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一幕 春の訪れ
五.
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「ってことは、ここは第四界層ってことで良いのか?」
話を聞いているうちに調子が戻ってきたのか、そう問いかける声には先ほどよりも艶があった。彼の体が徐々に回復に向かっていることに安堵を覚えつつ、棠鵺はその言葉を首肯する。
「はい。人間界の、えっと……一応最東端の島の田舎って感じですかね?」
「そうか。……——その、随分と世話になったらしいな」
気まずいのか、それとも他に理由があるのか。これまで決して合わせようとしなかった視線が、初めてまっすぐにこちらを見た――相変わらず目を合わせようとはしてくれないのだが。
思わず見惚れてしまいそうになるその鮮やかな両の瞳は、しかしその印象に反してけっして光を宿そうとしない。そこにあるのは底知れない闇であり、あの時「魂を吸い取られそうだ」と感じたのはおそらくそれが理由だろう。しかし違うのは、あの時のような威圧感も恐怖心も今は感じないということだ。
むしろ、その静かで穏やかな闇には安心感すら覚える。それはもしかすると自身が陰の気を糧として生きる妖族であるがゆえなのかもしれないが。いずれにしても、彼に対する負の印象は完全に払拭された。
「いえ、全然! 僕は何もしていないので……」
実際彼の治療はほとんどショウブがしてくれていたし、ここに運んできてくれたのも山の主だ。自身はただそこに居合わせただけであって、世話になったと言われるほどではない。そう否定しようとしたが、その先の言葉は彼に制止される。
「これで世話になってないって言ったら、俺は今後、永遠に礼を言うことはないだろうな」
それまでずっと困惑と疑惑との入り混じった表情をしていた彼の口元が一瞬緩んだ。直後にはまた一文字に結ばれてしまったが、彼のそういった表情を見られたことで、棠鵺の中にあった最後の緊張の糸が弛んだ。
「あ、あの……お名前を伺っても良いですか?」
おずおずとそう申し出る棠鵺に、男は「あぁ、忘れてた」と言って姿勢を正す。改めて棠鵺に向き直り、一瞬の躊躇のあと口を開く。
「その、レイって呼んでくれると助かる。本名は……悪いが聞かないで欲しい」
神族は基本的に自身の名を名乗らない。きっと彼らにも彼らなりの事情があるのだろう――と、心の中で納得しながら、棠鵺はその答えに笑顔で頷く。
「わかりました。それじゃあレイさん、せっかくなんで包帯も変えちゃいましょうか。傷口、開いちゃってるみたいですし」
そう言って指さしたのは、じんわりと赤い染みの広がる包帯部分だった。その言葉に、レイは多少バツが悪そうに口元を歪めながら、しかし意外にも素直に「頼む」と返した。
「まだ痛いですよね……他に体調の悪いところとかはありますか? ちょっと熱っぽいのかな? 痛み止め飲みますか?」
巻かれた包帯を取り外し、患部を丁寧に拭いながら、棠鵺は矢継ぎ早にそんなことを尋ねる。どう答えて良いか分からないのか、レイは「あぁ」とか「いや」とかなんとも曖昧な返事を繰り返していた。
「トーヤ、お前は、その……気にならないのか?」
甲斐甲斐しく世話を焼く棠鵺に、レイがふと疑問を投げかける。その問いかけを聞いた棠鵺はきょとんとした顔で彼を見上げた。
「え、何がですか?」
「いや、だから……なんで俺が落ちてきたのかとか、この傷はどうしたのかとか……」
「あぁ! 確かに気になりますけど……聞いて欲しいですか?」
「……いや? そもそも覚えてないしな……」
「ダメじゃないですか。でもじゃあ、別に気にならないってことで。あ! でもこのピアスに意味があるのかは気になります」
言いながら棠鵺が指さしたのはレイの体の至るところに点々と鈍く輝く銀色の塊だった。
「治療するときも、『これ取っていいの? ダメなの? でも神族の装飾って何か意味ありそうだし、勝手に取って何か起こったらどうしよう?』って、ショウブさん……えぇっと、この怪我の治療をしてくれた人間と話してたんですよ」
