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しおりを挟む「あいつらも、ここまでメニアを徹底的に傷付けて……何が目的だったんだ……。メニアを周囲から孤立させて、自分達に依存させて……最終的には家族からも距離を取らせて」
「ネウス様、これは私の勝手な想像ですが……。メニアを完全に孤立させ、精神的に追い詰め、誰にも相談出来ない状況を作り出して、もしかしたらメニアを精神的に壊す予定だったのでしょうか……?」
ロザンナの言葉にネウスも、メニアも驚いたような表情を浮かべてロザンナに向き直る。
反対にロザンナの言葉に、メニアの父親とハロルドは「なるほどな」と自分の顎に手をやり納得したような表情を浮かべ、父親が唇を開いた。
「メニアを精神的に追い詰めて、自分の味方は自分達しかいない、と言うような状況を作り出す予定だったのか……。長年魅了と信用の魔法に縛られたメニアには、他に頼れるような友人も居らず、家族に迷惑を掛けたと知ればメニアは塞ぎ込んでしまっていただろう。……メニアの性格を把握していたからこそそのような暴挙に出たのだろうな」
「──ふうん……? まあ、メニアには俺達がいるからそんな事にはならないけどな……?」
ネウスの言葉にはは、と父親は苦笑すると感謝の言葉をネウスにかける。
「ええ、そうですな……。ネウス殿達が居なければ、メニアは今こうして我々の側にはいなかったかもしれないですからな……」
父親はメニアの頭を撫でてやると、ネウスに向かって小さく頭を下げる。
そのやり取りを少しだけ後方から見ていたロザンナとマティアスは、こそこそと小声でやり取りをした。
「……メニアさんの家族も、いつの間にこんなネウス様を信用しきって……」
「さあねぇ……? カーナとユリナもしょっちゅうここに来ているし、あの子達ネウス様の話でもしてたのかしらね?」
あれから。
子爵家の事は自分達に任せなさい、と優しく言葉を紡がれてメニア達はサロンへとやって来ていた。
邸内が常に無い緊張感と、慌ただしさに包まれていて、メニアはソファに座りながら自分の顔を両手で覆い、俯いていた。
「あー……メニア?父親も、一緒にいたメニアの姉の旦那も気にするなって言ってたし、どうにかするって言ってただろう。こうなったのもメニアのせいじゃない……どうする事も出来なかったんだ、この報告はラドにも行くだろうし、ラドや、国王が動くだろう……?」
「──貴族は、どうにかなるかもしれません……事業提携や新規事業に関しては、他の貴族の方を紹介して貰える可能性はありますが……今まで取引のあった商会や、商人は……彼らは貴族ではありませんから……自分達が貴族同士のいざこざに巻き込まれた、と知ったら……。貴族を嫌う商会もあるのに……、それを長年お父様が信頼関係を築き、やっと取引を開始した商会もあったのに……っ」
「だ、だけどメニアさん、それならメニアさんの父親の誠実さを知っている商会などは、もう一度仕事をしてくれるのでは?」
メニアの言葉に、元気付けようとマティアスが声を掛けるが、メニアは力無く首をゆるゆると横に振る。
「分かり、ません……。お父様と信頼関係を築いてはいると思いますが……こんなのはもう御免だと手を引いてしまう方はいると思います」
メニアは悔しそうにぎゅうっ、と自分の手のひらを爪が白くなってしまう程握り締める。
すると、隣に座って黙って話を聞いていたネウスがメニアの手を取り、強く握り締められたメニアの手のひらをゆっくりと開いてやる。
メニアの強ばった指を一本一本優しく開かせてやると、そのままネウスは自分の手のひらでメニアの手を握り、ぽつりと唇を開いた。
「一度付いちまった悪評は中々払拭は出来ないかもな……。だが、それでもメニアの父親と姉の旦那は何とかしようと動いてるだろう。悔やんでも現状をどうにか出来る訳ではないんだ。メニアは、あの二人に心配を掛けないように普段通りに過ごすしかねえんじゃねえか?」
いつもの巫山戯たような態度では無く、ただただ真剣に、落ち着いたトーンで話すネウスにメニアは先程まで荒れに荒れていた自分の胸中が落ち着いて行くのを感じる。
確かに、ネウスの言う通りだ。
いくら自分が悔やもうと、時間が巻き戻りはしない。このような事が起きる事を防ぐ事など出来やしないのだ。
「そう、ですね……。私が落ち込んでいては、お父様やお義兄様に気を使わせてしまいますね……」
「ああ。だから普通に過ごそう。起きてしまった事は仕方ねえんだ。……明日は、久しぶりに時間があるんだろう?気晴らしに街にでも出て、少し歩くか?」
「──ありがとうございます、ネウスさん」
メニアは、ネウスの気遣いに有難く頷いた。
そして、翌日。
街へとやって来たメニアとネウス。
そして少し二人から離れた場所で二人を見守っていたマティアスの目の前で、メニアが市民から投げられた石で怪我をした。
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