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しおりを挟むアイーシャの言葉に、マーベリックは思ったよりも低い声が出てしまい、その硬い声音にアイーシャが驚いたような表情を浮かべる。
「──ああ、すまない……。ルドラン嬢、その話もう少し詳しく聞いてもいいだろうか……?」
アイーシャに近付きながらマーベリックはそう話し掛けた後「場所を移そうか」とアイーシャとリドルに告げた。
マーベリックの言葉に頷いたアイーシャとリドルは、蔵書室から程近い客間に移動し、ソファに腰を下ろしていた。
室内にはアイーシャ、リドル、マーベリックとマーベリックの護衛一人が同席しており、護衛は部屋の扉付近に控えている。
「夜遅い時間だと言うのにすまないな、ルドラン嬢。先程貴女が話していた魔力が豊富な場所、とは……?」
「は、はい……。私自身も詳しくは分からないのと、幼少期に父から聞いた事ですので正確では無いのかもしれませんが……」
アイーシャは、昔自分の父親であるウィルバートに話して貰った事を思い出しつつ、リドルとマーベリックに説明する。
ウィルバート曰く、あの辺りの山中には魔力が豊富な箇所が何ヶ所かあるらしく、その中でも一際魔力が豊富な土地があるらしい。
その土地は、とても美しく通常では有り得ない程の美しい光景が広がっている、と言う。
「──花畑が好きな母の為に、父は探していたのですが……結局そのような場所を見付ける事は出来ず……」
アイーシャが眉を下げながらそう告れば、マーベリックは考え込むように自分の口元に手を当てている。
「魔力量が豊富は場所……その付近で魔法により閃光が迸った……やはり何かありそうだな……。リドルの言う通り、私の一存で強行するには些か不安が残る……。やはり一度陛下へ報告し、後日改めて探索隊を編成するか……」
「ええ、殿下。その方が宜しいかと」
マーベリックの言葉に、リドルは安心したように言葉を紡ぐ。
マーベリック自身も安全を確保してから再び山中へ確認しに行った方が良い、と決断した。
「──よし。では明日、早速王都へ一度帰還しようか。……ルドラン嬢も慌ただしくしてしまいすまないな。今日はこの辺りで解散とし、明日王都へと戻ろうか」
「いえっ、とんでもございません……! 明日王都へ戻られるとの事、かしこまりました。出立の準備を済ませておきますね」
「ああ。よろしく頼むよ」
マーベリックはにこり、とアイーシャに笑顔を向けるとソファから腰を上げる。
もう、大分遅い時間になってしまった。
アイーシャを休ませ、マーベリック達自身にはまだ指示をする事が残っている。
「では、ルドラン嬢。明日の正午に出立としようか。……朝食を取った後、邸の玄関で」
「かしこまりました。色々とありがとうございました、殿下」
「いや。こちらこそ有益な情報を数多く貰えて有難い。礼を言おう」
マーベリックはアイーシャがソファから立つのを待ち、アイーシャを先に部屋から退出させると、遠ざかって行くアイーシャの背中を見つめながら隣のリドルにぽつり、と話し掛ける。
「リドル、あの二人は一旦後回しだ。これ以上やってしまえば命を落とす可能性がある。……あの男を止めるよう告げて来てくれ」
「かしこまりました、では俺はそれを告げた後、そろそろ休ませて頂きますよ」
「ああ。私もそろそろ休もう……明日以降、馬車を飛ばし急ぎ王都へと戻らねば……」
ケネブ・ルドランとエリシャ・ルドランの処遇も決めねばならんしな、とマーベリックは欠伸を噛み殺すような表情を浮かべるとリドルが護衛に対して言伝を行っている場面を見て、自分も部屋へと戻る為、扉の方へと足を向けたのだった。
アイーシャ達が王都へと戻る事になり、アイーシャが一旦戻るルドラン子爵邸では、真っ青な表情でベルトルトがアイーシャが戻るのを今か今かと待っていた。
アイーシャはベルトルトが子爵邸に居るなどとは知らず、マーベリック達と別れた後、自室に戻った後王都へと戻る支度を急いで行った。
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