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しおりを挟むラドの言葉を聞いて、ネウスは納得したように「なるほどな」と声を上げる。
「も、申し訳ございません、メランド卿。あの場で直ぐに私がご説明出来れば良かったのですが……っ」
メニアが申し訳無さそうにラドに声を掛けると、ラドはふるふると首を横に振ってからメニアに優しく微笑む。
「いえ。ハピュナー嬢が謝る事はありませんよ。そもそも、勝手に勘違いし早とちりしたのは私ですからね」
「まあ、そうだな」
ラドの言葉に何故かネウスがうんうんと頷き、メニアとラドは苦笑する。
ラドはこほん、と小さく咳をすると「それで……、」とチラリとメニアに視線を向けて話と言うのは、と先を促す。
ラドから視線を向けられたメニアはシャキッと背筋を伸ばすと、真っ直ぐラドを見据えたまま唇を開いた。
「──まず……あの場所で、何故強力な魔法が使用されるに至ったかをお話致しますね」
そして、メニアは緊張から時々言葉に詰まりながらもラドに向かってゆっくりと順序だてて説明を始める。
自身の婚約者であるセリウスと友人のシャロンが、聖女の権限を利用し、王立図書館に入館した事。
婚約者であるセリウスが、貴重蔵書保管庫の衛兵に何か良からぬ魔法を使用し、本来ならば聖女や定められた者しか入室する事が出来ない貴重蔵書保管庫に入室した事。
そして、その場で魔の者に対する資料を欲していた事。
「──そして……恐らく、セリウス・レブナワンド卿は聖女の権限、恩恵を昔から狙っていたようです。幼少期に私が光属性魔法の適性者である、と公開され、直ぐに婚約の申し込みがやってきました」
「ええ。ハピュナー嬢の事はこちらでもお調べしてますので、幼少期にセリウス・レブナワンドと婚約を結んだ事は知っておりましたが……。その頃から聖女に任命されるかどうか分からない状態のハピュナー嬢を囲っていた、と言うのですか……?」
信じ難い、と言うようにラドが自分の顎に指を添えて表情を顰めている。
「……それは間違いねえだろう。しっかりとメニアを"聖女"にする為に長年準備していたみてえだからな」
ネウスの言葉にラドは俯いていた顔を跳ね上げると「それは?」と不安げに唇を開く。
「メニアは、婚約者の男から長年"魅了"と"信用"の精神干渉魔法を掛け続けられていた。それも、メニアだけでは無くメニアの両親にも掛けると言う徹底ぶりだ」
「魅了と、信用──!?」
ネウスの言葉に、ラドはぎょっと瞳を見開くと有り得ない!と言葉を荒らげる。
「魅了は、国で禁呪扱いにされている魔法です……!魅了の魔法は禁書に記されており、おいそれと一般人が取得する事は不可能です……!ましてや、セリウス・レブナワンドはただの学院生……!いくら侯爵家の権力を持ってしても、禁呪である魅了を覚える事が出来る筈ありません……!」
「──だから、魔の者が使用する闇魔法の魅了を借りてるんだろ」
ラドの言葉に、ネウスがあっさりと言葉を返すと信じられない、と言った表情を浮かべるラドに、ネウスが自分の懐に手を入れて魔石を取り出す。
「これは、うちの国で採れる魔石だ。これに魔法を発動して、その魔法を"保有"しておく事が出来る。うちの国では腐る程この魔石を採る事が出来るから、この魔石を加工してあいつはカフスボタンにしてるぜ?」
「それは、間違い無いです。私自身、自分の目で確認する事が出来ました。この図書館の、貴重蔵書保管庫を守る衛兵の方に"魅了"を掛けて入室したのだと思います」
ネウスの言葉に続いて、メニアがラドに向かってそう話すと、ラドは再度頭を抱えた。
「待って、待って下さい……それならば、この国は今、魔の者が使用する事が出来る強力な闇魔法の魅了の脅威に晒されている、と言うのですか……!?解呪を発動出来る聖属性魔法の使用者が居ないこの状況で、それを発動されてしまったらこの国は滅茶苦茶になりますよ!?」
これは大変な事になった!と慌てふためくラドは、そこではた、と違和感を覚えてメニアに視線を向ける。
「──……そう言えば、ハピュナー嬢は……長年魅了と信用の魔法を掛けられていた、のですよね……?解呪の魔法を使える者が居ない今、何故ハピュナー嬢は今、理性を保っているのですか……?それに、衛兵に使用された際に、何故ハピュナー嬢は無事だったのですか……?」
ラドの最もな質問に、メニアは「あー……」と小さく言葉を漏らすと自分が聖属性魔法の適性者である事を説明しなくては、と唇を開いた。
「──その、"解呪"自体は、ネウスさんが耳に付けている魔道具に封じ込めたミリアベル様の解呪魔法で、解いて頂きました……。その、……えっと、その後は自分自身に精神干渉魔法を弾く魔法を常に掛けております……」
「なるほど、ネウス様の……ミリアベル様……?え?ハピュナー嬢が精神干渉魔法を弾く魔法を……?」
初めはふむふむ、とメニアの言葉を聞いていたラドだったが、メニアの口から出てくる名前、そしてメニアが発動している弾く魔法、と言う単語を聞いて本日何度目か分からない驚きの声を上げた。
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