝るんだろう。
違う、僕が、勝手に。
どうしよう、何でもないって言いたいのに。
ひく、と頬がひきつるばかりで上手く笑えない。
「ニファさんが、謝ることないよ。
……びっくりした、だけだから。
ごめんなさい、ちょっと、外に出るね」
どうにかそれだけ告げて、僕は逃げるように食事の途中で席を立つ。
もうとてもご飯を食べる気にはなれなかった。
覚束ない足を叱咤しながらようやく食堂を出た。
敷地内に設えられている、煉瓦で作られた小さな花壇を見つけて、その縁にへなりと腰掛ける。
頭が重くて、僕は両手を膝の上で組んで額を押し付けた。
動悸がおさまらない。どうしてこんなに動揺しているのかわからない。
サークの向けてくれる、いつもの優しい瞳が脳裏に甦る。
何の根拠もないけれど、あの優しいひかりは、僕だけに向けてくれていると思っていた。
そうじゃなかった。僕は特別じゃなかった。
勝手に僕だけが、そう思い込んでいただけなんだ。
どんなひとなんだろう。
あの人嫌いのサークが、好きになったひとがいる。
その事実が胸に刺さって、痛い。
ぽたり、と両足の間に滴が落ちて足元の煉瓦を濡らした。
何度も、何度も。
それが自分の目から落ちている涙だと気づくまで、しばらくかかった。
「タリュス」
鈴の音が僕の耳朶を打ったのは、どれくらい経った頃だろう。
ふわりと頭を撫でられて、僕はのろのろと視線を上げた。
そこにいたのはルーナだった。
水色の鮮やかな瞳が瞬いて、僕と同じ目線で真っ直ぐに射抜くように見つめてくる。
「そんなに泣かないで。わたしの愛しい子」
だって、止まらない。
悲しくて苦しくて、全ての言葉が喉に詰まって。
涙が溢れてどうしようもないんだ。
ーーおかあさん。僕は……どうしてしまったの?
ああそれよりルーナ、声を出しちゃだめだ。
誰かに聞かれでもしたら。
思考がまとまらない。
ただぽろぽろと涙を落とすことしかできない。
そんな情けない僕の、濡れた頬を優しくハンカチで拭いながらルーナは唇を開いた。
「サークを愛しているんだな、タリュス」
どうしてルーナは、痛みを堪えるように辛そうにしているんだろう。
「昨日からもしかしてとは思ったんだ。
その気持ちは、相棒や家族としての愛情ではないよ。
……君は彼に、恋をしている。
だから彼に想い人がいたのが、そんなにも辛いんだ」
ーー僕が、恋?
そんなはずはない。
だって僕は男で、サークだって。
「……タリュス。教えた通り、君はわたしの子だ。
まだ確証はないが、もしかしたら君はわたしとつくりが近いのかもしれない。
言ったろ、君のおとうさんを好きになったから、わたしは女性型に身体を変えたと」
その時、ルーナの後ろに水の精霊がふわりと漂っているのに気がついた。
淡く煌めく水色の膜が張られていて、それが防音の役目をしているとわかる。
魔術とは少し違う気配がするけれど、透明なガラスに水を流しているように見える流動するその膜は、外へ会話が聞こえないようにしているようだ。
「君もたぶんわたしと同じだ。
わたしは男性の身体で産まれたが、身体が子供を作れる位に成熟すると、性別を変える事ができるようになった。
惹かれる相手の性別は、どちらでもあり得るんだよ」
は、と自嘲の笑みが溢れた。
僕が性別を変えられる?とても信じられない。
それに、今さらその事になんの意味があるだろう。
「だって、おかあさん。
そんなの、意味ないよ……
サークにはもう、す、すきな、ひとが……いるんだから」
「……ん、そうだな。わたしも彼らの会話は聞いていたから、わかってる。
けどね、相手はどこにいるのかわからないと言ってもいたんだ」
え、と俯きかけた視線を上げると、ルーナは困ったように眉尻を下げていた。
「名前は決して言わなかったけれど、ずっと探しているのに見つからないんだそうだ。その生死さえもわからないと。
だから諦められずに燻っているんだろうね」
ずきりと胸が痛んだ。
さっきの痛みとは少し違う。
そんなに長く探しているのに、見つけることが出来ないサークの事を思ってだ。
大好きなひとの生死すらわからないなんて、それはどれくらい辛い事だろう。
「そんな事情だから、彼の中で長いこと決着がつけられないんだろう。
ねえ、タリュス。言い方は悪いが、これは君にまだ勝機があるって事だよ」
ルーナが僕の頬を優しく撫でる。
意図が解らず首を傾げた僕に、にやりと勝ち気に微笑んだ。
「君が、その相手以上の存在になればいい。
現状を見れば、彼が大事にしている存在が君なのは誰の目にも明らかだ。
彼が君に抱いているのは過剰な親愛だが、それをあと一押しして恋に落とせばいい」
……恋に落とす?
そんな事が可能なんだろうか。
「君が女性型になれるかどうか、もう少し身体が成熟すれば解る。そうなってから本格的に口説きにかかればいいさ。
まあもしかしたら、今の溺愛ぶりをみる限り、彼は君が男でも受け入れるかもしれないね」
ルーナの言葉に、つい頬が熱くなる。
ほんのちょっとだけ、想像してしまったのだ。
サークが僕を恋人のように扱ったら、どうなるんだろうかと。
……これはサークが悪い。この頃よく僕にくっついてくるせいだ。
「せっかく恋心を自覚したのに、諦めるのはまだ早いだろ?」
僕の反応を見てルーナは笑みを深くした。
「……まだ、自分の事もちゃんとわかってないから、ルーナの言うとおりにするか、わからないけど……」
「今は顔を上げてくれたら、それでいい」
小さなルーナの引く手に導かれるように、僕はゆっくりと立ち上がる。
まだ気持ちの整理なんて全然つかない。
けど、不思議と涙は止まった。
もし……僕がおかあさんみたいに、女性になれたら?
僕は相棒としてだけでなく、サークと一緒にいられるのかもしれない。
誰かを想い続けている恋心を、こちらに向けてもらえる可能性が、まだ残っている。
「……うん。ちよっとだけど、落ち着いたかも。
そうだ、ニファさんに謝らなきゃ。
……来てくれて……ありがとう。おかあさん」
上手く笑えるかわからなかったけれど、感謝の気持ちを伝えたくてどうにか微笑む。
ルーナはそれはそれは嬉しそうに。
おかあさんだから当然だよ、と笑ってくれた。
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