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季節ネタ
2024/07 七夕(天定×永海)
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「そういえば、今日は7月7日か。」
とある街の、とある宿の一室。
星空が夜空一面に広がっている頃、肌を重ねてお互いを求めていた余韻に浸っていた天定が、ぽつりと漏らした。
「どうしたんだよ急に。」
「あぁいや、ふと思い出したことがあってな。」
隣でうつ伏せになり同じく余韻に浸っていた永海が、肘をつき上体を少しだけ浮かして天定を見る。
当の本人はというと、仰向けのまま顔ごと視線を窓の方へと向けていた。
天定が今どういう表情をしているのか。
見えそうでギリギリ見えない永海は、体の面を相手に向けて再び横になる。
「昔…、父上の部屋で読んだ本に、書いてあったんだ。」
天定が一人で話し出す。
永海は聞き役に徹した。
「遠い異国の地では、7月7日に天に祈りを捧げる風習がある…って。」
詳細はあやふやながらも縦長い紙に願い事を記し、叶うようにと祈りを捧げる内容だったと、天定は永海に伝える。
「永海。」
「ん?」
天定が窓から永海へ、顔を向ける。
「お前は、ずっと俺の傍にいてくれるか?」
眉を寄せつつも真剣な天定のその眼差しを、永海は近距離から見つめ返した。
「それは、天定の願い事か?」
永海の問いかけに、天定は間を数秒ほど空けてから小さく頷いた。
天定と同様に真剣な表情をしていた永海だったが、すぐにヘラヘラと笑う。
「ンなの、当ったり前だろ?」
「…永海。」
天定の表情が、一気に柔らかくなる。
「天定だって、俺を離さねぇでくれよな?」
ニタニタと笑いながら、次は永海が問いかけた。
天定は天井を仰ぎ、瞼をそっと伏せる。
「それは、永海の願い事と受け取って良いのか?」
「ああ。俺、ずっと天定の隣にいてぇんだ。」
天定は片手で目元を隠したかと思えば、永海の方へと体の面を向けた。
「決まってるだろう。」
天定は布団の中で永海の片手を持ち、そのまま自分の方へと誘導する。
そして口元まで持ってくると、天定はなんの躊躇いもなく彼の手の甲に唇を落とす。
「これから先何があろうと、俺から離れて行くな。」
囁かれるようにまっすぐ放たれた声に、永海は思わず視線をほんの少し逸らしてしまう、
こう言う時の天定を一言で表すなら、“ずるい”である。
思わず胸が熱くなってしまい、落ち着いてきたはずの顔や体の熱が上がってしまった。
「永海。」
永海は不意に名前を呼ばれ、思わず緊張してしまう。
天定に肩を押されて仰向けに寝かされたかと思いきや、天定が組み敷いてきた。
真っ直ぐで真剣で、でも温かくて優しく永海を見つめる。
「愛してる。」
外では星天が広がりシンと静まり返る、その一方。
天定と永海は、ずっと互いを求め続けた。
とある街の、とある宿の一室。
星空が夜空一面に広がっている頃、肌を重ねてお互いを求めていた余韻に浸っていた天定が、ぽつりと漏らした。
「どうしたんだよ急に。」
「あぁいや、ふと思い出したことがあってな。」
隣でうつ伏せになり同じく余韻に浸っていた永海が、肘をつき上体を少しだけ浮かして天定を見る。
当の本人はというと、仰向けのまま顔ごと視線を窓の方へと向けていた。
天定が今どういう表情をしているのか。
見えそうでギリギリ見えない永海は、体の面を相手に向けて再び横になる。
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永海は聞き役に徹した。
「遠い異国の地では、7月7日に天に祈りを捧げる風習がある…って。」
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「永海。」
「ん?」
天定が窓から永海へ、顔を向ける。
「お前は、ずっと俺の傍にいてくれるか?」
眉を寄せつつも真剣な天定のその眼差しを、永海は近距離から見つめ返した。
「それは、天定の願い事か?」
永海の問いかけに、天定は間を数秒ほど空けてから小さく頷いた。
天定と同様に真剣な表情をしていた永海だったが、すぐにヘラヘラと笑う。
「ンなの、当ったり前だろ?」
「…永海。」
天定の表情が、一気に柔らかくなる。
「天定だって、俺を離さねぇでくれよな?」
ニタニタと笑いながら、次は永海が問いかけた。
天定は天井を仰ぎ、瞼をそっと伏せる。
「それは、永海の願い事と受け取って良いのか?」
「ああ。俺、ずっと天定の隣にいてぇんだ。」
天定は片手で目元を隠したかと思えば、永海の方へと体の面を向けた。
「決まってるだろう。」
天定は布団の中で永海の片手を持ち、そのまま自分の方へと誘導する。
そして口元まで持ってくると、天定はなんの躊躇いもなく彼の手の甲に唇を落とす。
「これから先何があろうと、俺から離れて行くな。」
囁かれるようにまっすぐ放たれた声に、永海は思わず視線をほんの少し逸らしてしまう、
こう言う時の天定を一言で表すなら、“ずるい”である。
思わず胸が熱くなってしまい、落ち着いてきたはずの顔や体の熱が上がってしまった。
「永海。」
永海は不意に名前を呼ばれ、思わず緊張してしまう。
天定に肩を押されて仰向けに寝かされたかと思いきや、天定が組み敷いてきた。
真っ直ぐで真剣で、でも温かくて優しく永海を見つめる。
「愛してる。」
外では星天が広がりシンと静まり返る、その一方。
天定と永海は、ずっと互いを求め続けた。
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