神様の転生物語

kenzo

文字の大きさ
上 下
25 / 47
1章、ブラームス王国

流行り病

しおりを挟む
倉庫の中は綺麗に片付けられ広いワンフロアが形成されている。
そこには等間隔で並べられたベッドと間を遮る様に立てられたパーテーション。
恐らくベッドの数は50は在るだろう、なのに空きは殆どの無い。
これかなりヤバイ状況なんでは?!

「失礼、ゲインさんお見舞いの方です」
「はい、どうぞ」
パーテーションの内側から元気の無い返事が返ってきた。
「失礼します」
「邪魔するぞい」
パーテーションの内側に入るとそこには優しそうな、でも疲れきった虚ろな目の男性がベッドの脇に座っている。
そしてなにより目を奪われたのはベッドに横たわる女性の姿だった。
痩せ細り骨と皮だけと言う表現しか出来ない。
その顔は苦痛に歪み口からは絶えず小さな呻き声が漏れている。

「冒険者ギルド職員のエマです」
「あ、ギルドの」
依頼を出した時に二人は顔を合わせていたらしい。
「今日はどの様な・・・まさか、世界樹の・・・、って、そんな訳無いですよね」
一瞬だけ目に力が入ったゲインさんは直ぐにまた項垂れた。
「すみません、そちらはまだ進展は、
今日は紹介したい方が居てお連れしました」
ゲインさんが虚ろな目のまま僕を見る。
「そちらは?子供?いやご老人?」
不思議そうに見られる。
解せん、完璧な変装なのに。
「こちらは山に籠り数十年、修行に修行を重ね遂には賢者にまで上り詰められたお方です。
たまたまギルドに来られアナタの依頼を目にされ容態を確認したいとの仰せによりご案内しました」
ん、エマさんが僕の背中をツンツンしてる?
何?エマさんを見上げて首を傾げると、
「ん、んー」何?そのわざとらしい咳払い?
あ、あー、そう言う事ですね。
僕はそっと水の入った水筒を差し出した。
キンキンに冷えた水をどうぞ!
「違います。何か言えって事です」
「へ?あ、あーなるほど」
「すみませんゲインさん、長年山に籠ってたもので」
「い、いえ、ではそちらの方が妻の容態を見て頂けると」
「はい、少しでも可能性があればと。
あ、これは私が勝手にしている事なのでお金はいりません」
「は、はぁー、まぁそれなら、宜しくお願いします」
フーと息を吐いたエマさんは水を飲み干した。
結局飲むんかい!
「くーー!!」エマさんがこめかみを押さえる。あ、キーーンって来たんだ。
キンキンだったからね!
「スマンの、可能性の一つとでも思うてくれ、悪くなるような事はせん、それは約束しよう」
「は、はい、少しでも可能性があるなら」
うーん、ああは言ってるけど期待はしていないんだろうな。目に全く力が無いもん。
「取り敢えずは見せて貰うかの」
『レントゲンアイ』
説明しよう!レントゲンアイとは単なる透視である。X線は一切使わないクリーンな力なのだ。
うわ、これは酷い、うげ、内臓がボロボロだ。
でも何か、あれ?傷?火傷?何だろこれ?
腫瘍みたいなのとか壊死?とか腫れていたりとか?そんなのが見当たら無い?って言うか外傷じゃ無いのこれって?
「ちょっとエマさん、協力お願いします」
「え?あ、はい、どうすれば」
「じっとしていて下さい」
『スキャン』
続けてサナさんも
『スキャン』
そして
『比較、二つの差異を検出、但し個体差は除く』
やはり、傷と火傷、外傷のみだ。では
『異物検出、エマさんに無くてサナさんに有るもの』
うーん、寄生虫でも無い
いや、これは?何これ?魔力糸?なんでこんなのが?
ダメだ、分からない!
「どうですか」
うん?あ、エマさん
「状態は分かりました、ですが原因が分かりません。気になる事はあるのですが」
「そ、それは?」
お、ゲインさんが食い付いた。
「すみません、まずは治療をします」
『回復』
うん、傷は直った。
「今までも治療士の方が治療魔法を掛けてくれると楽になる見たいなんです。
しかし時間が経つとまた苦しみ出して」
確かに今のサナさんは穏やかな顔をしている。
「あの、分かった事とは?」
ゲインさんが尋ねてきた。
「おや、お客さんですか」
ん?誰? 
「あ、先生、こちらは賢者様で妻の容態を見て頂いてます」
「け、賢者様?」
うわ、めっちゃ胡散臭そうだ。
「うむ、おぬしが治療士殿かの?」
「ええ、そうです。で、その賢者様がここで何を?」
そんな睨まないで、見た目はお爺さんでも心は5才児なんだから、もうー。
「すみません、私は冒険者ギルド職員のエマと申します。この度縁がありこちらの賢者様を紹介させて頂きました」
「はぁ冒険者ギルドの」
「はい、勝手な事をして申し訳御座いませんが何かお力になれればと」
「そうでしたか、いや、失礼しました。
それで賢者様の見解は?」
「少し席を外そうかの」
治療士さんとエマさんを伴って僕達は外に出た。

