【完結】偽りの聖女、と罵られ捨てられたのでもう二度と助けません、戻りません

高瀬船

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「──ちょっ、……っ、ちょっとお待ちを……、ハピュナー嬢!先程からハピュナー嬢が口にしている魔法は、ハピュナー嬢が適性がある光属性魔法ではありません……!それなのに、どうして──っ」

ラドの言葉に、メニアは申し訳無さそうな表情を浮かべるとラドに向かって頭を下げた後に、唇を開く。

「メランド卿、申し訳ございません。国に届け出をしている光属性魔法の適性では無く、本当は聖属性魔法の適性が私には有ります。……幼い頃に、光属性魔法の適性者と誤った情報で登録され、直ぐにレブナワンド侯爵家より婚約の打診があり、誤情報を修正してしまったら、私の身に危険が生じる可能性がある、と両親が修正をしなかったのです」
「ちょ、ちょっと待って下さい。と言うと、ハピュナー嬢の本当の適性は聖属性と言う事ですか……!?」

あわあわと慌てるラドに、メニアは謝罪を述べながら言葉を続ける。

「はい。長年、国を謀り、裏切り続けたのは事実です。もっと早く修正を行えば良かった所、今日まで正直にお話する事が出来ずに申し訳ございません。……両親は、利用される恐れを考えて、私の属性を秘匿致しました。その裏には、この国を裏切る気持ち何て、一つも無いのです。ただ娘が利用されるのを恐れて愚かな選択をしてしまっただけなのです。……ですので、罰をお与えになるのであれば、私にお願いします……!」
「──頭を上げて下さい、ハピュナー嬢……!」

深く頭を下げるメニアに、ラドは慌ててメニアに声を掛ける。

確かに、適性属性の虚偽申請はあってはならない事だ。
過去にも、光属性や聖属性の適性者では無いのに、光属性や聖属性魔法の適性者が受ける恩恵に目が暗み、光属性も聖属性も適性が無いのに虚偽申請を行う者が一定数居たのだ。
そういった者達には、軽度ではあるが刑罰が科された事があるが、今回のメニアのパターンは全くの別物で、新しい。

そもそも、聖属性魔法の適性を持つ者が今まで隠したがる事など無かった為、偽っていたとは言え過去のものとは動機も何もかもが全く違う。

「──偽りとは言え、そもそも幼少時に受けた適性検査の登録を誤った機関にも非はありますし、恩恵目当ての悪意を持った偽りでは無いですし……私の主観での話になりますが、ハピュナー嬢の件に関しては過去の者達と同様に刑罰の対象になる可能性は、低いかと……それに……」

ラドはそこでチラリ、とネウスとマティアスの方へと視線を向ける。
メニアと親交のある魔の者の王であるネウスや、ネウスの側近であるような男の前でメニアを罰する、等と答えればこちらの首が胴体と離れそうだ、と考えてしまう。

ラドの言いたい事が正しくネウスに伝わったのだろう。
ネウスはラドに向けて笑みを深くすると、自分の隣で頭を下げているメニアの頭を慰めるように撫でながら唇を開く。

「そうだよなぁ?別にメニアは進んで聖属性魔法の適性者である事を隠したかった訳でもない。自分の身を守る為に仕方なくそうしただけで、万が一あの婚約者にメニアの本当の属性が知られていたら、今頃はもうミリアベルの解呪でも一度でほ解呪出来ねえ程洗脳状態にされていたかもしれねえしな?」
「──仰る通り、です。もし、ハピュナー嬢が悪意を持った人間に洗脳され続けていたら、と考えると……。この秘匿は当然かと私は考えます」
「話が通じて助かる。──この国の国王にも、それが通じればいいけどな?」

ネウスの言葉に、背筋をぞっと凍らせてラドはシャキッと背筋を伸ばす。

「国王陛下には私がしっかりとご説明し、ご納得頂きます」

聖属性魔法の使用者であるメニアがもし他の者の手に落ちていたら。
その者が、国に悪意を持つ者であれば。
取り返しのつかない状況に陥っていた可能性だってある。

そして、ネウスは魅了と信用の魔法を長年掛け続けられていたメニアを助けている。
もし、このタイミングでメニアがネウスに助けられていなければ、と考えラドは額を流れる汗を懐から取り出したハンカチでそっと拭った。

「──ネウス様が、ハピュナー嬢の精神干渉魔法の解呪を行って頂かなければ、今頃ハピュナー嬢はセリウス・レブナワンドによって操り人形にされていた可能性があります……聖女が入れる施設は多岐にわたる……この国の重要な資料も閲覧する権利がある為、今回のようにセリウス・レブナワンドが衛兵に魅了と信用を使用してしまえばあっさりと中に入られる可能性がありました……」
「セキュリティ面をもう少し考えた方がいいんじゃねえのか?聖女と衛兵が落とされれば簡単に入り込めるような現状が不味いと思うけどな?」
「仰る通りです……早急に魔道具の研究を行います」

ネウスとラドが言葉を切ると、話が一旦落ち着いたのが分かり、メニアは申し訳なさそうな表情でそろそろと姿勢を戻す。

自分の罪を、ハピュナー子爵家の罪をしっかりと償うつもりだったが結局ネウスに助けられてしまった。

(何て情けないのかしら……)

「取り敢えず、貴重蔵書保管庫に残しているセリウス・レブナワンドを捕えないといけませんね。衛兵を呼んで来ます」

ラドがそう言葉を上げ、腰を上げかけると正面に居たネウスがラドに向けて手を上げて行動を制す。

「いや、その必要は無い。もうとっくにもう一人の女を回収して自宅に戻っている頃だろ」
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