【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船

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 コリーナ達を見送った後、今度は戻って来たオースティンとオルファを交えて四人で話をする事になった。

 オースティンの足の怪我の事もあり、邸の玄関から程近いサロンへと向かう事にする。
 オルファとリオルドに体を支えて貰いながらサロンへ移動し終えると体を落ち着かせるとオースティンが徐に唇を開いた。

「──リスティアナ。陛下に報告をしたのだが、オルファはこの家の跡継ぎでは無くなる」
「……えっ、!?」

 あっさりと衝撃的な事を告げられて、リスティアナはついつい素っ頓狂な声を上げてしまう。
 直ぐにはしたなかった、と口元を片手で覆ったが、出した声はしっかりとリスティアナ以外の三人に聞かれており、オルファはリスティアナの反応に「そうなるよな」と苦笑し、父親のオースティンは「まあ落ち着け」とリスティアナに向かって声を掛けたあと、何故かちらりとリオルドへ視線を向ける。
 いつも冷静沈着であったリスティアナの態度が年相応に崩れた事に、リオルドはリスティアナの反応に僅かに頬を染めている。

「オルファの元婚約者の伯爵家が、此度の一件に僅かではあるが関わっていた。──僅かでも、叛逆を企てていた家と、我がメイブルム侯爵家の縁を紡ぐ訳にはいかぬ」
「そ、そうだったのですね……それは……確かに……。ですが、お兄様は……」

 リスティアナにちらり、と視線を向けられたオルファは肩を竦めて言葉を返す。

「まあ……。伯爵家のご令嬢はその一件に関わってはいなかったから……、可哀想ではあるんだが……。仕方ない。元々政略的な婚約だったしな」

 オルファは気まずそうに後頭部をかくと、視線を外す。
 政略的な婚約で、そのような間柄だったとは言ってもお相手の伯爵令嬢はオルファに想いを抱いていたように見えるし、オルファ自身も多少情は抱いていただろう。
 伯爵令嬢は関わっていなかったと言う事なので、ご破談になってしまった事はとんだとばっちりだろう。

 リスティアナは相手の令嬢の心中を察すると胸に苦い物が込み上げる。

「──あ、でも……。ですが、それでご破談になったとは言え……、何故お兄様が跡継ぎでは無くなるのですか……?」

 リスティアナははっとしてオースティンに視線を向けると、オースティンはオルファにちらり視線を向けてからリスティアナに視線を戻す。

「オルファは、ウルム国の第四王女の元へ行く事が決まった……。あちらで第四王女様と面識があり、……オルファを大層気に入って下さったようだ」
「──ウルム国の王女殿下に……!?」
「ああ。ティシア様の下の妹御であられる。年もオルファの一つ下の十八歳だ。オルファはウルム国で公爵位を授かり、王女殿下は公爵夫人となる」
「ちょ、ちょっと……お待ち下さい……」

 兄の婚約の破談だけでも大きな事柄なのに、ウルム国で新たに爵位を授かり、王女殿下を妻に、などどうしてそうなってしまったのか、とリスティアナが混乱していると、今まで黙って話を聞いていたリオルドがぽつりと言葉を紡いだ。

「そう、なると……。メイブルム侯爵家の跡継ぎが居なくなり……リスティアナ嬢の夫が……?」

 リオルドの言葉に、オースティンは口元をゆるゆると笑みの形に変えるとゆったりと頷いた。

「──ああ。どうにも、ヴィルジール殿下はティシア王女殿下と婚約を結んだ今も尚、リスティアナを諦めていないように見える。だが、リスティアナがメイブルム侯爵家の跡継ぎである夫を迎える必要が出てくれば、ヴィルジール殿下もやっと諦めて下さるだろう。……愚かにも、あの方はリスティアナを第二妃にどうにか迎えようとしているらしいからな」
「……っ、な!? まだ、そのような事を……っ」

 ヴィルジールの諦めの悪さに、リスティアナが呆れたように言葉を返す。

「そうだろう。そもそも、第二妃などウルム国のティシア王女殿下が許す筈が無い。そもそも……我が家をこれ以上王族の内輪揉めに巻き込んで貰いたく無い。巻き込まれぬ為に……リスティアナには新しい夫候補の婚約者が必要だ」
「婚約者……ですか……」

 オースティンから告げられた言葉に、リスティアナは無意識に近くに居たリオルドについつい視線を向けてしまう。
 それは、リオルドも同じだったようで。リスティアナに視線を向けていたリオルドは、リスティアナと視線が合い、きゅっと唇を噛み締めるとリスティアナから視線を外してオースティンへと顔を向けて唇を開いた。

「……メイブルム侯爵……、リスティアナ嬢の婚約者候補は、もう……決まっておられるのですか……?」

 眉を寄せ、何処か苦しげにそう言葉を紡ぐリオルドにオースティンはゆるりと首を横に振ってリオルドの言葉に否と返す。

「いいや。何分、オルファの一件も急な事だったからな。まだ何も決まっていない」

 何処か挑戦的にリオルドに視線を向けるオースティンに、その視線を受けたリオルドはこくり、と喉を鳴らすとオースティンに向かって背筋を伸ばし、姿勢を正すとしっかりと視線を合わしたまま唇を開いた。

「──リスティアナ嬢の、婚約者がお決まりではないのであれば……条件をお教え下さい。……好いた女性が、このまま誰かの物になるのを指を咥えて見ている訳にはいきません」
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