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しおりを挟む翌日。
メニアは、昨日使用人にセリウスに連絡をお願いした通り学院を休んだ。
昨夜の内に学院を休む事を自分の父親に告げたメニアは、父親と母親に体調を心配されたが何とか笑顔で誤魔化した。
「──そう言えば、もうすぐ創星祭があるのね……」
数百年前。
とある事件が原因で、当時の教会が解体された。
教会の大司教があろう事か、国王を弑逆し当時まだ魔の者と協力関係が築けていなかった人間と魔の者を争わせ、恐ろしい禁術を使用して国を混乱に陥れたらしい。
その当時の教会の大司教は重い罰を受けたらしい。
そして、その大司教が居た教会は解体されて新しく聖寺院が設立されたのだが。
聖寺院の設立者は、当時桁外れの聖属性魔力を持った女性で、その女性のお陰で当時大司教の手で生死の境を彷徨っていた新国王陛下の兄弟達の命も助かり、その事に大層感謝した国王陛下が大々的に聖寺院の設立を助け、祝ったそうだ。
そしてその祝いの祭りに後世の者がいつからか「創星祭」と言う名前を付け、年々大きな祭り事となっていった。
その祭りには、貴族も平民も関係無く参加し、その日ばかりは違う国に領土を得た魔の者達もちらほらと姿を表すらしい。
今では友好な関係を結んではいるが、いつ魔の者が再度人間に牙を剥くかは分からない。
魔の者である王が、聖寺院の設立者である女性と、その夫といい友人関係を築いていたからこそ、その関係が長年続いているのだ。
その事を数百年経った今でも人間達は感謝し、生きているのが現状だ。
「ああ……今年もセリウス様とシャロン様と一緒に過ごさないといけないのね……」
その事に思い至り、メニアは憂鬱だわ、と溜息を吐く。
どうにか理由を付けて一緒に回るのを断れはしないだろうか。
たかが子爵家の自分が、侯爵家の嫡男に対して「貴方と一緒に回りたくありません」などと言える訳が無い。
「いっその事、セリウス様に昨日見た事を話してしまう?セリウス様だって、本当に好きな人と一緒に居たい筈だわ……」
だって、そうだろう。
今までセリウスはメニアに「好きだ」と伝えてくれる事はあっても、シャロンにしていたように口付け合った事など無い。
シャロンに向けていた熱の篭った視線を向けられた事など無い。
優しく抱き締められる事はあっても、シャロンのように強く、気持ちをぶつけるような熱い抱擁を受けた事などないのだから。
「そうね……、セリウス様と一度お話する必要があるわよね……」
侯爵家程の地位も、権力もある者が光属性魔法の使用者にそこまで執着する必要は無い筈だ。
国から援助される金品も、侯爵家の財力に比べれば遥かに少ない。
そして、光属性魔法の使用者は、国から討伐要請が下れば現地に同行しなければいけないがその報奨事態にも侯爵家に取ってはそんなに魅力的な物ではない筈だ。
「うん、うん……。そうね、やっぱり一度セリウス様とお話してみよう……」
婚約が成立してから数年。
セリウスを慕い、焦がれていた気持ちは本当で、今日明日で綺麗さっぱりなくなりはしないだろうが、お互いきちんと好きな人と幸せになる方がいい。
裏切られた、と言う悲しさや不快感はあるがセリウスはメニアの事を好きでは無かった、と言う事だ。
人の心はままならない。
それならば、自分の心に正直に生きて行ければいいじゃないか、とメニアは考え、セリウスと話をする事を心に決めた。
学院を休み、メニアはその日自室でゆったりと過ごした。
マルクやリリーに遊ぼう、と誘われたがメニアは今日体調不良で休んでいる事になっている為、二人と元気いっぱいに遊ぶ事は出来ない。
だからメニアは、夕方頃まで自室で読書の時間を満喫し、気付けば学院の授業が終わっている時間帯になっていた。
昨日も、メニアが先に帰った事に心配してセリウスが見舞いに来たのだ。
今日ももしかしたら来る可能性がある。
そうしたら、セリウスに話してみよう、とメニアは決めていた。
そして、やはりセリウスはメニアの体調を心配してハピュナー子爵家に訪ねて来た。
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