【完結】お前なんていらない。と言われましたので

高瀬船

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 牢番は先程衛兵が出て行ってしまった方向へ視線を向け、困ったように眉を寄せた。

「だ、大丈夫かご令嬢……」
「──けほっ、けほけほ……っぅ……っ」

 口内に詰め込まれた布が苦しいのか、それとも詰まってしまったのだろうか。
 牢番は外すな、と言われていた口封じの布をどうしようか、と視線を彷徨わせる。
 衛兵が「口封じの布」と呼んでいた事からこの罪人は言葉を使わせる事を良しとしていない事が分かる。
 だが、咳き込み、布が詰まっているのであればこのまま放置していては命に関わる可能性すら出てくる。

「──あぁ……っ! もう……!」

 牢番は自身に精神耐性を増幅させる魔道具を装着するとそれに魔力を流し、効果を発動させた。

「いいか、ご令嬢……! 口封じの布を取ってやる……! こちらに来い……! だが妙な真似はするなよ……!」

 牢番は鉄格子を挟んだ場所でエリシャを呼び、手招きをする。
 妙な真似をする事は無いだろう、と言う事が分かるが万が一の事もある。
 牢番はちらり、とエリシャの両手首に視線をやり確認すると、しっかりと魔力封じの手枷が発動している事を確認してよたよた、と歩いて近付いて来るエリシャを鉄格子の所でそわそわとしながら待つ。

 もし、衛兵が戻って来てくれれば直ぐに確認出来るのに、と思いながら牢番は衛兵が戻って来るのをまだかまだか、とチラチラと入口を確認しながら待った。





◇◆◇

 マーベリックは、数人の衛兵と共に捕らえたケネブ、エリザベートの元へと向かう。
 一体どんな理由でエリシャに消滅魔術ロストソーサリィの魔法を覚えさせて覚えさせた魔法でどのような事をさせるつもりだったのか。
 物によっては国にとって甚大な被害を被る種類の魔法もある。

 厳しく追求しなければ、とマーベリックは表情を引き締めて二人の元へと向かった。





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