「それは、悪いことをしたな……」
冗談なのか本気なのか。カラカラと笑いながらそんなことを告げる棠鵺に若干戸惑いつつ、レイは自身の脇付近にあるリング状の金属を指でつまみ――次の瞬間に「ぶちっ」という音と共に勢いよく肉を引きちぎった。
何をしているのかと、棠鵺は流れ出る赤い液体を凝視する。
「え、ちょっと……えぇ?」
そんな棠鵺の困惑などお構いなしに、レイは至って普通の顔で棠鵺を見た。
「特に意味はないから、別に取っても問題ない」
平然とそう言ってのけるレイに更に困惑の気持ちを強めつつ、棠鵺は手元にあった綿紗を急いでそこに充てようとする。
「そんな実演してくれなくても……っていうか、ここで新しい傷を増やしてどうする――……って、あれ?」
「これくらいの怪我ならすぐに治る」
が、次の瞬間にはそこには何もなかったかのような綺麗は皮膚が出来上がっていた。
神族は回復力や生命力に優れているとはこの数日間に何度も聞いたものの、まさかここまでのものとは思いもせず、棠鵺は茫然とその傷のあった場所を見つめるしかなかった。しかし、それと同時にある疑問が浮かび上がって来る。
「あの、こっちの怪我くらい大きいと、やっぱり時間がかかるものなんですか?」
小さいとはいえ、傷を創って次の瞬間には何事もなかったかのように塞がっていたくらいだ。いくら大きな怪我とはいえ、もう少し予後が良くても良いのではないか? そんな疑問をぶつければ、レイは少々困ったように――元々深い皺の刻まれた――眉間を寄せた。
「いや、普段ならこれくらいは数秒で治るはずなんだが……今回はちょっと事情が違ったらしい」
言いにくそうに言葉を濁しながら、レイはふいと視線を逸らす。おそらくはあまり聞かれたくないことなのだろうと判断し、棠鵺は「そうなんですね」とだけ言ってそこに踏み込むことはしなかった。
それからしばらく、二人は何を話すでもなく、ただただ手当てをする側とされる側という役割に徹した。レイが口を開いたのはもう手当ても終わるだろうというときだった。
「そういえば、それ……」
言いながらレイが指さしたのは棠鵺の右腕に巻かれた包帯だった。
「それは、俺がやったのか?」
「え?」
その言葉に棠鵺は動かしていた手を止め、レイを見る。腕の鬱血痕は今はほとんど治り、ところどころ黄味の混じった薄い紫になっていた。もう冷やす必要もないかと特別な処置を施してはいなかったが、現在痣は包帯ごと袖で隠されている。何故分かったのかと不思議に思い、棠鵺は一瞬固まるが、またすぐに笑顔を湛える。
「違いますよ」
そうして穏やかな声で告げる棠鵺を見て、レイは静かに目を閉じる。再びわずかな沈黙。
「……そうか。……悪かったな」
「……いえ」
それからは二人無言の時を過ごした。気まずい空気が流れるでもなく、自然で穏やかな沈黙である。外では山に帰る鴉の鳴き声が児玉している。橙の空はとっくに藍に染まり、点々と星が輝き始めていた。
先に沈黙を破ったのはレイだった。
「そうだ、その、悪いんだが……」
一通りの処置を終えて部屋を後にしようとする棠鵺を呼び止める。どこかバツの悪そうな声に疑問を抱きながらも、棠鵺は「はい?」と振り向き、次の言葉を待った。
「その、痛み止めは、もらえると、有り難い……」
そう照れ臭そうに言う姿に不思議な親近感を覚えつつ、棠鵺はくすりと笑って「はい」と返事をした。
***
日は完全に沈み空には星が燦然と輝いている。薬の効果か、痛みは大分引いていた。それを良いことにレイは早速動き回ろうとするも、そこは棠鵺に静止される。
曰く、「完全にとは言いませんが、薬なしで痛みがなくなるまでは大人しく養生して下さい」とのことだ。
仕方なしに、レイは近くの縁側に座って夜空を眺める。
月は、出ていない。
昔は毎日月が出ていたが、いつしか満ち欠けを繰り返すようになり、ある日を境に月は空からその姿を完全に消した。
