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しおりを挟む治療院での手当が粗方終わると、メニアはふう、と息を吐き出して立ち上がる。
以前に比べて魔力制御も、調整も効率的に出来るようになっている気がする。
メニアは護衛も兼ねて治療院に着いて来てくれていたカーナとユリナに振り向くと、笑顔で唇を開いた。
「カーナさん、ユリナさん。そろそろ戻りましょうか」
「了解しました、城までしっかりとお守りしますね」
メニアの言葉に、ユリナはいつものように真剣な表情で言葉を返し、カーナは笑顔で頷いた。
いつもと変わらぬ日常を過ごし、そうして同じ季節を二度程過ごした頃。
ネウスの元へとラドから急ぎの連絡が入った──。
「──ネウス様、アリティネイアの宰相ラド・メランドより急ぎお伝えしたい件がある、と通信魔道具に連絡が入っております」
鉱山の視察に来ていたネウスは「今かよ」とぼやきながら報告を持ってきたラティージルに対して通信魔道具を受け取る為、自分の手のひらを差し出す。
ネウスが差し出した手のひらに、ラティージルが魔道具を置くと、ネウスは慣れた手付きで魔道具に魔力を流し込み起動する。
すると、瞬時に通信が行われ、ネウスは魔道具に向かって話し掛ける。
「──俺だ。急ぎの用だと聞いたが、セリウスとシャロンの件か?」
ネウスが声を掛けると、魔道具の向こう側に居るラドと通信が繋がったのだろう。
若干、聞こえ辛さはあるがラドの焦っているような声が聞こえる。
<──ネウス様、突然のご連絡申し訳ない……!仰る通りです、セリウスの体調はまだ変化は無いのですが、シャロンが本日倒れました……!顔色も悪く、治癒魔法も効かない状態です……!>
「ああ、そろそろ期限が来たな。数年前に、マティアスから渡された転移の魔道具をセリウスとシャロンを集めた上で発動しろ。転移魔法が発動すれば、直ぐにこっちの国に来る。後は、あの二人の身柄はこちらで預かる形になるが、いいな?」
<兼ねてより、そのようなお話をさせて頂いておりましたので大丈夫です──。二人の引渡しに、我が国からエリシュオン殿下にそちらに行って頂きます。護衛として、魔道士団のハーランド・リュドミラも付けますので、ご了承ください>
ネウスとラドのやり取りが終わると、夕方五つの鐘の鳴る頃にネウスの国に引き渡す事が決まった。
ネウスは、傍で控えていたラティージルに視線を向けると「俺達も戻るぞ」と声を掛け、城へと転移魔法で帰城した。
城のネウス自身の居室に戻って来ると、ネウスはきょろ、と周囲を見回してそこに居る筈のメニアが居ない事に気付き、慌てて外にいる使用人に声を掛けた。
「──おい……っ!メニアを知らねえか?あんな体で何処に行ったんだ……!」
バタバタと部屋から慌てて出てきたネウスに、使用人がギョッとした後、唇を開いた。
「──ネ、ネウス様!?メニア様はお散歩に出られる、と仰って庭園に……」
「──庭園だな!」
ネウスは廊下の窓を勢い良く開け放つと、眼下に見える庭園へと飛び降りた──。
**************
すみません、本日深夜になってしまうかもしれませんが、もう一話更新します。
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