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呪樹に囚われた従者
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永海の目的は、商人がこの時間にどこで何をしているのかを知ること。
それを天定に報告して、主から娘に伝えて、彼女が安堵してくれれば一番の理想。
永海が影を感じてやって来たのは、街外れに隣接している森の中。
正直なところ森と林の違いがいまいち良くわかっていない永海だが、ある時に天定に聞いてみたら「自然にできたものが森で、人の手で植えられたものが林だ」と教えてくれたが…やっぱり分からないものは分からない。
「おっさん、マジで何してんだよ…。」
例えばデートに来た男女だったら、生い茂る葉の隙間から差し込む月明かりを見て綺麗だとか幻想的だとか言うのかも知れない。
だが自分は仕事できている。
こんな時間にこんな場所で、何をすることがあると言うのだろうか。
枝から枝へ軽やかに飛び移り、時には身を隠しながら辺りを見渡す。
影を感じた場所の近くから探すと、やっと見つけた。
「ーーーーーみーっけ。」
さてさて見物を…と思い、枝に座る。
商人の男は一本の木に向かって立っているだけ。
これだけ雑音がない場所でも声が全く聞こえてこないのは、余程の小声なのかそもそも話していないのか。
さすがの永海もおかしいと大勢を変えようとしたところ、どこからか声が聞こえて来た。
"貴方、あの時にその者を助けた人…よね。"
永海は咄嗟に後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
"私を探しているのかしら?無駄よ。貴方に私は探し出せない。"
また別の方向を見るが人影はおらず、それから鎖鎌を手に取り四方へ顔を向けるが人の気配はしない。
"嬉しいわ。まさか貴方の方から来てくれるなんて。"
それでも声が聞こえて来る。
どこだ、一体どこからーーーー。
"そんなに私がどこにいるのか気になるのかしら?私は…ここよ。"
永海の左足首に、地から伸びた蔓が巻きついた。
左足首を締め付けられる感覚に、永海はピンときた。
鎖鎌で蔓を斬り、その後も無数に迫るそれらを斬り刻みながら間合いを取るべく下がる。
が、自分が下がった分だけ蔓が迫って来る為に中々距離を空けられない。
前後方や左右だけでなく上や下からも蔓が迫り来るものだから、一瞬も隙を見せられない。
影伝いによる瞬間移動でこの場から離脱する方法もあるのだが、移動先の影を考える余裕が無い。
「ちっ…。」
少しでも動きを止めると四肢や胴体に巻きつこうとしてくる。
それを阻止しつつ、なんとか声の正体だけでも知れればと永海は応戦を続けた。
"貴方から、美味しそうな匂いがする。"
時折聞こえて来る誰かの声。
心理を乱す作戦なのだろうが、過去にまつわる内容でなければ精神面を保てる。
"貴方の生気、暗くて…歪んでいて…あぁ、1人だけ心を許している人がいるのね?"
言葉に永海の動きが止まる。
その隙に蔓が体に絡みつく。
ハッと我に帰る永海が切り離す。
"その気持ちを許せる人、そんなに特別なのね。その人の精気を吸い尽くしたら、貴方はどんな絶望を見せてくれるのかしら?"
永海の目の色が変わった。
「天定に手を出したら、俺が許さねぇからな…。」
"ふふふ…貴方のその強気な表情、もっと楽しみたいわ。"
ここから、永海の長い戦いが始まった。
それを天定に報告して、主から娘に伝えて、彼女が安堵してくれれば一番の理想。
永海が影を感じてやって来たのは、街外れに隣接している森の中。
正直なところ森と林の違いがいまいち良くわかっていない永海だが、ある時に天定に聞いてみたら「自然にできたものが森で、人の手で植えられたものが林だ」と教えてくれたが…やっぱり分からないものは分からない。
「おっさん、マジで何してんだよ…。」
例えばデートに来た男女だったら、生い茂る葉の隙間から差し込む月明かりを見て綺麗だとか幻想的だとか言うのかも知れない。
だが自分は仕事できている。
こんな時間にこんな場所で、何をすることがあると言うのだろうか。
枝から枝へ軽やかに飛び移り、時には身を隠しながら辺りを見渡す。
影を感じた場所の近くから探すと、やっと見つけた。
「ーーーーーみーっけ。」
さてさて見物を…と思い、枝に座る。
商人の男は一本の木に向かって立っているだけ。
これだけ雑音がない場所でも声が全く聞こえてこないのは、余程の小声なのかそもそも話していないのか。
さすがの永海もおかしいと大勢を変えようとしたところ、どこからか声が聞こえて来た。
"貴方、あの時にその者を助けた人…よね。"
永海は咄嗟に後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
"私を探しているのかしら?無駄よ。貴方に私は探し出せない。"
また別の方向を見るが人影はおらず、それから鎖鎌を手に取り四方へ顔を向けるが人の気配はしない。
"嬉しいわ。まさか貴方の方から来てくれるなんて。"
それでも声が聞こえて来る。
どこだ、一体どこからーーーー。
"そんなに私がどこにいるのか気になるのかしら?私は…ここよ。"
永海の左足首に、地から伸びた蔓が巻きついた。
左足首を締め付けられる感覚に、永海はピンときた。
鎖鎌で蔓を斬り、その後も無数に迫るそれらを斬り刻みながら間合いを取るべく下がる。
が、自分が下がった分だけ蔓が迫って来る為に中々距離を空けられない。
前後方や左右だけでなく上や下からも蔓が迫り来るものだから、一瞬も隙を見せられない。
影伝いによる瞬間移動でこの場から離脱する方法もあるのだが、移動先の影を考える余裕が無い。
「ちっ…。」
少しでも動きを止めると四肢や胴体に巻きつこうとしてくる。
それを阻止しつつ、なんとか声の正体だけでも知れればと永海は応戦を続けた。
"貴方から、美味しそうな匂いがする。"
時折聞こえて来る誰かの声。
心理を乱す作戦なのだろうが、過去にまつわる内容でなければ精神面を保てる。
"貴方の生気、暗くて…歪んでいて…あぁ、1人だけ心を許している人がいるのね?"
言葉に永海の動きが止まる。
その隙に蔓が体に絡みつく。
ハッと我に帰る永海が切り離す。
"その気持ちを許せる人、そんなに特別なのね。その人の精気を吸い尽くしたら、貴方はどんな絶望を見せてくれるのかしら?"
永海の目の色が変わった。
「天定に手を出したら、俺が許さねぇからな…。」
"ふふふ…貴方のその強気な表情、もっと楽しみたいわ。"
ここから、永海の長い戦いが始まった。
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