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しおりを挟む普段、学院から帰る時、メニアは婚約者のセリウスとシャロンと共に三人で馬車に乗り、共に帰宅していた。
子爵家であるメニアの邸が一番学院から近い為、いつもメニアの邸に一番最初に馬車が止まり、そしてメニアはいつもそこで二人と別れていた。
メニアが馬車を降りれば、馬車内にはセリウスとシャロンは二人きりだ。
「今思えば、何故私はその不自然さに何も疑問を持たなかったの……?」
友人だから、ときっぱりと言い切る二人に何も疑問を抱かなかった。
その間に、男女の何かがあるとは思わなかったのだ。
普通は、婚約者以外の異性と二人きりになるなんて可笑しな事なのに、一切疑問に思わなかった。
そう言う物なのか、とあっさりと信じてしまっていたのだ。
「これから二人とどんな風に過ごせばいいの……」
二人は、メニアが空き教室の外に居た事に気付いていない。
二人の睦み合う姿を、まさか見られているなんて微塵も気付いていないだろう。
「何も気付いていないように振る舞うしかないの……?明日から、私はどうやって二人の顔を見ればいいの……」
メニアは、馬車の座席に座りながら自分の顔を覆った。
いつもは三人一緒に学院から帰宅していた。
けれど、今日はとてもじゃないが、あの二人と一緒に帰れる訳がない。
冷静で何かいられないだろう。
きっと、自分の婚約者であるセリウスに何故裏切ったのか、と責めるような視線を向けてしまう。
きっと、シャロンに何故始めから言ってくれなかったのか、と非難めいた視線を向けてしまう。
だからメニアは二人に、具合が悪いから先に帰ると使用人から伝えてもらい、先に馬車で帰宅している。
あの後、セリウスとシャロンといつもの場所で待ち合わせて共に馬車に乗る事なんて出来やしない。
そもそも、あの空き教室は普段鍵が掛かっている筈なのに、何故あの二人はあの教室に入る事が出来たのだろうか。
三人の受ける授業内容は違う。
光と風の属性魔法の使い手のメニアは、元素魔法の授業では無く、光魔法についての授業を受講している為、光魔法の使い手ではないセリウスとシャロンは、メニアと別の教室だ。
それに対して、セリウスとシャロンは元素魔法の授業を共に受けている。
その為、いつも全ての授業が終わると学院の待ち合わせ場所で落ち合って共に帰宅するのだ。
元素魔法の授業は、メニアが受ける光属性魔法の授業よりも早く終わる。
その為、いつも二人を待たせてしまっている事にメニアは申し訳無い気持ちでいたのだが、もしかしたらいつも、あのように空き教室で二人の時間を楽しんでいたのだろうか。
「私の授業が全て終わるのは、二人よりも随分後だわ……。今日はたまたま授業が終わるのが早くなったお陰で、いつも待たせてしまっているかららって、二人を逆に迎えに行ってあげようとして……」
光属性魔法の授業に参加している者が学院に一番遅くまで残る為、授業が終わるといつも学院内は人気が少なくなっている。
五元素の授業は少し離れた別棟で行われている為、メニアは二人を迎えに行ってしまったのだ。
そして、人気の無くなった別棟の奥まった空き教室で、二人の姿を見てしまった。
見たくなかった光景を見てしまった。
迎えになんて行かなければ良かった。
いつもの待ち合わせ場所で、大人しく二人を待っていれば良かった。
そうすれば、自分の婚約者が自分の友人と睦み合っている場面を見なくて済んだのに。
「お嬢様、着きましたよ!」
突然外から声を掛けられて、メニアは驚きにびくり、と体を揺らすと声を掛けてくれた御者に礼を告げる。
考え事をしていたせいか、いつの間にか子爵家に着いてしまっていたようだ。
「あ、ありがとう。オーベル。今降りるわね」
メニアは急いで馬車から降りると、御者のオーベルに礼を告げてから子爵邸の玄関へと向かった。
今は何も考えたくない。
早く邸に入って、家族の顔を見たい。
まだ小さい甥っ子や、姪っ子と遊んで、笑って過ごしたい。
メニアはそう考えると、急いで子爵邸の玄関を開けて帰宅の挨拶をした。
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