【完結】偽りの聖女、と罵られ捨てられたのでもう二度と助けません、戻りません

高瀬船

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夜会へと向かう為に、メニアやネウス、マティアスは支度をして玄関ホールで待ち合わせる事にした。

女性の方が支度に時間が掛かる。
その為、メニアはネウス達よりも早く支度に取り掛かったがそれでも全ての準備が終わるのに、思っていたよりも時間が経ってしまった。

夜会用に着飾ったドレスを身に纏う自分を見る余裕など無く、メニアは支度が終わると支度を手伝ってくれていたこの邸の使用人や、針子の皆に挨拶をして急いで玄関ホールへと向かう。

ロザンナは別行動。
カーナとユリナも後ほど会場で落ち合う予定だ。
メニアに知り合いが多くないと知っているセリウスやシャロンを悪戯に警戒させないように、と考えたのだ。

ネウスとマティアスは、以前の騎士服を着るだけなので支度は早い。
メニアは待たせてしまっている事に焦り、急いで大階段を降りて行く。

ヒールの音が聞こえて来て、メニアがやって来たのだろう、と気付いたネウスとマティアスは二人で談笑していた為に大階段に背中を向けていた。
メニアの足音に気付き、二人が振り向いたのがメニアの視界にしっかりと入り、その瞬間バチリ、とネウスと視線が合った。

「──っ、お待たせしてしまってすみません……っ!」
「いや……」

メニアは気恥ずかしさで、ネウスから視線を逸らすと謝罪を口にして玄関ホールまで駆け付ける。

メニアの姿を見たネウスとマティアスは見惚れるように瞳を見開き、そして直ぐに我に返ったネウスがメニアに返事をする。

「やっぱ、そう言うデザインも似合うな。それにして正解だ……良く似合ってる」
「本当に!メニアさんとっても綺麗ですよ」
「あ、ありがとうございます……!」

ネウスとマティアスに、素直に褒められてメニアもはにかみながらお礼を告げる。

「メニアの護衛として潜り込んで良かったな。こんな格好のメニアを一人で放り出せねえだろ」
「ええ。本当にそうです。今日はメニアさんのご両親は参加されないので、しっかりとメニアさんの護衛を務めなければですね!」

変な方向にやる気を出す二人に、メニアは苦笑し、ネウスとマティアスがゆったりとメニアに合わせて歩く速度を落としてくれる事に感謝する。
外には、ネウスが用意した馬車を待たせており、その馬車で夜会に向かう前に王城に寄り、ラドに魔石を渡してから夜会へと参加する。

外に出る時に、段差があるからだろうか。
ネウスがメニアに手のひらを差し出してくれて、メニアはお礼を告げると馬車までをネウスにエスコートして貰い、馬車へと乗り込んだ。










「──ハピュナー嬢ですか!?」
「こんばんわ、メランド卿」

王城に着き、メニアが衛兵へと名前を名乗ると急いでやって来たラドが驚きの表情を浮かべ、素っ頓狂な声を上げた。

「お、驚きました。可愛らしい女性だとばかり思っていましたので、こんなに美しいメニアさんに驚いてしまい……失礼致しました」
「あ、ありがとうございます。メランド卿」

メニアが照れながらラドにお礼を告げると、隣に居たネウスが何故だかとても得意気にしている姿が視界に入ってしまい、メニアは苦笑いを浮かべる。
誰がどう見ても、ネウスの色合いで全身を着飾られている為、ラドにもそう言った意味で捉えられている。
その事実が気恥ずかしくて、メニアは急いで作成した魔石を取り出すと、ラドに手渡した。

「──精神干渉を弾く聖属性魔法の魔石は、こちらに。数は少ないのですが、解呪の魔法が込められた魔石はこちらの小さい袋に入っています。王城に等間隔で設置して頂いて、魔道具か何かで危険を察知したら直ぐにこの魔石の魔法を発動させて下さい。この国の重役に就いていらっしゃる方全員分はまだ用意出来ていませんが、国王陛下と、メランド卿、一部の政務補佐官の方々には行き渡るかと思いますので、効力を発動した魔石は持ち歩いて下さいね」

スラスラとメニアから魔石の説明をされ、ラドはメニアのその説明に何とか着いていくとこくこくと頷く。

「──分かりました、ハピュナー嬢。本日、夜会会場に入る者達に優先してこちらを持たせます」
「ええ、そうして下さい」

メニアの隣に居たネウスがラドへと視線を向けると、唇を開く。

「取り敢えず、片がつくまでは新しい魔石をこっちの人間に届けさせる。午後一番に届けさせるようにするからここまで受け取りに来てくれ」
「分かりました。──ハピュナー嬢、ご負担を掛けますが……宜しくお願いします」
「はい。勿論です」

魔石を無事ラドに渡し終わったメニアとネウス、マティアスはラドと二、三言言葉を交わしてから別れる。

メニア達は夜会会場へ。
ラドは、恐らく夜会会場に入れる者達の元へ向かうのだろう。

再び、三人で馬車へと乗り込み王城を出る。
馬車を少し走らせた距離にある夜会会場は、近付くにつれて人のざわめきが馬車内に居ても肌で感じる事が出来る。

会場へと近付く度、メニアはドキドキと心臓が鼓動を早めるのを必死に落ち着かせていた。
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