「して治療士殿はどう見ておる」
「私達は解らない、としか答えるられません。体内にダメージを受けているのは解るのですが原因が全く。伝染病を警戒してますが病気かどうかも解らないのです」
うん、見解としては同じかな。
「唯一回復魔法を掛ければ楽になるのですが直ぐにまた・・・イタチごっこです」
「あの、賢者様は解った事があると?」
「ほ、本当ですか」
「まぁ原因まではまだ解っておらんがな」
「では解った事とは?」
「うむ、あれは病気では無い」
「病気で無い?」
「うむ、あれは内臓への外傷じゃな」
「外傷?それが病気なのでは?」
「いや、こちらのエマさんとサナさんの体内を比較したのだが傷と火傷以外に違いが無かったのじゃ」
「それはどういう・・・」
「体内に病気の原因があれば、健康なエマさんとの間に何かしらの差異が発生する。腫れていたり、化膿していたり、居る筈の無い虫が居たりな。だが無かった、勿論健康状態の差はあるがな」
「つまり?」
「外傷以外は弱ってはいるが健全な内臓じゃ」
「そんな事が」
「外傷じゃから、回復魔法で楽になる。しかし再び何らかの方法で外傷をおう、まさにイタチごっこじゃな」
「何らかの方法ですか」
「うむ、それが解らん」
「賢者様、先程気になる事があると」
ん、エマさん良く覚えてるね。
「気になる事?それは」
「うむ、サナさんの身体から魔法の・・・」
「ガーーー!」「ギャーーー!」「グガーーー!」
「こ、これはまた来たか、すみません話しはまた後で。取り敢えずは回復魔法を」
「エマさん!」
「はい、行きましょう」
僕達は倉庫に急いだ。

「キャーーー!」「イタイイタイ・・・」「ギャーた、助けて!」「ぐっ!もう、もう殺してくれー」
阿鼻叫喚、まさに地獄だ。
くそっ、何だ、何なんだ!ここに居る全ての患者が叫んでいる。
どういう事だ、良く見ろ、感じろ、何か何か有る筈なんだ。
そうだ、あれは?魔力糸は? 
これは!
「そうか解った!」
「え、解ったんですか?」
「説明は後です。治療士さんは?」
「治療士さん、あ、あそこの患者の所に」
「行きます」

「治療士さん」
「アナタは、すみません今は・・・」
「解りました原因が!」
「な、それは」
「説明は後です。僕が言ったら治療魔法を掛けて下さい」
『魔力糸限定視認』
良しこれだ。
魔力糸を掴む。
『切断』
「今です。治療魔法を」
「は、はい。『癒しの力を与えたまえ、ハイヒール』」
お、遅?!余計な事言って無いで早く魔法使えばいいのに。
「次行きます」
さぁ、どんどん行きますか!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

処理中です...