冷酷廃妃の誇り-プライド- 〜魔が差した、一時の気の迷いだった。その言葉で全てを失った私は復讐を誓う〜

高瀬船

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「──ソニア……? ソニアって、あのソニア妃の事……? いえ、違うわよね? だってここに描かれているソニアと言う女性とは全く似ても似つかないじゃない……?」

 クリスタは動揺し、隣に居るギルフィードやキシュートに顔を向けて同意を得るようにして話し掛けるが、二人も動揺しているようで。

 クリスタに視線を向けられたギルフィードの瞳は動揺に揺れ、キシュートはじっとある一点を見詰めている。

「……画家を確認しよう」

 キシュートがぽつり、と呟きギルフィードに視線を向ける。

「画家を……? ──! ああ、なるほど……」

 キシュートの言葉の意味を汲んだのだろう。
 一瞬訝しげに眉を寄せたギルフィードだったが、直ぐに心得たとばかりに頷き肖像画に向かって自分の腕を手のひらを向けるようにして持ち上げた。

(なるほど……画家ね。確かに、キシュート兄さんの言う通りこの肖像画を描いた画家の名前を確認すればどの時代に生きている画家なのか、分かるわ……それにタナ国でも肖像画の完成日を画家の名前の隣にサインをする事が行われていれば……)

 どの時代に生きている「ソニア」なのかが分かる。

 クリスタが再び肖像画に視線を向けた所で、ギルフィードが魔法を放った。

 ギルフィードが魔法を発動した瞬間、まるで空気を斬り裂くような音が聞こえた後、クリスタの頭上にあった肖像画を掛けていた壁がごそりと削り取られた。
 そして削り取られた壁の一部と共に肖像画が落下してくる。

 その落下地点にはいつの間に移動していたのだろうか。ギルフィードの護衛達が既に待ち構えていて、落下した肖像画を危なげなく受け止めた。

「──殿下」
「ああ、ありがとう」

 護衛の一人がそのままギルフィードに肖像画を渡し、受け取ったギルフィードがクリスタとキシュートを手招いて三人で肖像画を覗き込む。
 落下した衝撃で額縁は破損しており、額縁を難無く取り外したギルフィードは中から肖像画を取り出した。
 そして画家の名前が描かれている場所を見付けた三人はその名前をじっと見詰めた後、誰からとも無く呟いた。

「──今も尚、存命している画家の名前だ……」
「……日付けも数年前だわ……」
「……ディザメイアに居るソニアとは一体誰だ」

 この肖像画に描かれている女性がタナ国王女であるソニア王女と言うのであれば、クリスタ達が知るあのソニアは一体誰なのか。
 三人が難しい表情で顔を見合せていると、室内を見て回っていた護衛が声を上げた。



「──! この奥にも部屋が続いております!」
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