月が出なくなって久しい。最後に彼女に会ったのはいつだったか。
突如、この季節にしては随分と冷たい風が吹いた。
傷がずきりと疼く。
新たな季節の始まりである。
話を聞いているうちに調子が戻ってきたのか、そう問いかける声には先ほどよりも艶があった。彼の体が徐々に回復に向かっていることに安堵を覚えつつ、棠鵺はその言葉を首肯する。
「はい。人間界の、えっと……一応最東端の島の田舎って感じですかね?」
「そうか。……——その、随分と世話になったらしいな」
気まずいのか、それとも他に理由があるのか。これまで決して合わせようとしなかった視線が、初めてまっすぐにこちらを見た――相変わらず目を合わせようとはしてくれないのだが。
思わず見惚れてしまいそうになるその鮮やかな両の瞳は、しかしその印象に反してけっして光を宿そうとしない。そこにあるのは底知れない闇であり、あの時「魂を吸い取られそうだ」と感じたのはおそらくそれが理由だろう。しかし違うのは、あの時のような威圧感も恐怖心も今は感じないということだ。
むしろ、その静かで穏やかな闇には安心感すら覚える。それはもしかすると自身が陰の気を糧として生きる妖族であるがゆえなのかもしれないが。いずれにしても、彼に対する負の印象は完全に払拭された。
「いえ、全然! 僕は何もしていないので……」
実際彼の治療はほとんどショウブがしてくれていたし、ここに運んできてくれたのも山の主だ。自身はただそこに居合わせただけであって、世話になったと言われるほどではない。そう否定しようとしたが、その先の言葉は彼に制止される。
「これで世話になってないって言ったら、俺は今後、永遠に礼を言うことはないだろうな」
それまでずっと困惑と疑惑との入り混じった表情をしていた彼の口元が一瞬緩んだ。直後にはまた一文字に結ばれてしまったが、彼のそういった表情を見られたことで、棠鵺の中にあった最後の緊張の糸が弛んだ。
「あ、あの……お名前を伺っても良いですか?」
おずおずとそう申し出る棠鵺に、男は「あぁ、忘れてた」と言って姿勢を正す。改めて棠鵺に向き直り、一瞬の躊躇のあと口を開く。
「その、レイって呼んでくれると助かる。本名は……悪いが聞かないで欲しい」
神族は基本的に自身の名を名乗らない。きっと彼らにも彼らなりの事情があるのだろう――と、心の中で納得しながら、棠鵺はその答えに笑顔で頷く。
「わかりました。それじゃあレイさん、せっかくなんで包帯も変えちゃいましょうか。傷口、開いちゃってるみたいですし」
そう言って指さしたのは、じんわりと赤い染みの広がる包帯部分だった。その言葉に、レイは多少バツが悪そうに口元を歪めながら、しかし意外にも素直に「頼む」と返した。
「まだ痛いですよね……他に体調の悪いところとかはありますか? ちょっと熱っぽいのかな? 痛み止め飲みますか?」
巻かれた包帯を取り外し、患部を丁寧に拭いながら、棠鵺は矢継ぎ早にそんなことを尋ねる。どう答えて良いか分からないのか、レイは「あぁ」とか「いや」とかなんとも曖昧な返事を繰り返していた。
「トーヤ、お前は、その……気にならないのか?」
甲斐甲斐しく世話を焼く棠鵺に、レイがふと疑問を投げかける。その問いかけを聞いた棠鵺はきょとんとした顔で彼を見上げた。
「え、何がですか?」
「いや、だから……なんで俺が落ちてきたのかとか、この傷はどうしたのかとか……」
「あぁ! 確かに気になりますけど……聞いて欲しいですか?」
「……いや? そもそも覚えてないしな……」
「ダメじゃないですか。でもじゃあ、別に気にならないってことで。あ! でもこのピアスに意味があるのかは気になります」
言いながら棠鵺が指さしたのはレイの体の至るところに点々と鈍く輝く銀色の塊だった。
「治療するときも、『これ取っていいの? ダメなの? でも神族の装飾って何か意味ありそうだし、勝手に取って何か起こったらどうしよう?』って、ショウブさん……えぇっと、この怪我の治療をしてくれた人間と話してたんですよ」
「それは、悪いことをしたな……」
