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しおりを挟む「──回収、?何故──」
ネウスの言葉に、ラドを含めその部屋に居るネウス以外の全員が呆気に取られたような表情を浮かべる。
マティアスもネウスがまさかセリウスを帰しているとは思わなかったのか、その理由を聞くために唇を開いた。
「ネウス様、何故あの男を帰されたのですか……?入室出来る者が制限されているあの場所に居るあの男を捕えられれば──……」
「衛兵が精神干渉を受け、メニアが無理矢理とは言え同時に入室している。あの男を捕まえれば、メニアにも責任問題が発生するかもだろーが。あの男にはメニアを巻き込まずしっかりと自分で自分の罪を償わせた方がいいだろ。……だから帰した」
「な、なるほど……?ですが、それにしては大分長い時間ネウス様もあの部屋に居ましたが……何をされていたんですか?」
「……あとでな」
マティアスの言葉に、ネウスは小さく首を横に振ると話は終わりだ、とでも言うように座っていた体制から立ち上がる。
ネウスはラドに視線を向けると、しっかりと視線を向けたまま唇を開く。
「──今回の件、国王への報告は頼んでいいか。あと、今後メニアが公式に招待されるようなものには俺と、この男──マティアスをメニアの護衛騎士として同行する事も国王に話しておいてくれ。今回のようにメニアの魔力が察知しにくい場所に居たらすぐに対応する事が出来ない」
ネウスの言葉に、席を立ったラドもこくりと頷くと「国王陛下にお伝えしておきます」と同意する。
「次回開催される夜会前に、別室で改めて時間をくれ。その際にこちらで用意した魔道具を渡しておく」
「かしこまりました。何から何まで申し訳ございません……ありがとうございます」
ラドが自身の胸に手を当てて頭を下げると、ネウスは頷いてからメニアの手を取り、部屋から退出した。
部屋から退出し、メニアはネウスに手を引かれるまま今はもう閉館してしまっている王立図書館の横手を通り、迎えの馬車を待つ停車地へとやってきた。
図書館が閉まっている事から、周囲には殆ど人の気配は無くなり、居るのは図書館内に続く門の前に居る衛兵のみ。
ネウスは、あの場所でセリウスから一体どんな情報を聞き出したのだろうか。
先程、宰相であるラドとの会話でその事には触れなかった為、どんな事を聞き出し、ネウスがどんな判断をしたかメニアにも、マティアスにも分からない。
メニアの横に居たネウスは、騎士服の襟元を面倒くさそうに緩めながらメニアに視線を向けて唇を開いた。
「──メニア。キツいかもしれねえが、夜会の日まで出来るだけ魔石に精神干渉を弾く魔法を入れといてくれ」
「精神干渉を、ですか?──分かりました。あまり量産は出来ないかもしれませんが……どれくらい作ればいいとか、ありますか?」
「……そうだな。取り敢えずさっきのラドと、国王用。俺とマティアス……後は恐らくもう直ぐ合流するだろうからロザンナと娘達、メニアの両親にも必要だから最低でも十程度か……。それと同時に夜会までに解呪の魔法は取得しておいて貰いたい」
ネウスから具体的な数量と、解呪の魔法の取得について話され、メニアはこくりと喉を鳴らすと小さく頷いた。
魔石への魔法の発動に、解呪の取得。
これは、間近に迫った夜会まで学院に行く事は出来なさそうだ、と覚悟する。
「厳重ですね。……我々の種族で、メニアさんの婚約者に協力した者は判明したのですか?」
ネウスの言葉に、緊張感を孕んだ声音でマティアスが声を掛けると、ネウスが頷く。
「ああ。メニアの婚約者と、その女に協力した奴らは粗方把握した。女の願いについてはあの男もはっきりとは理解してねえ。それを考えると、再度出て来た事を考えてメニアには解呪を覚えておいて欲しい。実体が無いせいか、精神干渉を使用しても完全に掛かり切るまでは若干のタイムラグがあるから、その僅かな時間にメニアが解呪を発動出来ればどうにかなるかもしれねえ」
「──その、実体が無い方を、どうにかする事は出来ないんですか?」
メニアの言葉に、ネウスは力無く首を横に振った。
「あれ、はどうにも出来ねえ。召喚されている時点で召喚者の願いを叶えるまで還らねえし、力を使わせないように対応する事しか出来ねえな。うちの種族の奴がそれと利害関係が一致していない事を祈るしかねえ。同等か、序列が十程度上くらいならば何とかなるかもしれねえが、相手が序列が十以内の一桁なら……最悪な事に、序列五位以内なら下手に刺激せず、願いを叶えさせて還らせた方がいい」
次元が違う、と呟くネウスにメニアは嫌な予感を覚える。
ネウス自体は明言を避けているが、その口振りからして相手は序列五位以内であるのではないか、と考えてしまう。
ネウスは不確かな状態で説明する事はしない人物のように思える。
メニアのようなただの人間には、ネウスも、先日シャロンの中から感じた存在も強大で恐ろしく、大差ないように考えるがネウスは違うのだろう。
一瞬とは言え、対峙し、その存在を感じている。
そこから感じた力に、ある程度予測が出来ているのだろう。
話している内にハピュナー子爵家の馬車が到着し、三人が乗り込むと馬車が動き出す。
馬車の座席に座り、動き出すとネウスが続きを話し出す。
「こっちの奴らはどうにか出来ると思うが、夜会などの参加人数が多い場所で仕掛けられたら厄介だ。最低限、この国の上層部が精神干渉を受けないようにしときたい」
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