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しおりを挟む状態異常を軽減する魔法は光属性魔法にもある。
だが、光属性魔法は状態異常を「軽減」するだけ。
完全に状態異常を「解除」する事が出来るのは聖属性魔法のみ。
メニアは、幼い頃に受けた適性検査の時に父親の怪我を治した際に、「光属性」の適性者だと登録された。
その当時はメニア自身も光属性の適性者だと思っているし、周囲もそう思い込んでいた。
それ程までに聖属性の適性が出る者は少なく、光属性魔法の使用者よりも聖属性魔法の使用者の方が極端に人口は少ない。
この国では、二十年程聖属性魔法の新たな適性者は出ていなかった。
その為、メニアが聖属性の適性者などと微塵にも思わなかったのだ。
だが、メニアが成長して行くにつれ、聖属性魔法の事を知る機会が増え、自分の使用する魔法が明らかに光魔法では無いことに気付いた。
光魔法の治癒では、広範囲に作用しない。
防御結界も、ここまで広範囲に、そして強固に発動はしない。
そして何より、光魔法では状態異常を解除する事が出来ないのだ。
メニアが自分に聖属性の適性がある、と気付いた時、セリウスと婚約を結んで数年が経っていた。
セリウスの事が好きだったメニアは、自分が聖属性魔法の適性者だと言う事をセリウスに知らせて上げれば喜んでくれるかもしれない、と考え両親に相談した。
だが、メニアの言葉を聞いた両親は顔色を真っ青にして聖属性魔法の適性がある事は誰にも話すな、とメニアに言って来たのだ。
当時は何故両親がそんな事を言うのか理解出来なかったが、今ならば分かる。
聖属性魔法は極めて珍しく、使い手が現れる事は殆ど無い。
その事から、国に政治的に利用されるのを防ぐ為に、両親はメニアに口外を禁じたのだろう。
「──今思えば、セリウス様に知らせなくて良かったわ……」
自分が聖属性魔法の使用者である、と言う事がセリウスに知られてしまえば、決してメニアを手放す事はしないだろう。
「ただ、聖属性魔法の使用者だと言う事を国に報告していないのは……大丈夫なのかしら……」
未だに両親が国に報告していないのか、それとも既に秘密裏に報告しているのかは分からない。
だが、国が知ればもっと大騒ぎになる筈だ。
「……分からないけれど、でも本当に良かった……」
レブナワンド侯爵家が、何故ここまで光属性魔法に執着するかは分からないが、メニアはセリウスとこの先、結婚何てしたくない。
どれくらい前からメニアを裏切っていたのかは分からないが、セリウスとシャロンはメニアをずっと裏切っていたのだ。
そして、裏切り続けていたのにセリウスはそんな事をおくびにも出さず、学院でシャロンと睦み合った後素知らぬ顔で見舞いに来たのだ。
「明日、会いたくないな……」
学院に行くのであれば、また朝からあの二人と顔を合わせ、同じ馬車に同乗しなければならない。
そして、学院で昼食を共に取り、帰りも共に同じ馬車に乗って三人で帰らないといけないのだ。
「──無理、だわ」
気持ちの整理がつかない。
メニアはそう考えると、腰掛けていたベッドから立ち上がり自室の扉まで歩いて行き、扉を開いて使用人を呼んだ。
使用人を呼んだメニアは、体調不良で明日の学院を休む、と言う連絡をセリウスにしておいて欲しいと頼んだ。
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