【完結】偽りの聖女、と罵られ捨てられたのでもう二度と助けません、戻りません

高瀬船

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ラドを先頭に、その後ろをメニアとネウスが隣り合わせに歩き、更にその後ろをマティアスとロザンナ、カーナとユリナが続く。

メニア達一行を護衛するかのようにその後ろに、この国の護衛騎士達が続いており、仰々しい一行になっている事にカーナはキョロキョロと周囲を見回していた。

「ちょ、ちょっとカーナ。どうしたのよ、あまりキョロキョロしないでよね、恥ずかしい……っ!」
「だ、だって……!」

こそこそと二人が会話をしていると、ロザンナがカーナとユリナの方へ振り向いて声を掛ける。

「ユリナの言う通りよ、ネウス様が居るのだからあまり恥ずかしい事をしないでね?」
「うう……っ、お母様すみません……」
「これから行く場所は、この国の貴族達が多くいる場所なのですよね?」

ユリナの言葉に、ロザンナはこくりと頷くと言葉を返す。

「ええ、そうね。……身分のある者が罪を犯したからこの国の貴族達の前でその罪を暴かれ、刑罰を受けるのよ」
「この国はそのような事をしてるのですね……。私達の国ではその場で直ぐに命を取られるのに悠長なものですね……」
「ええ、だけど……力で統率が取れない者が直ぐに命を奪ってしまえば反発を買い、その内その人間に背こうとする人間が出てくるから仕方ないのよ。私達の国のように絶対的な力を持っているネウス様のような者が人間の国には居ないのでしょう」
「──なるほど」
「だから、時間を掛けてその者を裁こうと言うのではないかしら」

ロザンナとユリナが会話をしていると、裁きの間に到着したのだろう。

先を歩いていたメニアとネウスが振り返り、マティアス達に「早く来い」と言うような視線を向けている。

メニアとネウスの後を慌てて追い、四人は急いで裁きの間へと入室した。






メニアが開かれた扉へと視線を向けると、既に裁きの間には大勢のこの国の貴族達が揃っており、メニアは一瞬だけ後込みしてしまう。

だが、隣に居たネウスが繋がれたままのメニアの手を引くとそのまま周囲からの視線など気にせずに足を進める。

表立ってメニアに悪感情を向ける者はいないが、胡乱な目を向けている。
ヒソヒソと言葉を交わしている者達もいるが、メニアとネウスを案内するラドはそのまま足を進め続け、国王が座する壇上の玉座へ近付くと、頭を下げた。



「──魔の者の王、ネウス様と王妃、メニア・ハピュナー嬢をお連れ致しました」

ラドの言葉に、裁きの間に居た貴族達がざわめく。
メニアを、ラドが王妃と呼び、国王はラドの言葉に「うむ」とただ一つ頷いた。

メニアは、この国の聖女では無かったのか──。
そのような疑問が貴族達の表情からありありと窺えるが、誰もその疑問には答えようとせず、国王は玉座からゆったりと立ち上がるとネウスとメニアに順番に視線を向けて唇を開いた。

「古くからの友人であるネウス殿と、その妃であり、我が国の聖女を兼任して頂いていたメニア・ハピュナー殿。本日は、このような場に来ていただき申し訳ない。礼を言おう」

国王の言葉に、ネウスは口端を持ち上げて笑むと唇を開く。

「礼には及ばねえ。今回の件は、両国の国民が関わっているからな……」

ネウスはそう言葉を返すと、国王の玉座がある壇上に進み、同列にある玉座にどさりと腰を下ろした。
その様子を黙って見ていたメニアがぎこちなく足を進めると、ネウスがメニアの手を引き、自分の隣にある豪華な椅子に座らせる。

二人に続いて入って来たマティアス達は、ネウスとメニアの後方に控えた。

メニアとネウスが腰を下ろした事を確認すると、国王は裁きの間をぐるりと見回す。

裁きの間の空気は戸惑いや疑問で溢れていたが、今はその疑問に答えてやる時間は無い。
国王が「連れてまいれ」と声を上げるとメニア達が入って来た扉とは別の扉が開き、騎士達に両脇をしっかりと固定されたセリウスとシャロンが引きづられるようにして姿を表した。

罪人として二人を扱っていた為、二人の顔には目隠しをされており、両手首は魔法を封じる手枷が嵌められている。

よたよた、と覚束無い足取りで連れられて来た二人に、メニアは思わず視線を逸らそうとしてしまったが、目を逸らす事柄では無い、と思い直し背筋を伸ばしてしっかりと裁きの間に連れられて来た二人をその両目で見詰める。

裁きの間の中央に連れられて来たセリウスとシャロンの顔から目隠しを騎士がぐっ、と外すと、視界を覆われていたセリウスとシャロンは眩しそうに目を細め、それから自分達の正面──国王と同じ壇上に揃って座るメニアとネウスを目にして驚きに目を見開き、セリウスは叫んだ。



「──何故っ、何故メニアが"そこ"に居る!?」
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