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しおりを挟むそして、それから謁見の日取りが決まるまでメニアはいつも通り学院に通ったが、メニアが国王陛下に呼ばれた、と言う事がいつの間にか広まっていて、学院では今まであまり交流の無かった者たちから話し掛けられる事が多くなった。
皆、口々にメニアの機嫌を取るように笑顔で創星祭の日、メニアが取った行動を褒めたたえている。
学院の大多数の生徒達は「聖女」の権利等、殆どわかってはいないだろうが、聖女と言う物自体の知名度はとても大きい。
そして、国王陛下からの呼び出しが行われた、と言う事もまた効果は大きいのだろう。
将来的に聖女という称号を得るメニアとパイプを作りたいと考えている家は多いらしく、学院の生徒達は両親から強く言われているようだった。
「──せっかく、セリウス様やシャロン様と離れてゆったり過ごせると思っていたのに……!」
メニアは自分の姿を探す生徒達から逃げるように学院の図書館にやって来ていた。
セリウスやシャロンも国王陛下から呼び出しを受けているのに、メニア程生徒達が彼らに群がってはいない。
やはり、「聖女」になる可能性がある人物は余程魅力的なのだろう。
聖女の恩恵を知る家は少ないとは言え、その聖女の知名度にあやかろうとする者達は腐る程いるらしい。
「これじゃあ、ゆっくり勉強する時間も取れないわ……」
せっかくセリウスとシャロンと共に帰らなくてもいい貴重な時間を、無駄に逃げ回るだけに費やしてしまった。
この図書館がある建物に入る姿を生徒達に見られてしまった可能性がある。
実際、遠くから騒がしい足音が響いて来ていて、メニアは本棚と本棚の間にしゃがみ込んでいた体制からすくっと立ち上がる。
「──こんな狭い場所で囲まれたら逃げ出せないわ……」
メニアがそう呟き、出口の元へ駆け出そうとした時、愉しそうな声がすぐ側から聞こえて来た。
「随分人気者になったみたいだな?」
「──っ、」
真後ろから聞こえて来た聞き覚えのある声に、メニアは咄嗟に後ろを振り向くと、目の前には数日ぶりのネウスの姿がある。
「ネウスさん……っ、どうしてここに?」
ネウスの姿に、とても安心感を得たメニアはついついふにゃり、と力が抜けた笑みを零してしまう。
「メニアの魔力はもう覚えたからな。何処に居ても探し出せる。……それにしても大人気だな?」
くつくつと喉奥で低く笑う声に、メニアはじとっとした視線をつい向けて、唇を尖らせてしまう。
「もう……すっごい迷惑なんですよ……。ネウスさんから預かった禁書を読もうにも、追い掛け回されてしまって読む時間が取れなくて……」
「ふうん……。それだけ、今のこの国ではメニアの……聖女と言う存在がデカいんだな?」
興味深そうにそう答えるネウスに、メニアはこくこくと何度も頷く。
これで本当に正式に聖女と言う物に任命されてしまったら今度こそどうなってしまうのか。
セリウスのように、その恩恵を目当てに群がる人が増えそうでメニアはげっそりとしてしまう。
「……穏やかに過ごしたいのに、何だか無理そうです。せっかく帰宅するまでの時間にネウスさんから預かったこの禁書を読もうとしたのに……」
「ああ。その小せぇやつか。聖属性魔法の基本的な情報が記されてるんだっけか?」
ネウスがメニアの手に握られた手のひらサイズの小さな本に視線を向けながらそう問い掛けると、メニアは頷く。
「そうなんです。魔力量が少ない、とネウスさんに教えて頂いたので少ない魔力量での効率的な魔法の発動方法とか、少ない魔力でも発動出来る魔法が無いか調べたかったんですが……」
「へえ。勉強熱心じゃねえか。偉い偉い」
からかうようにネウスに頭をぐいぐいと撫でられて、メニアは子供扱いされているようで恥ずかしくなる。
そうしている内に、メニアを探す足音が図書館に近付いて来て、メニアははっと瞳を見開くとネウスに向き直る。
「そうだ……っ!忘れてましたっ。今探されているんです……!場所を変えましょうネウスさん!」
メニアがネウスの腕を掴み、図書館を出ようとぐいぐいネウスの腕を引っ張るが、ネウスはその場に佇んだまま動く気配を見せない。
メニアが不思議そうに振り返り、ネウスに向かって唇を開こうとした瞬間、ガラリと図書館の扉が開いた音が聞こえた。
「──ひっ!ネウスさん、見つかる前に出ましょうっ」
「そこそこの人数が居るから無理だろ。それより転移しちまった方が早い」
メニアが扉の方向をちらちらと気にするように見詰めていると、ネウスの腕を掴んでいたメニアの腕が逆に強い力で引き寄せられ、ネウスの胸元にそのままぶつかる。
「……わぷっ」
「──取り敢えず屋上に出るぞ」
そのままネウスに強く抱き寄せられ、メニアの腰にネウスの腕が回った瞬間にネウスの転移の魔法が発動した。
二人が転移する瞬間、メニアを探す声が聞こえたがその声がメニア達の耳に入った瞬間に二人の目の前に広がっていた図書館の景色は一瞬で消え去り、次いで自分達の目の前には屋上庭園が広がっていた。
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