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しおりを挟む一回目の講義が恙無く終わり、その後も二度程交換留学生の講義を受けた頃。
王家主催の夜会が開催される日になった。
「ブリジット。待たせてすまない……!」
「あ、ルーカス様。こんばんわ」
ブリジットが夜会用のドレスに身を包み、邸のエントランスでルーカスを待っていると、バタバタと慌ててルーカスがやって来た。
ブリジットの姿を見たルーカスはぶわっ、と頬を赤く染め、うろ、と視線を泳がせている。
今日のブリジットは、普段は下ろしている髪の毛を編み込みサイドに流しており、ドレスはルーカスの瞳と同じ淡いパープルの色。
ふわりと広がるドレスの裾は繊細な刺繍で飾られており、普段よりも少しだけ露出の多いブリジットに、ルーカスはあわあわとしているようで。
「よ、良く似合っているブリジット……とても綺麗だが、少し露出が多くないか……?」
「ありがとうございます、ルーカス様。ルーカス様もとっても素敵です。露出、ですか……? これでも一番少ない物にしたのですが……」
「そうか……あまり一人にならないようにな……俺が傍に居ない時はアルテンバーク侯爵や、友人と必ず一緒にいてくれ」
「ふふふっ、分かりました」
ルーカスに手を差し出され、ブリジットは自分の手を重ねる。
あの一件から、ルーカスは少しづつ自分の気持ちを素直に口にするようになってくれていて。
婚約者相手とは言え、甘い言葉を口にする事をとても恥ずかしがるルーカスがそれでも精一杯自分の気持ちを伝えてくれる姿が何処か可愛らしく見えてしまって、ブリジットはついつい声を漏らして笑ってしまう。
異性を褒め慣れていないルーカスが真っ赤になりながらブリジットを一生懸命褒めてくれる姿は、ブリジット自身もこそばゆい気持ちになるがとても嬉しい。
夜会会場である宮殿に向かう道中、ルーカスは上がってしまった体温を下げるように何度も自分の顔を手のひらで仰いだ。
宮殿に向かう馬車の道中。
自分の顔を仰いでいたルーカスは思い出したかのように「あ」と小さく声を上げてブリジットに顔を向けた。
「そう言えば……ブリジットの学年も、交換留学生の講義を受けたんだよな? どうだった?」
「そうですね……。魔法、と言うものをとても分かりやすく丁寧に説明して下さって、理解しやすかったです。それに、魔法を実際発動してくださって……とっても綺麗な氷の花を創り出して、感動しました……!」
「魔法を発動……?」
興奮したように講義の内容を口にするブリジットに、ルーカスは首を捻る。
ルーカスは騎士団に所属しているお陰か、各学年に知り合いが多い。
ブリジットとは違う学年の学院生達はまだ魔法を発動した所を実際見た事が無いらしく、そろそろ実践で発動してくれるだろう、と話をしていた。
ルーカスの学年も同様で、まだ実戦も行われていないし、魔法の発動を目にした事は無い。
ルーカスの学年でもそろそろ実戦が行われるだろう、と噂になっているがブリジットの学年は初回に魔法を実際発動したと言う。
「あ、あれ……? ルーカス様達はまだ魔法の発動は……?」
「ああ。まだ見た事は無いな……ブリジットと違う学年の知り合いもまだ見た事が無いらしい」
「まあ、そうだったんですね……。どうしてかしら……たまたま……?」
「……もしかして、ブリジットの学年の講義の担当は……」
ルーカスはふ、とある事を思い至り、ブリジットに向かってそう聞く。
するとルーカスが予想していた通り、ブリジットがある名前を口にした。
「担当して下さったのはノーズビート卿です」
「……やっぱり」
ブリジットの口からイェルガの名前が出てきて、ルーカスは苦々しい気持ちを抱いた。
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