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しおりを挟む交換留学生がやって来る日。
その日はブリジット学院生達は学院内にある講堂に集められていた。
隣国から魔法士達が交換留学生としてやって来る、と言う事は既に噂になっていて。
講堂に集められた学院生達は壇上をわくわくとした気持ちで見詰めている。
数名の教師達が登壇し、隣国の交換留学生達が今日から学院に通う事を報告して、留学生達が姿を現す。
ブリジットと同じ学年の学院生達もきゃあきゃあと楽しげに話しながら壇上を見詰めていて。
ブリジット本人も、友人のティファと一緒に壇上を興味深く見詰める。
「あら。交換留学生は四人なのね、ブリジット」
「そうみたいね。もっと人数が多いのかと思っていたけど……男性二人、女性二人みたいね。私達もお話する機会があるのかしら……」
壇上に並んだのは四人で、男女二人づつ計四人の魔法士がやって来てくれたらしい。
興味深くブリジットが壇上を見詰めていると、キラキラと輝く金髪の男性がふ、とブリジットの居る方向に視線を向けたような気がして──。
金髪の男性の不思議な黄緑色の瞳とパチリ、と目が合ったような気持ちになる。
「……えっ」
「ブリジット? どうしたの?」
ブリジットが小さく声を漏らした事に気付いたのだろう。
隣に居たティファが不思議そうに声を掛けてくる。ティファに何でもない、と告げてからブリジットは壇上に視線を戻したが、先程目が合ったと感じた金髪の男性は既にブリジットの居る方向を見ておらず、ブリジットは気の所為だったかしら? と首を傾げる。
「それにしても……。魔法士の方達って皆あんなに綺麗なの? 女性も、男性も皆綺麗じゃない?」
「え? そうかしら……?」
ティファがうっとりと目を細め、頬を染めている様子にブリジットは改めて壇上に居る魔法士達を見る。
「……確かに、綺麗な顔をしているとは思うけど……」
「あら、ブリジットは美しい男性より男らしくてかっこいい男性の方が好きかしらね? 婚約者様みたいに?」
「ちょ、ちょっとやめてよティファ……!」
揶揄うようなティファの言葉に、ブリジットは薄らと頬を染めて肘でつつく。
確かに、魔法士の女性達も男性達も「綺麗」と言うのがしっくりとくる。
ブリジットも確かに男性の容姿は綺麗で、令嬢達に人気の「かっこいい男性」だと言う事は分かるのだが、如何せん自分の好みの顔では無い。
(私はもっと、男らしくて……凛とした男性の方がいいわ……)
そう考えているブリジットの頭に、ルーカスの顔がぽん、と浮かんでしまってブリジットはぶんぶんと頭を振る。
(べっ、別にルーカス様の事をかっこいい、とか……いえ、確かに真剣な表情をしている時、鋭い視線をしている時はかっこいいけど……っ)
ブリジットが余所事を考えている内に、交換留学生の紹介が終わってしまったのだろう。
学年が違うため、離れた場所に居たルーカスがブリジットを見付けてぱっと表情を輝かせて近付いて来る。
「──ブリジット! ……、? どうした? 頬が赤いが熱でもあるのか?」
今まで考えていたルーカスの顔がひょい、とブリジットの目の前に現れて、ブリジットはぶわりと頬を染めると「なんでもありません!」とついつい大きな声で言ってしまった。
「交換留学生としてやって来た、イェルガ・ノーズビートだ。よろしく頼むよ」
にっこり、と笑顔で告げたのは金髪で黄緑色の瞳を持つ男性で。
ブリジットの隣の席に座っているティファは「やった!」と小さく声を上げて拳を握っている。
そんなティファにブリジットは苦笑しつつ、イェルガ、と自己紹介した男性を見る。
(あの男性……、壇上で目が合ったと感じた男性ね)
それにしても、とブリジットは少しだけ考え込む。
イェルガの声に何故か聞き覚えがあって、何処かで会った事があるのだろうか、と不思議に思っているとブリジット達学年を受け持つ教師が説明を始めた。
魔法士達は週に二回、魔法学について講義をしてくれるらしい。
通常は魔法学を受けられるのは特別科に通う、魔力を持った学院生達だけなのだが、せっかく交換留学生としてやって来たのだ。
魔法をもっと広く多くの人に触れて、理解してもらいたい、と言う事で週に二回、講義を行ってくれるらしい。
ブリジット達の学年は火の曜日と、土の曜日。
その日にはイェルガに魔法学の事で質問や、魔法を体感する事が出来ると言う事らしい。
ブリジットは以前から興味があった魔法に触れるチャンスが巡って来た事にキラキラと瞳を輝かせながらイェルガを見詰めていると、再びぱちり、とイェルガと目が合った。
「──っ、?」
「……」
目が合った瞬間、イェルガは嬉しそうに、だが何処か陶酔するように瞳を細めて微笑んだ。
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