冗談なのか本気なのか。カラカラと笑いながらそんなことを告げる棠鵺に若干戸惑いつつ、レイは自身の脇付近にあるリング状の金属を指でつまみ――次の瞬間に「ぶちっ」という音と共に勢いよく肉を引きちぎった。
何をしているのかと、棠鵺は流れ出る赤い液体を凝視する。
「え、ちょっと……えぇ?」
そんな棠鵺の困惑などお構いなしに、レイは至って普通の顔で棠鵺を見た。
「特に意味はないから、別に取っても問題ない」
平然とそう言ってのけるレイに更に困惑の気持ちを強めつつ、棠鵺は手元にあった綿紗を急いでそこに充てようとする。
「そんな実演してくれなくても……っていうか、ここで新しい傷を増やしてどうする――……って、あれ?」
「これくらいの怪我ならすぐに治る」
が、次の瞬間にはそこには何もなかったかのような綺麗は皮膚が出来上がっていた。
神族は回復力や生命力に優れているとはこの数日間に何度も聞いたものの、まさかここまでのものとは思いもせず、棠鵺は茫然とその傷のあった場所を見つめるしかなかった。しかし、それと同時にある疑問が浮かび上がって来る。
「あの、こっちの怪我くらい大きいと、やっぱり時間がかかるものなんですか?」
小さいとはいえ、傷を創って次の瞬間には何事もなかったかのように塞がっていたくらいだ。いくら大きな怪我とはいえ、もう少し予後が良くても良いのではないか? そんな疑問をぶつければ、レイは少々困ったように――元々深い皺の刻まれた――眉間を寄せた。
「いや、普段ならこれくらいは数秒で治るはずなんだが……今回はちょっと事情が違ったらしい」
言いにくそうに言葉を濁しながら、レイはふいと視線を逸らす。おそらくはあまり聞かれたくないことなのだろうと判断し、棠鵺は「そうなんですね」とだけ言ってそこに踏み込むことはしなかった。
それからしばらく、二人は何を話すでもなく、ただただ手当てをする側とされる側という役割に徹した。レイが口を開いたのはもう手当ても終わるだろうというときだった。
「そういえば、それ……」
言いながらレイが指さしたのは棠鵺の右腕に巻かれた包帯だった。
「それは、俺がやったのか?」
「え?」
その言葉に棠鵺は動かしていた手を止め、レイを見る。腕の鬱血痕は今はほとんど治り、ところどころ黄味の混じった薄い紫になっていた。もう冷やす必要もないかと特別な処置を施してはいなかったが、現在痣は包帯ごと袖で隠されている。何故分かったのかと不思議に思い、棠鵺は一瞬固まるが、またすぐに笑顔を湛える。
「違いますよ」
そうして穏やかな声で告げる棠鵺を見て、レイは静かに目を閉じる。再びわずかな沈黙。
「……そうか。……悪かったな」
「……いえ」
それからは二人無言の時を過ごした。気まずい空気が流れるでもなく、自然で穏やかな沈黙である。外では山に帰る鴉の鳴き声が児玉している。橙の空はとっくに藍に染まり、点々と星が輝き始めていた。
先に沈黙を破ったのはレイだった。
「そうだ、その、悪いんだが……」
一通りの処置を終えて部屋を後にしようとする棠鵺を呼び止める。どこかバツの悪そうな声に疑問を抱きながらも、棠鵺は「はい?」と振り向き、次の言葉を待った。
「その、痛み止めは、もらえると、有り難い……」
そう照れ臭そうに言う姿に不思議な親近感を覚えつつ、棠鵺はくすりと笑って「はい」と返事をした。
***
日は完全に沈み空には星が燦然と輝いている。薬の効果か、痛みは大分引いていた。それを良いことにレイは早速動き回ろうとするも、そこは棠鵺に静止される。
曰く、「完全にとは言いませんが、薬なしで痛みがなくなるまでは大人しく養生して下さい」とのことだ。
仕方なしに、レイは近くの縁側に座って夜空を眺める。
月は、出ていない。
昔は毎日月が出ていたが、いつしか満ち欠けを繰り返すようになり、ある日を境に月は空からその姿を完全に消した。
月が出なくなって久しい。最後に彼女に会ったのはいつだったか。
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