気付くのが遅すぎた

高瀬船

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両親との話から数日、フィミリアは王都のタウンハウスへと侍女のミアと共に訪れていた。

あの後、父フレディはサミエルへ手紙を送り、そのすぐ翌々日にフィミリアと、父フレディ宛にサミエルから手紙が届いた。
父がどういった事を手紙に認めたかはわからないが、フィミリア宛のサミエルからの手紙からは
長い期間に渡る遠征で帰還が遅れ、暫く会う事が出来なかった事へのお詫びと、数日間王都へ滞在するので、その間に一日でもフィミリアと共に過ごしたい、という旨が綴られていた。

「昔の私だったら、素直にサミエル様からのこの手紙を喜んでいたんでしょうね…けど、お父様が連絡して初めてこちらへ連絡をくれた、という事に何だか複雑な気分…」
「フィミリアお嬢様の仰ることは最もですわ。王都へ帰還したならば、長い間会えなかった婚約者にすぐ逢瀬の機会を問う事が普通ですもの!」

タウンハウスへ到着するまでの馬車の中で、ミアはぷりぷりと頬を膨らませ、サミエルを非難する。
昔から、サミエルの言葉足らずで寡黙な様や、口下手な態度にミアは不満を抱いていたようで、ここ数ヶ月まったく連絡を寄越さなかったサミエルにミアも何か思うところがあったのだろう。

「そんなに怒ってはサミエル様が可哀想よ、ミア。きっと魔獣討伐の旅は私たちが想像するより厳しく、過酷な毎日で中々連絡をする機会がなかったのだわ」

そんな事は無いことはフィミリア自身もわかっていた。
友人のお茶会等に赴いていたフィミリアは同じように聖女様の討伐に同行している近衛騎士団所属の婚約者がいる女性もいた事を知っている。
その女性の元へは、頻繁に遠方の地から婚約者である騎士団所属の男性から近況を綴った手紙や、いつ頃帰還出来るか、会いたい、と言った内容が認められた手紙が届くと頬を染めながら話していた事を覚えている。
その女性の話しを遠く聞きながら、フィミリアは羨ましく思ったのだ。
聖女様が現れて、サミエルも討伐に同行するようになってから始めは頻繁に届いていた手紙も、日を追う事に少なくなり、最近はまったく届かなくなった。
前回、会ってから今回帰還するまで一度もサミエルからの手紙は届かず、帰還の知らせもお茶会に参加した際に周りにいた令嬢が話していたのを聞いて知った。
その時の惨めさと、恥ずかしさ、切なさはきっと誰にもわからないだろう。

そして、今日
数ヶ月ぶりに会う自分の婚約者に、どう話しを切り出そう、とフィミリアは頭を悩ませた。




馬車が止まり、フィミリアはサミエルの待つタウンハウスへ到着した事に窓の外に視線を移す。
過去、何度か訪問した事があるその外観にこれが最後かもしれない、と気持ちが落ち込むがサミエルと会える事に気持ちが高揚する、相反した二つの感情に揺れ動かされながら、フィミリアは馬車を降りた。
そこに、玄関前に先日認めたライトブルーの髪を持つ長身の男性が立っていた事に、フィミリアは驚きで目を見開いた。
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