作者の自己満恋愛小説

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 次の日の十時。

 私は池袋の東口改札二来ている。

 今日は何があるのだろうか。

 私は、昨日告白をしてしまった。

 その返答も今日分かる。

 でも、私ダメだ。

 緊張する。

 このまま逃げたい。

 でも最後の思い出になるかもしれない君とのお出かけを今体験しないでどうするといった抑止力が働く。

 どうしよう。

 まだ来てない。

 声が聞こえる。

「ごめん。遅くなった」

 ポロシャツを着た君が現れる。

 その姿を見たらさっきの迷いはなくなった。

「じゃあ、行こうか。今日は楽しもうね」

「うん!」

 私たちはカップルのように歩く。

 ただの友達であるが、男女が二人で歩いている姿を見ればほとんどの人がカップルだと思うのは間違えない。

 というのも間違えだ。

 前まではそう思っていた。

 どう考えても周りのカップルよりも温度差はある。

「どうしたの?」

 何だろうか。

 いつも見ている君とは違う。

 気持ち悪い。

 もしかしたら、私は外から君を見ていた方がよかったのかもしれない。

 なんていう気付き。

 

 気付きなのか?

 元から分かってんじゃないのか?

 

 何言ってんだ私。

 ずっと君のことを好きで、でも思いが伝えられなくて……。

 その時間に恋心が無くなってたなんてあるわけないんだ。

 祭りのあの時に、私の恋心にピリオドが付いたなんて信じてためるか。



 嘘つけ私。

 嘘ついてるのはどっち?

 私は、何を言ってるの。

 でも何かが噛み合ってないのは分かっている。

 私は、この人のことを………



「どう思ってるのかな」



 君は笑って私に言った。

「どうしたの?」

「いえ、緊張してて。色んな事考えちゃって」

「そうか……。それもそうだよな。俺も同級生の女子とどこか行くなんて初めてで」

「そうなんですか!てっきり、経験済みなのかと思っていました」

「そんなわけないじゃん。告白されたのなんて初めてだよ」

「じゃあ、私が一番ですね」

 少しうれしかった。

 話が途切れ途切れでもそれでいい。

 これが私のやり方。

「着いたね。じゃあ、今日は俺が払うよ」

「それは無しにしましょ。私もちゃんと払います」

「じゃあ、端数分だけ払ってくれる?」

「お言葉に甘えて」

 と言ったものの端数は無い。

「いいんですか?」

「騙されたね」

僅かな間隔をあけたあと「勿論」という。

「………」

「水族館とか動物園とかの施設系は端数なんてあんまりでないからね」

「そういえば。そうでした」

「よし、チケットも買ったことだし行こうか」

「はい!それとありがとうございます」

 その後、ペンギンを見たりアシカショーを見たり、思い思いに楽しんだ。

 話していく中で、君がどんなことが好きなのも分かった。

 案外君は、可愛いのが好きだということ。

君が妹さんを大切にしていること。

 そして、君の手は思っているよりもごつごつしていて男性だということ。

 色んな事に気付いた。

 君は左利き。

 そして私は右利き。

 共通点を探す。

 私は兄妹がいない。

 でも君はいる。

 私は女性。

 君は男性。

 基本的な所は違うみたいだ。

 恋人の中で共通点を求めるかと言えば、どちらともと答えるだろう。

 物事の考え方は生活をしていく中で自然と同じになっていく可能性だってある。

 食べ方だって、変わっていく。

 そして、気持ちも変わっていく。

 再び考える。

 私は本当に君のことが好きなのだろうか。

 本当に?

 何故そう思うのだろうか?

 私はどうしてしまったのだろうか。

 何を今更。

 答えを聞いてから考えよう。

 今は今を楽しもう。
 
 私の気持ちの話などどうだっていい。

 いつの間にか日が沈みかけている。

 思っていたよりも、水族館が広く時間が取られたみたいだ。

 昼食もとっていたり、カフェに寄ったりしてたからかもしれない。

 そろそろ昨日の返答が聞きたい。

「昨日の返答聞いてもいいかな?」

「うん。分かってる」

 息を吐く。

 その一動作をするだけで胸が痛い。

 締め付けられる。

「うん」

「やっぱり………」

「うん」

「やっぱり」

「うん」

「やっぱり」

「うん」

「やっぱり」

「うん」

「やっぱり」

「うん」

 長い。

「やっぱりさ」

「うん」

「俺でいいのか」

「うん」

「それなら、もう少し待ってほしい。結論が出せないんだ。昨日から考えた。今日だって考えた。どう考えても、俺
は君のことが好きじゃない。それは明らか。でも、それも最適解でもない気がする。最適解を求めたかった。でも、
俺には君の答えを導くことは出来ない。どうしたらいいんだよ。俺は。君のことは好きじゃない。でも、君を捨てたら後悔する気がする。今日出かけてみて、君の姿を見て揺らいだ。でも」

「じゃあ、私はどうしたら?」

「分からないんだよ」

「それなら私から言っていいかな」

「えっ?」
「私も迷いがあった、昨日の告白も咄嗟にでたもの。好きなのは事実。でも、私にも迷いがった。迷いがあったの」

 何回も迷いという言葉を発する。

 強調する。

 自分の振られたという気持ちをかき消すために。

 だから何度も。

 頭から結論が出される。

「私、あなたの事見てるだけでよかったのかもしれない」

 言ってしまった。

 私はずっとそう思っていた。

 っていうのは、今日気付いた。

「今日が楽しくなったとかそういう意味じゃない。今日はとても楽しかった。でも、君を近くで見て感じたの。私は
君を見ているだけでよかったって」

「じゃあ、俺もお前も振ったってことでいいのか?」

「そういう事だと思う」

「じゃあ、友達になろう」

「はい」




《終》
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