【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船

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「ご破談……っ!? お、お兄様どう言う事ですか!?」
「メ、メイブルム卿……っ!?」

 リスティアナとリオルドが慌てふためく雰囲気を感じながら、それでもオルファはゆったりと歩を進めながらひらり、と後方に向かって手を振ると立ち止まる事無くそのまま廊下の先へと姿を消してしまった。



 追うにも追えず、その場で立ち止まったままオルファの向かった先を呆然とリスティアナとリオルドは見詰めていたが、その場に立ち尽くしていてもどうしようもならずリスティアナは溜息を吐き出すとリオルドに顔を向けて「行きましょうか」と声を掛けた。



 王城を後にしたリスティアナとリオルドは、オルファが言っていた通り門前にコリーナやアイリーン、ティファの姿を見つけると瞳を輝かせて三人の元へと駆け寄った。

「コリーナ! アイリーン嬢に、ティファ嬢!」
「リスティアナ! 良かった、無事だったのね!」

 ひしっ、とリスティアナとコリーナが抱き合うとお互いの無事を確認し合い、笑顔を浮かべる。

 コリーナのフィリモリス侯爵家でも、此度の騒動について確認か、報告が行っていたのだろう。
 オースティンが手を回していたのか、それともフィリモリス侯爵家が自ら調べたのかは分からないが、コリーナはある程度の内情を知っているようだった。

 そして、コリーナと共にアイリーンとティファも王城にやって来ていると言う事は、二人にも情報を共有したのだろう。
 若しくは、卒業パーティーのあの一件で学園内の雰囲気が落ち着き、また再び友人と穏やかに過ごせるような状態へと変わったのだろうか。

「リスティアナ。貴女がタナトス領へと向かったと聞いて、どれだけ心配したか……っ。本当に無事で良かったわ……」
「心配掛けてごめんなさいね。コリーナやアイリーン嬢、ティファ嬢にも連絡をする余裕が無くて……」
「あれから、学園内では色々と騒ぎになりましたのよ……そのお話もさせて下さいね」
「何はともあれ、リスティアナ嬢がご無事で良かったですわ……」

 リスティアナ達四人は、一頻り再会を喜ぶ言葉を交わし合うと、リスティアナ達から少し離れた場所で所在なさげに佇むリオルドにふ、とコリーナは視線を向けた。

「──……、あら、? スノーケア卿とこの後も何かお約束でもあるの? リスティアナ」

 コリーナ、アイリーン、ティファから視線を向けられたリオルドは僅かにたじろぐと、リスティアナが「ああ、」とコリーナに言葉を返す。

「スノーケア卿は、邸に戻るまで護衛をして下さるのよ」

 嬉しそうに笑うリスティアナに、コリーナ達友人は瞳を微かに見開くと「まあまあまあ」と嬉しそうに表情を綻ばせてリスティアナとリオルドに交互に視線をやる。

 花開くように明るい笑顔を浮かべ、嬉しそうに笑うリスティアナにコリーナ達は何やら自分達の預かり知らぬ間に、リスティアナとリオルドの間に何かがあったのだと瞬時に察する。
 王太子であるヴィルジールと婚約を解消してから暫く。
 表情には出さずに耐えていたリスティアナが、心の底から嬉しそうに笑い、リオルドと視線を交わしている。
 コリーナ達、リスティアナの友人はリスティアナが心の底から感情を顕にして笑顔を浮かべ、楽しげに表情を綻ばせているリスティアナに自分事のように嬉しくなった。



 リスティアナの友人達は、リオルドとメイブルム侯爵家の複数の護衛達に馬車を護衛されながらメイブルム侯爵家へと戻って来ると、暫しサロンで歓談した。

 リスティアナとリオルドが退席した後の卒業パーティーの事、ヴィルジール王太子の事、帝国の甘言に騙され、国を裏切る行為をした貴族達の家の処遇を教えてくれた。
 だが、不自然な程ナタリアの事は一切誰からも話が出ず、「存在そのもの」を消されてしまった事にリスティアナは何とも言えない感情を覚える。

 タナトス領から戻る間に、王都では国王バルハルムドから貴族達に今回の事態について話があったらしい。
 叛逆に手を貸していなかった家の当主が集められ、事の次第の説明後、叛逆に加担していた家の者達が後から合流し、裁きの間に場所を移した国王が大なり小なり罪を犯した家を国内の貴族に発表したらしい。

 正式な裁きは、明日の王兄バジュラドの処刑の後に国民の前で罪を裁く事になるらしい事をコリーナから説明され、リスティアナとリオルドは表情を引き締めた。

 国内の貴族の内、約四分の一程の家が些細な件でも関わっていた事から、大規模な粛清が行われるだろうとの事らしい。

「──そう。それ程の家が罰を受けるのね」

 リスティアナが深く溜息を付き、小さく言葉を零すとティーカップに口を付けていたコリーナがそっとカップをソーサーに戻すと「ええ」と言葉を返す。

「小さな罪であれば取り潰しは行われないでしょうけど……大きな罪を犯した家は爵位返上の上、身分を落とされるでしょうね」
「叛逆を企てていたのだものね……。仕方ない結果だわ」

 室内に沈黙が落ち、重い空気になってしまった所で、時間も時間となってしまったのでリスティアナの友人達は会話を纏め、邸を後にした。





 リスティアナはコリーナ達友人を見送った後、リオルドと庭先で会話を交わしていると、王城からオースティンとオルファが丁度戻って来た。

 夜も遅いから、とリオルドが邸を後にしようとしたが、オースティンから「話がある」と言われ、リオルドはリスティアナと顔を見合わせた。
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