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第百十話
しおりを挟むロザンナの言葉に、ミリアベルとノルトは焦りネウスに視線を向けるとネウスは気まずそうな表情をしてミリアベル達から視線を逸らす。
「──人間達に何も話されていなかったのですか?話もせず、協力を得もせず、無償で協力していたのですか?ネウス様が?」
嘘でしょう?と言うように大袈裟に驚いたような表情でロザンナがネウスを見やるとバツが悪そうにロザンナからも視線を逸らしてネウスは唇を開いた。
「──仕方ねぇだろ……。協力を仰ごうにも元々俺達の種族と人間は仲が悪いだろうが……」
歯切れ悪くそう呟くネウスに、ロザンナは自分の知っているネウスは何処からその自信が満ち溢れているのかと辟易していた頃の面影が無くなっている事に暫し思案するように視線を宙に彷徨わせた。
「まさか……本当に衰弱しておられるのですか?いえ、でもそうしたらこちらに戻って来ますよね?まだ我が国の方が微力ながら魔力を吸収出来るし……」
ぶつぶつと呟くロザンナは、途中ではっと何かを思いついたように瞳を見開きミリアベルとノルトに視線を向けた後、ネウスに視線を向ける。
ロザンナの態度に嫌な予感を感じたネウスは、ロザンナを強制送還しようとしたが目敏くそれに気付いたロザンナはネウスのその魔法に抵抗した。
「まさか……っネウス様ともあろう方がこの二人の人間の総魔力量に恐怖を覚えたのですか?確かに今のネウス様でしたらこの人間達とまともにやり合えば滅されますけど……!」
「それ以上喋るなロザンナ!……違ぇよ!」
ネウスは恥ずかしそうに微かに頬を染めるとロザンナの口を閉じようとロザンナに向かって自分の腕を向けるが、当の本人であるロザンナは難無くひょい、とネウスの腕を避けると驚きで固まってしまっているミリアベルとノルトに向かって体を向けるとぴしり、と自分の指先を向けて唇を開いた。
「──いいか、良く聞きなさい人間共。我ら魔族の王であるネウス様はお前達の土地に宿る豊富な魔力を得る為にここに来た。我らが生活するには、生きるには膨大な魔力を必要とする。我が国の領土には魔力を吸収出来る土地が無くなってきている。だから、種の存続の為にネウス様は魔力量が豊富な人間の国にやって来たのだ、協力しろ」
「止めろ止めろ、場をややこしくすんな。……悪かったな、ミリアベルにノルト。こいつの事は気にしないでこれからの事を決めるぞ」
ネウスがロザンナを制し、ミリアベルとノルトに視線を向けると心配そうな表情をしてミリアベルはネウスに視線を向けており、視線が合ってしまったネウスは気まずそうに視線を逸らした。
「──ネウス様、そちらの……、ロザンナさんが言った事は本当なのですか?魔力を得なければネウス様が持たない、とは先程ロザンナさんが仰っていた滅びる、と言う事になるのですか?」
「何故そんな状態なのを俺達に一言も言わなかったんだ……」
ミリアベルとノルトの言葉に、ネウスは「あー」と面倒臭そうに自分の頭をかくと唇を開く。
「魔力の抽出ってのはすげぇ痛みを伴うんだろう?そんな状態になるのが分かっててお前らに魔力を寄越せ、何て言えねぇし、無理矢理人間を連れ帰る何て無理だ。そんな事をしたら今の俺の状態じゃミリアベルとノルトに簡単にやられる」
だからミリアベルが無意識に垂れ流してる魔力を拝借してたんだよ、とそう言葉を紡ぐネウスにミリアベルは何か自分達が協力出来る事はないか、と考える。
今まで人間達の手助けをしてくれたネウスが苦しんでいると言うのならばどうにかして助けたい。
ミリアベルは自身が魔力を無意識に放出している、と言われてもその自覚が無い為分からないが、自分一人だけでネウスの種族を助ける事など到底出来ない事は分かる。
ノルトもミリアベルと同じ考えのようで、何か出来る事はないか、と考え込んでいるようだ。
「魔力を何か、魔道具のような物でネウス達に譲渡出来ればいいが……そんな物が作れるかも分からないしな……」
「あー、そんなに気にしなくていい。別に今すぐにどうこうなるって訳じゃねぇし……まあ百年後くらいには解決策があれば、と思ってるくらいだしな……」
「だが、百年後と言いながらネウスは危機感を感じて探しに来たのだろう。あまり余裕がないんじゃないか?」
ノルトとネウスが話している間に、今まで静かに黙って事の成行を見守っていたカーティスがぽつり、と言葉を零す。
「──俺達が協力出来る事はやろうぜ……!ランドロフ殿下に意見を聞いてもいいし、ロザンナさんのような美しい人が居なくなってしまうなんて世界の損失だろう……!」
「──は?何だ貴様は」
カーティスの言葉に、ミリアベルを含め自分の名前を突然呼ばれたロザンナ本人も眉を顰め、訝しげにカーティスに視線を向ける。
ロザンナから視線を向けられたカーティスは、若干頬を染めながらノルトへ説得するように唇を開く。
「俺達、ネウス様に色々手助けして貰ってるんだし助けて貰った恩は返さなきゃだろ?今回の件も含めてランドロフ殿下に何とか軍法会議を前倒しで行えないか確認を取ろう、そんでロザンナさん達に協力出来るように殿下にお伝えしてみようぜ……!」
些か興奮したようにそう捲し立てるカーティスに、ミリアベルを筆頭にその室内に居る者達で戸惑いがちに視線を交わしてしまった。
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