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翌日。
昨日アイーシャ達は半壊してしまったルドラン子爵邸では過ごす事が出来なくなってしまったので、アイーシャとウィルバートはクォンツのユルドラーク侯爵邸に一時的に身を寄せさせてもらった。
クォンツの父、クラウディオはマーベリック達とは別行動を取っており、もし万が一王都内にエリシャ達を手助けした邪教の一員が現れた際にクラウディオが拘束する手筈となっていたが、クォンツやマーベリックの心配を他所に、邪教の者は王都内に現れる事は無くエリシャと邪教の男を無事ルドラン子爵邸で捕らえる事が出来た。
──邪教の男の身柄を捕らえる事は出来なかったが、教団の一員を不本意ではあるが対処する事が出来たのでそこは目をつぶる。
アイーシャとウィルバートを快く迎え入れてくれたユルドラーク侯爵とクラウディオに二人はお礼を告げ、客間で休ませてもらっていた。
寝付けないかもしれない、と思っていたが意外と疲労が蓄積していたらしくアイーシャとウィルバートはそれぞれ与えられた客間のベッドに横になるなりすんなりと眠りに落ちてしまったのだった。
そして翌朝早朝。
早い時間に目が覚めたアイーシャは簡単に着替えを済ませると窓の外に見知った姿を見つけて、客間を後にした。
「──クォンツ様」
アイーシャは客間の窓から見える庭園にクォンツの姿を見付けた為、庭園へとやってきた。
軽く剣を振っていたのだろう。
先程までそうしているのが見えたが、アイーシャがクォンツの元に辿り着いた時にはもう終わったのだろうか。
長剣を鞘に入れ、戻る準備をしている最中だった。
アイーシャの声に気が付き、クォンツが振り向くと邸の方向からアイーシャが近付いて来る。
「ああ、アイーシャ嬢おはよう。昨夜は良く休めたか?」
「おはようございます。はい、しっかり休ませて頂きました。ありがとうございます」
「それなら良かった。アイーシャ嬢は結構魔法を発動しただろう? 疲労が蓄積してたと思うからな」
「確かに……昨日は今までで沢山魔法を使ったのでちょっぴり疲れてしまいましたが、こうしてユルドラーク侯爵邸に迎え入れて頂きありがとうございます」
アイーシャはそこまで言葉を紡ぐとクォンツに向かってぺこりと頭を下げる。
思えば、学園を早退した日。
あの日からルドラン子爵家で自分の居場所が無くなり、義父と義母からの暴力から匿ってくれていた。
感謝してもし切れない、とアイーシャは再び深々と頭を下げてクォンツにお礼を告げたのだった。
アイーシャとクォンツが邸に戻ると、朝食の準備が出来たのだろう。
食堂に既に皆が集まっているらしく、クォンツは着替える為に一旦アイーシャと別れ、アイーシャはそのまま食堂に向かう。
既にクォンツの母、ユルドラーク侯爵もクラウディオも席についており、アイーシャは二人に挨拶をするとこれまた既に席に着いていた自分の父親ウィルバートの隣に腰掛ける。
少しだけ遅れてやって来たクォンツと、彼の妹であるシャーロットも遅れて食堂に姿を表し、皆が揃った所で朝食を取り始める。
今日は、朝食が終わった後マーベリックから城に呼ばれている。
アイーシャとウィルバート、クォンツは朝食を済ませると急いで登城の準備にかかる。
恐らく、昨日の件の再確認と、エリシャについて、そして未だに逃げているケネブについて話すのだろう。
エリシャを捕らえた事は僥倖だが、大元のケネブの居場所をエリシャに吐かせなければならない。
アイーシャは今日もまた長い一日になりそうだ、と心の中で呟いたのだった。
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