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しおりを挟む光を帯びて輝くシルバーの髪色を揺らしながら、ライトブルーの瞳を心配そうに揺らめかせユリナミアの元に急いで駆けて来るのはクロノフで。
レイチェルはクロノフの姿にぱあっと表情を輝かせてクロノフに声を掛ける。
「クロノフさまぁ! おはようございますっ、一緒に屋内に向かいましょうっ?」
はしゃいだ声を上げ、婚約者であるユリナミアの目の前でクロノフを誘うレイチェルに、呆れたような溜息を隠す事が出来ずユリナミアは二人から視線を逸らす。
(もう巻き込まれるのはごめんよ)
自分が、クロノフの婚約者で居る限りこう言った事は常に起こりうる。
一々レイチェルに構い、時間を無駄にしたくはない、とユリナミアがそのまま建物の中へと向かおうとした所で自分の腕を掴まれる。
「──ユリナミアっ、まだ万全では無いだろう? もっと早くに報せをくれれば迎えに行ったのに……」
「ク、クロノフ様……?」
クロノフは焦った表情でユリナミアの腕を掴んでおり、声を掛けてきたレイチェルの横を素通りして来たようだった。
レイチェルは、まさか自分が素通りされるなど思わなかったのだろう。
クロノフの目に止まらなかった事で羞恥に顔を真っ赤に染め上げている。
「ク、クロノフさまぁ! ご挨拶させて頂いたのに悲しいですわぁ……」
それでもめげずにとととっ、とレイチェルはクロノフに駆け寄り、今度はクロノフの目の前に回り込む。
「──え、あぁ……すまないねレイチェル嬢。いたのかい? おはよう」
クロノフは驚いたように瞳を見開き、レイチェルに挨拶を返す。
本当にレイチェルが目に入っていなかったのだろう。瞳が本当に驚きに見開かれていた事から、ユリナミアは珍しい事もある物だ、と首を傾げる。
「──姉さん……」
ユリナミアの隣に居たアヴィがこそり、と小さく話し掛けて来る。
どうしたらいいのだろうか、とアヴィも戸惑っているのだろう。
クロノフがやって来た事で、ユリナミアを託したいがでも側にはレイチェルが居る。
先日のようにまたレイチェルが転んだりしてそれに姉のユリナミアが巻き込まれないだろうか、と心配しているのだろう。
「アヴィ、ありがとう。……ここから先は殿下に送って頂くわ。ここまで送ってくれてありがとう」
「──分かり、ました。お気を付けて下さいね、姉さん」
ユリナミアがアヴィの頭を撫でるのを、ユリナミアの腕を掴んでいたクロノフは感情の読めない瞳で見詰めていたが、その視線に気が付いたアヴィがクロノフに視線を向けると、クロノフはぱっ、といつものように微笑みをその顔に浮かべる。
「……王太子殿下、姉をよろしくお願い致します」
「ああ。任せてくれ。ユリナミアは私が教室に送るよ」
にこり、と笑顔を浮かべてクロノフはアヴィに告げるとユリナミアの手を取り歩き始める。
目の前に回り込んで居たレイチェルに、クロノフはそれ以上話し掛ける事はせずにユリナミアを気遣いながら横を通り過ぎる。
レイチェルを無視して進むクロノフにユリナミアが驚き、戸惑いつつクロノフに促されながら進む。
クロノフからすげ無くされて、後方に放置されてしまったレイチェルが「はぁ!?」と怒りの声を上げているのがユリナミアには聞こえてしまい、ユリナミアは小さく溜息を吐き出した。
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