【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船

文字の大きさ
上 下
59 / 78

59

しおりを挟む

 リスティアナとリオルドはお互い顔を見合わせて笑い合うと卒業パーティー会場から退出した。





 数時間後。
 リスティアナとリオルドはタナトス領へと向かう為にお互い一度邸に戻り乗馬時に動きやすい服装に着替えてから王城へと向かった。

 王城の正門前でリスティアナとリオルドは顔を合わせると先程ウルム国のティシアが話してくれた追軍の件を聞きに行く。

 ティシアの指示で、追軍は既に王城を立っているらしく、二人は慌てて馬に跨るとお互い少数の護衛を連れて馬を駆ける。

「──リスティアナ嬢……! 兄君のオルファ卿に何も告げずに立って良かったのですか……!?」
「ええ……! お兄様から特に何も連絡が無いので、私がタナトス領へ向かう事は既に了承済なのだと思います……!」

 リオルドは成程、と言葉を返すとリスティアナと並び馬を走らせていたが自らが少しだけ前へと出ると、護衛を含むタナトス領へと一行のペースを調整する。

「タナトス領までは馬の脚で十日以上掛かります……! 馬変えの準備も整っていないので、潰してしまっては元も子もない……! リスティアナ嬢が早くお父上の元まで行かれたいのは分かりますが、少しペースを緩めましょう……!」

 リオルドの言葉にリスティアナははっと瞳を見開くと、反省したように「申し訳ございません」と言葉を返す。

「そう、ですわね……馬が潰れてしまっては身動きが取れなくなってしまいますわね……スノーケア卿、止めて頂きありがとうございます」
「──いえ。この先、王都とは違い人の往来の少ない道は盗賊なども出ますから、そう言った場所を短期間で抜けられるよう、調整致しましょう」

 先程より幾分か緩やかなペースになった事で、リスティアナやリオルドの後ろを付いて来ていた護衛達も表情を緩める。
 リオルドの言う通り、馬を疲弊させてしまった状態で盗賊と出くわしてしまったら事だ。

 リスティアナのメイブルム侯爵家から、リオルドはスノーケア家から腕の立つ侍従を護衛代わりに数人連れて来ている。
 リスティアナとリオルドを含めて十数人程度ではあるが、盗賊達が三倍以上の人数が居なければ何とかなるだろう。

 街に辿り着けなければ野営を行う事にもなる。
 その為には、人も馬も疲れさせてはいけない、と道中リスティアナはリオルドに為になる話を数多く聞き、ふんふんと真面目にその話に耳を傾けた。



 王都を立って数日。
 リオルドの絶妙な配分により、夜は街で宿に泊まり体を休める事が出来ており、順調にタナトス領へと進む事が出来ている。
 そして、馬を走らせ続けて数日。

 リスティアナとリオルド達はウルム国の追軍に追い付いてしまった。

 人数が多ければ、無理な速度にならぬよう余裕を持った速度で進む。
 それに比べ、少数で動いていたリスティアナ達の足は早い。

 リスティアナとリオルドは自らの家名を追軍の責任者に告げ、責任者からは王女であるティシアから話を聞いている、と言われ追軍の前方へと加わった。

 ウルム国の追軍に加わり、少し経った頃。
 リオルドは前方に上空を旋回している鷹を視界に入れて小さく「あっ」と声を零した。

「スノーケア卿……? どうなさいました?」

 リオルドの様子に直ぐに気がついたリスティアナが、隣を走るリオルドに向かって問い掛けると、リオルドは「辺境伯で飼っている鷹です」と声を上げる。

「ミーガン、と言うのですが……兄上の鷹なんです……! 何か、兄上からの報せを持っているかもしれません……!」

 リオルドの言葉に、追軍の責任者も「鷹の旋回している場所に向かおう」と告げると、鷹──ミーガンの元へと馬を走らせた。
しおりを挟む
感想 236

あなたにおすすめの小説

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。

ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。 事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

偽りの愛に終止符を

甘糖むい
恋愛
政略結婚をして3年。あらかじめ決められていた3年の間に子供が出来なければ離婚するという取り決めをしていたエリシアは、仕事で忙しいく言葉を殆ど交わすことなく離婚の日を迎えた。屋敷を追い出されてしまえば行くところなどない彼女だったがこれからについて話合うつもりでヴィンセントの元を訪れる。エリシアは何かが変わるかもしれないと一抹の期待を胸に抱いていたが、夫のヴィンセントは「好きにしろ」と一言だけ告げてエリシアを見ることなく彼女を追い出してしまう。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける

堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」  王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。  クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。  せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。  キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。  クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。  卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。  目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。  淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。  そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。  この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

わたしがお屋敷を去った結果

柚木ゆず
恋愛
 両親、妹、婚約者、使用人。ロドレル子爵令嬢カプシーヌは周囲の人々から理不尽に疎まれ酷い扱いを受け続けており、これ以上はこの場所で生きていけないと感じ人知れずお屋敷を去りました。  ――カプシーヌさえいなくなれば、何もかもうまく行く――。  ――カプシーヌがいなくなったおかげで、嬉しいことが起きるようになった――。  関係者たちは大喜びしていましたが、誰もまだ知りません。今まで幸せな日常を過ごせていたのはカプシーヌのおかげで、そんな彼女が居なくなったことで自分達の人生は間もなく180度変わってしまうことを。  17日本編完結。後日それぞれの10年後を描く番外編の投稿を予定しております。  体調不良により、現在感想欄を閉じております(現在感想へのお礼を表示するために、一時的に開放しております)。

処理中です...