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第百二十四話
しおりを挟む第三王子の登場に、見物人達から驚きの声が上がる。
ミリアベル達は事前に続けて大司教と国王陛下の罪について糾明すると言う事を聞いていたのでおかしな動きをしないか注視した。
だが、この会場内に居る見物人達からは「あれは大司教様ではないか」や、「陛下まで」と戸惑いの声が上がる。
ランドロフが二人の罪を暴いたとは言え、突然罪人同様の扱いを受けている二人の登場に周囲は戸惑い、混乱している。
この場に王太子や第二王子がいない事から、今回の悪事──自国の国民を傀儡とし、洗脳を行っていたのは大司教と国王陛下二人のみだったのだろう事が理解出来る。
「他の王族方は大丈夫でしたのね……」
ミリアベルが安堵と共に言葉を零すと、姿を表したランドロフがその場で唇を開いた。
「この度この者達が我が国を混乱に陥れ、国民の命を弄んでいた事が発覚した。これに伴い、この場を借りて大司教、イルムド・アルガムフィアと我が国の国王陛下、ディエスロード・イービス・アリティネイアの罪をここで改めて弾劾する」
ランドロフの言葉にホール内が更にざわめきに包まれる中、そこでノルトとラディアン、近衛騎士団の団長が素早く動くと軍規違反を犯した者達を素早く他の場所へ誘導してランドロフ達を案内する。
既に打ち合わせ済みだったのだろう。迷いない行動からその事が伺えて周囲の見物人達も未だに戸惑いつつも静かにこの先のランドロフの言葉を待つ。
広い場所に移ったランドロフ達は、大司教と国王陛下の拘束はそのままに、目隠しを外されてその場に立たされている。
ミリアベルが視線を向けると、これだけの視線を向けられても不敵な笑みを浮かべ、何処か余裕を感じさせる態度でいる大司教に微かに違和感を覚えた。
そして、大司教の邪法により命を落としているはずの国王陛下も自分の意識を持っているようで、国王陛下は視線を落としただ俯いている。
そこに、ランドロフの声が響く。
「我が国の国王であるディエスロード・イービス・アリティネイアの罪を告げる」
国王陛下は、国を統べる者であるにも関わらず自分の私利私欲の為に国民であるティアラ・フローラモを洗脳し、奇跡の乙女と言う傀儡を作り出し、その奇跡の乙女を崇拝する信者を作り出して
多くの人間の魔力を必要としていた事。
そして、今回の討伐任務も元々仕組まれていたもので、魔の者の王と国王陛下が取引を行っていた事。
奇跡の乙女とその他の人間と引き換えに魔の者のとある魔法を得ようとしていた事。
「──そして、七年前に崩御されたリスティアーナ第二王妃の死を冒涜し、悪戯にその魂をこの世に甦らせようと計画した事。……命を冒涜するような行為は許されざる行為である」
ランドロフがそう説明して行くと共に、ミリアベル、ノルト、ネウスが入手した証拠が魔道具によって空間に映し出されて行く。
言い逃れの出来ないような決定的な証拠達がその場に映し出されて行く様子に、見物人達からは動揺の声が上がり、その様子を見ていた大司教は小さく舌打ちする。
その様子を見たネウスが、不思議そうに眉を顰めるとミリアベルへと小さく話し掛ける。
「──何か、あの大司教の男……口元の動きおかしくねぇか?もごもごしてるって言うか……」
ネウスの言葉に、ミリアベルが「えっ」と呟きネウスの見つめる先へ視線を向ける。
すると、ネウスの言葉の通り大司教の口元が僅かに動いているように見える。
見物人達に顔を向けて居る為に、ランドロフやノルト達からは顔の動きが見えないのだろう。
ぶつぶつと何かを呟いているように見えて、ミリアベルはハッと視線を後方へと向ける。
この場所は普段、国で主催するような大きな舞踏会や夜会を行うホールでとても広い。
その広さから、今回見物人が増えた為この場所を臨時の軍法会議の場所としたが、広い故に出入口はかなり後方にある。
そして、その出入口はこれ以上見物人が入ってこないように封鎖されている。
そこまで理解した所で、突然大司教が声を上げた。
「──ふざけるな……!何も知らない愚者共め……っそのような者達は皆リスティアーナの糧となれ!」
悍ましい程の憎悪の篭った言葉がホールに響いた瞬間、以前忍び込んだ教会で見た転移の魔道具のような物が大司教の目の前に突然現れる。
「──っ!」
それに気付いたノルトがいち早く気付き、その魔道具を破壊しようと剣を抜き放ち、魔道具へと駆け寄ったが時すでに遅く、その魔道具から魔力を注いでもいないのに光が発された。
魔道具よりも大司教を取り押さえる事を優先してしまったラディアンと近衛騎士団の団長達は突然の光に顔を逸らす。
「──ネウスっ!」
堪らず叫び声を上げたノルトに応えるようにネウスが魔道士団の面々の中から飛び出すと、顔を隠すように深くフードを被っていた為、突然姿を表したネウスに周囲に居た魔法騎士団や見物人達の中から驚きの声が上がるが、それも一瞬で。
光が収束するなり、その場に突然かなりの数の魔獣のような物や大型の獣が姿を表した。
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