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しおりを挟む「ネウスさん、大丈夫ですよ。以前のように魔力制御が不慣れな状態では無くなりましたし、少し疲れたな、と言うくらいです!」
「いや、駄目だ。今直ぐに寝ろ」
いつも通りだ、大丈夫だ、と言うようにメニアが笑顔でネウスに告げるがネウスは一切譲ってくれる気配が無い。
これは少し過保護過ぎでは無いだろうか、とメニアがむっとした表情を浮かべると、そのような表情をネウスに向けた事など無かった為、メニアの表情にネウスが驚きからだろうか、瞳を見開いた。
「──かわ……っ、」
「川……?何ですか、どう言う意味ですか?」
ネウスの呟きに、メニアがむっとした表情のまま言葉を返す。
変な言葉に有耶無耶にされてこのまま何もせずに寝ると言うのは、ネウス達に自分の身柄を保護してもらっているのに厚かましいとメニアは考えている。
無事、解呪の魔法が発動出来たのだから今後の為を考えて、まだ複数の魔石に解呪の魔法を込めておきたい。
精神干渉を弾く魔法ならば、まだまだ発動は行けそうだ、と考えて居たメニアは早くネウスを部屋から追い出して中断してしまっている魔法発動を再開したいのだが、先程からネウスがしっかりとメニアの腕を掴んでしまっている為身動きが取れない。
「ネウスさんは過保護過ぎです!私も、自分がどれくらいの魔力を消費してしまったら体調を崩すのか大体分かって来たので心配して頂かなくても平気です!気分が悪くなる前に、自分で判断して止めますから!」
だから離して出て行ってくれ、と心の中でネウスに願うがメニアの願いはネウスには届かない。
「──いや、やっぱ駄目だ。絶対駄目だ。もう直ぐ夜会なんだから、体調は万全にしとかないといけねえだろ。今すぐ寝ろ」
「ああっ、もう!大丈夫なのに……!」
ぐいぐいとメニアの腕を引っ張りベッドへと向かって歩いて行くネウスに引き摺られていってしまう。
最後の抵抗とばかりに、メニアがその場にしゃがみ込むと、メニアの腕を掴んでいたネウスがメニアがしゃがんでしまった事でがくん、と体を揺らした。
「──メニア!」
「ネウスさん、お父様みたいです!」
「……なっ、」
メニアの言葉にネウスはショックを受けたような表情を浮かべると、一瞬俯いてしまう。
その様子を見たメニアは、流石に父親みたいだ、と言ってしまった事に申し訳無い気持ちを抱く。
ネウスの見た目は、人間で言えばまだ二十代の半ば頃だろう。
実際、数百年は生きているとは言え流石に言い過ぎたか、とメニアが思い謝罪をしようと顔を上げた所で、突然メニアの体がぶわり、と持ち上がった。
「──えっ、──ひゃああっ!高いっ、高いですネウスさん!」
「父親みたいなんだろう、なら子供をこうして遊ばせる事もあるのは知ってる!大人しく抱き上げられてろ!」
「ごめんなさいっ!ネウスさんはお父様じゃないです!高いんですっ!本当にごめんなさいっ!」
メニアが何度も謝っても、ネウスはメニアを抱き上げた状態のままスタスタとベッドへと進むと、騒ぐメニアをそのままベッドに横にさせ、そのまま掛け布団を押し付ける。
「強硬手段には出たくなかったが、メニアが言う事を聞かねえから仕方ない。このままメニアが寝付くまでこうして見張っておくからな?」
「ちょ……っ、それは流石に嫌です……っ」
何が嬉しくて、寝顔を男性に見られなくてはいけないのだろうか。
それよりも、未婚の淑女の部屋に一人残り続けるのは如何なものなのだろうか。
「言葉で説得しても聞き入れねえなら仕方ないよな?眠れないのなら添い寝してやろうか?」
ネウスが満面の笑みでそう告げ、掛け布団を本当に捲ろうとして来たのでメニアは焦って「寝ます!」と叫んだ。
「寝ますっ!このまま寝ますからネウスさんはそこで見てて下さいっ!」
「そうか。ちゃんと寝付くまでここで見張ってるから早く寝ろよ」
したり顔のネウスに、メニアは心の中で悪態を付くとそのまま瞼を閉じる。
メニアが諦めて瞼を閉じた事を確認すると、ネウスは部屋の明かりを消すためにベッド横から離れると、扉付近にあった明かりを消して行く。
そして、再度ベッドの側に戻って来るとベッド横にある棚にあるランプの火を消した。
瞼の奥で、部屋の明かりが全て消えたのがメニアにも分かり、そのまま身動ぎせず眠気がやって来るのを待っていると、魔力の消費で体は確かに疲れていたのだろう。
意外と早く睡魔がやって来て、メニアは規則正しい呼吸をし始める。
眠れそう、と感じて、意識が落ちる寸前、メニアはゆったりと優しく自分の頭が撫でられているのを感じた。
「──寝たか」
すうすう、と規則正しい寝息を立て始めたメニアに、ネウスはメニアの頭を撫で続けながら、そのままするりと自分の手のひらをメニアの頬へと滑らす。
メニアから「父親みたいだ」と言われて何故か、かっとなってしまった。
そんな事で怒りなど覚えた事が無かった筈なのに、メニアに言われた言葉だけが許せなくて、ネウスは大人気なく実力行使に出てしまったのだ。
「──結局、メニアもすぐ寝入る程疲れてたんじゃねーか」
ネウスはポツリと呟くと、メニアの顔に掛かってしまった髪の毛をそっと退けてやる。
明日以降は、きっと忙しくなる。
ネウスはもう一度ゆったりとメニアの頬を撫でてから音を立てずに部屋を出て行った。
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