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しおりを挟む「謀反……?事故死……?」
ウルミリアは信じられない物を見たと言うように目を見開き、自分の目の前に居るジルへと視線を向ける。
ウルミリアから視線を向けられたジルは眉を下げると辛そうな表情を浮かべた。
「──公的な歴史書では無く、公爵家の歴史書なので公爵家の主観で綴られておりますが、嘘を書く必要も無いと思いますので……実際に起きた事だと思います……」
「そう、よね……。公爵家は公爵家で独自に自分達の家門の歴史を綴った物を残していこうと行動したのね、きっと。この先、生まれてくる次期公爵家の当主達に向けてこの歴史書を遺したんだわ」
──けれど。
「公爵家当主と夫人を事故死に見せ掛けて葬ったと言うのは惨すぎるわ」
「──力を付けて行く公爵家に、王家は慌てたのでしょうね。そして、慌てすぎて愚かな道を選んだ」
突然両親が亡くなり、公爵家の子供達はどれだけの衝撃を受けたのだろうか。
どれだけ嘆いたのだろうか。
どれだけ苦境に立たされたのだろうか。
歴史書によれば、まだ幼かった公爵家嫡男の後援として王家から命を受けたのが。
「──ここで、またあの家々が出てくるのね」
テオドロンの過去の恋人達の家門。
「幼い嫡男をいいように操り、嫡男が成長するまで公爵家の力を削ぐようにその家門の当主達は公爵家の権力や地位を悪用したのね」
このような事をされ、成長した嫡男がこの歴史書を見つけた時どのような気持ちになっただろうか。
そして何故、公爵家は今まで王家にこのような仕打ちを受け続けたのに歯向かう事をしなかったのだろうか。
「──変、よね……。公爵家の力があれば王家に楯突いて、全てをひっくり返す事など容易いと思うのよね……」
ウルミリアの言葉に、ジルも同じ考えのようにこくりと頷く。
「ええ……。あれだけの力──権力を持ちながら、何故王家にやられっぱなしとなっているのか……そこが不可解ですね」
「そうなのよね……。でも、今回テオドロン様が居なければ、公爵家がどんな状況で、王家がその公爵家にどんな仕打ちをしていたのか分からなかったわ。公的な歴史書には勿論いい事しか記載されていないものね」
ウルミリアとジルが歴史書を確認している内に、父親と兄は手記を確認し終わったのだろう。
こちらへと近付いて来ながら、ウェスターがジルに向かって声を掛ける。
「──ジル。お前が見た、と言う地下牢だがどれくらいの間使用されていない感じだった?」
「……?そう、ですね……」
ウェスターの言葉に、ジルはあの通路の最奥にあった部屋の事を思い出す。
「出して」と茶色のような黒いインクで書かれた言葉のかすれ具合から見て、この場所が使われていたのはそこまで昔でない事が分かる。
周囲に散らばっていた残骸物からも、その残骸から大昔に使用されていたような物は無く、比較的現代的で今でも使用されているような物が朽ちて散らばっていた。
その事から、あの地下牢は数十年前、もしかしたら数年前までは使用されていた可能性がある。
その事を考えながら、ジルはウェスターに向かって慎重に言葉を紡ぐ。
「──比較的、最近使用されていた、と言われても納得出来る……そういった状態でした」
「──そうか」
ジルの言葉に、ウェスターは「やっぱりな」と小さく呟くと考え込むように自分の顎に手を当てる。
ジルの言葉と、ウェスターの言葉にウルミリアも、父親も何が言いたいのか言葉にせずとも察せれた。
もし、あの地下牢がここ数年……十数年の間に使用されていたと言う事であれば「そう言う事」だろう。
「……テオドロン殿には、他に姉上や弟、妹達はいない、か……?」
ウェスターの言葉に、父親が答えるように返答する。
「──公的な情報としては残っていない。テオドロン殿は現公爵家の一人息子だ」
嫌な沈黙が、室内に落ちた。
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